エス·ディー·ジー·ズは老人こそよ
毎週日曜日の11:00はモネと話が出来るかもしれないので、アツシとカエデの日常的な勉強の課題やテスト対策はこの時間を確保するために集中的に取り組むようになり、成績が落ちることはなかった。
毎日陰気でカエデへの思いやりも配慮も皆無なユカリが昼食の時間だけ当たり前のようにカエデにくっついてきて相変わらず話も無かったが、昼食のお弁当タイムを一人で過ごさないだけで不登校にならずにギリギリ生きているユカリを追い詰めることも無いので深く関わらなくても良いなら自分は役に立っているのかもしれないとカエデは思い始めていた。
この間の日曜日にアツシと初めての体験をしてから、2人はモネやケンゾー側の人間になったような心持ちで学校の生徒や教員たちを客観視できるようになった自分達を、少し誇らしく感じていた。
アツシの美しい顔のアップはメイクもあって映画のシーンのような感動的なキスが出来たが、背の高いカエデとアツシは裸で抱き合ってもなかなかキマらず、結局奥まで入る前に終了した。
精子の匂いも見たのも初めてのカエデは排卵の知識がない健康な自分が母親になったりしないか、という恐怖も覚えた。
親には聞けないけれど実際のところが知りたいとすれば、自分の不安は知識のなさからなのでうまく知り合えた高学歴なモネ夫婦に教えを乞いたいカエデだったが、アツシも同じように感じて、次の日曜日を待ちわびていた。
カエデはアツシとは交わす言葉が減ったものの、学園内では唯一家族のような絆ができたのが嫌ではなかった。
解ける問題をダラダラ解説するつまらない授業中、カエデの頭の中はアツシの肌が筋肉質で力も自分より強く心地良かったのを繰り返し思い出してしまう。
好きとか嫌いとか恋とかでなくても男と女が素肌で抱き合うと特別な心の交流が生まれるのだと思ったカエデは、子供を作る目的がある夫婦ではない関係の方が純粋な気がして、そうならば男同士でも良いのだと思った。
2人が楽しみにしている日曜日がやってきて、モネより先に店に着こうと駅から走っている2人の横をツーシーターのカブリオレに乗ったモネらしき男が過ぎて行った。
今回も先に店にいた男性姿のモネは、自分とケンゾーが作ったSDGSのフライヤーを2人に見せてきた。
‘受験生だと知らないかしら?今の社会を作った老人たちが消えてしまっている15年先に親になるくらいの人向け、今生きている昭和な老いた人間こそ向き合う必要があるんだけど…。’
アツシもカエデも今日もまた新しい世界が拡がるのかとワクワクしたが、モネは、何度も瞳を合わせる2人を見て、越えたわけね、と理解した。




