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心と身体が合うなんて稀、もう幸せしかない

’今のままのこの国じゃあ持てないわね…。助け合いの仕組みがお金持ちの老人まで助けてるんだから呆れちゃうわよね。’


モネは大切なメールがきたので返信してくるといってしばらく自室から戻ってこなくなった。


アツシもカエデもお弁当を食事と同義語に捉えるような塾漬けの生活しか知らないので、本場のカスクートというものを食べたことはないのだがフランス製熟成バターとブリーチーズとロースハムとルッコラを適当にバゲットに挟んだだけのものがこれ程美味しいとは信じられなかった。


マドレーヌやフィナンシェ、レモンを添えたパパイアも美味しすぎた。


頭の良い人は料理が上手で身体に良い安全な食材を食すので、大量生産の腐らない加工や化学的添加をしてある流通品は口にしないものなんだ、とネットで読んだことをカエデはあらためて思い出した。


‘良いものを食べるには自分で育てるか、高いお金を支払うかしかないの。お金をたくさん稼ぐには仕事を選ばなければならない。若者から搾取する仕組みを変えたくない老人たちには関わらせない、この国の18歳以上の健全で自律した国民だけに閉じた流通の場があればいいわね…。’


この前モネが話してくれたことはカエデにはどこかの政治家たちがする仕事のようで個々の国民には考える必要がない遠い事だと思えたのが、アツシはどんな話でも学校で授業を担当する教師たちよりモネの方が世間が広く数倍かっこ良いと話を全面的に吸収する。


自分達が来てしばらくするとケンゾーとシュンがどこかに行ってしまったのだが、彼らは互いに忙しくてひと月ぶりに会えたので24時間2人きりで過ごしたいところ、ケンゾーの大きな車を出してもらうためにワタシが呼びつけたのよ、とモネがその時ささやいた。


アツシとカエデはここでは自分達はなんの役にも立たなくて迷惑をかけるだけの存在だと知っているのに、どうしてかモネが好きで一緒に居たくて誘われるまま遠慮なく来てしまったことを反省した。


ケンゾー達に迷惑をかけてしまったのを知ってもなにも出来ないお子さまの自分達が少し嫌にもなったが、モネはそんな時もすぐに2人の気持ちを察して、ケンゾーはあなたたちカップルをとても気に入っているので大丈夫よ、と言ってくれていた。


モネがいないままの綺麗な広いリビングはアツシとカエデの2人きりで、無言で食べるばかりで時間が過ぎたが1時間ほどしてリビングに顔を出したケンゾーが2人を最寄りの駅まで車で送ってくれて、またモネのうちに戻っていった。


モネとの関係はアツシとカエデに共通の認識を芽生えさせ、2人は他の誰かとよりもずっとお互いを信頼し合えている気がしていた。


最後までうまく出来なかった続きをしたいとなかなか言い出せないアツシと、それを言わせないように流しているカエデは、私服の時でも素直に手を繋いで歩くような間柄でも無かった。


裸の身体を合わせることと日常でのつきあい方や親密さは少し別のところにあっても良いのだろう、と思いながら男の子とのことが初めてのカエデはまだまだ戸惑って、モネの言葉を思い出していた。


’心も身体も合う愛しいセックス相手は恋人、身体だけのセックス相手はポルノね。‘













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