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警備員に就職しました

銀太と陽奈の二人は地上へとやって来た。


既に銀太の装備も返されている。


「普段は警備って何人でやっているんだ?」


博士の言からして多いわけではないだろう。10人ぐらいか?


「私の他に後6人いるわ。でもプレイヤーは2人だけで4人は一般の人よ。」


予想より少なかった。でも、『力』がある訳ではないのに戦うとはやるな。俺もその精神を見習わなければ。


「彼らにも守りたい人達がいるから…」


俺の心を見透かしたように言ってくるが、その表情は少し悲しげだ。きっと色々な人の死を目の当たりにしてきたのだろう。


「そうだな。それで警備の仕事って何をすればいい?」


「まずは私について来て。一応他の仲間に紹介するから。」


そう言う陽奈を追って地下へのエレベーターがある建物の後ろへ向かう。


そこには小さなプレハブ小屋のようなものがある。どうやらそこが待機所になっているらしい。


その中に入って行くとそこには3人の男の人達がいた。


1人は20代、残りの2人は30半ば頃だろうか。


「お!陽奈ちゃんじゃん!どうしたの?」


そういうのは20代の一番若い人だ。


「今日は新入りを連れて来たので紹介します。」


「お世話になります。銀太です。よろしくお願いします。」


「おお!よろしくな銀太!俺は天堂剛(てんどうつよし)だ。俺がこの班のリーダーでプレイヤーだ。」


「私は田中誠也(たなかせいや)です。よろしく。」


「ふ〜ん。新入りね〜。俺は佐藤春樹(さとうはるき)。よろしく。」


剛と名乗ったのは坊主頭の体格のいい人。中々に強そうだ。

次の誠也と名乗ったのは、体は細くいかにも頭が良さそうな眼鏡をかけた人物。

最後に俺を怪しむように声をかけて来たのは、少しチャラそうな感じで体格は普通の3人の中で一番若い人だ。


まあ、みんないい人そうだ。


「私はこいつと2人で行動しますのでそのつもりでお願いします。」


「陽奈ちゃんこんな奴と一緒で大丈夫?俺が替わろうか?」


春樹は俺が陽奈と一緒に行動するのが嫌らしい。俺はどっちでもいいが。


「いえ、大丈夫ですのでお気になさらず。」


俺は陽奈からは逃げられないらしい。春樹に軽く睨まれるがそんな反応されても困る。


「これから私たちは出ますので。では皆さん、また後ほど。」


そう言ってすぐに陽奈は出て行ってしまったので俺も挨拶した後に追う。


「おいおい、俺を置いて行くなよ。」


「ごめんね。私、あんまりあの人達得意じゃないの。時折、嫌な視線を感じるというか。」


女性はそういう視線に敏感らしいからな。俺も不躾な視線を送らないように気をつけよう。


「まあでも、あんたは変人って分かりきっているから問題ないわ。」


「問題だらけだろ。変人と一緒は危ねえぞ。よし、俺とは離れた方がいい。」

変人扱いを利用して逃げてやる。


「ダメよ。他の女の子とかに手を出すかもしれないし。」


「出さねぇよ。というかお前になら手を出してもいいのかよ。」


そう言って鼻で笑う。


「その時は貴方を一生男として生活出来ないようにするから。」


ナイフを取り出し笑顔でそう言ってくる様子は怖すぎて、ある一部分が縮み上がる。


「ま、まあ、し、紳士の俺はそんなことし、しないが。」


そう返すが、声が震えてしまう。


「ええ、その方が賢明よ。」


そう言ってまた歩き出した。


歩きながら仕事の話を聞くと、この拠点の半径500m付近を巡回して脅威を排除するのが主な内容らしい。


見つけ次第ゾンビは狩って行くようなので戦えるのは嬉しい。まだ5体しか倒してないからな。


そんなことを聞きながら道路の方まで出て、巡回を始める。


200m程進んだ所で、ゾンビの姿が見えた。その数は9体。

そこそこの団体さんだ。


「どうする?俺が全部やってもいいけど。」


「そうね。貴方の戦闘をしっかり最初から見たいからお願いするわ。まあ、死にそうになったら助けてあげるから。」


「あの程度は余裕だろ。助けはいらないよ。」


「本当にそうならいいけど。」


どうやら疑っているらしい。

本当に大丈夫なのだが。


さてやるか。今回は突っ込まずにこっちにお引き寄せるとしよう。


陽奈より前に出て石を拾いそれをゾンビに投げつける。


こっちに気づいた奴らが寄ってくるのでそれに合わせて『宵銀』を抜き構える。


1体目が両腕を前に出して向かってくるので一太刀のもと、刀を上に斬り上げ両方の腕を斬り飛ばす。そしてそのまま振り下ろし、左肩から右脇腹へ一閃。


2、3、4体目と同時に前から来たのを少しずつ躱しながら、一体ずつ斬り伏せていく。正直な所、このレベルのゾンビでは『宵銀』の切れ味と身体強化の相性が良すぎて相手にならない。


その後も時折派手な動きを入れつつも次々と倒していき、すぐに戦闘は終わってしまった。


「まっ、こんなものかな。」


『宵銀』をしまい、陽奈の方を見ると何故か驚いた顔をしている。


「どうした?」


「い、いや、貴方、意外とやるのね。」


俺の戦っている姿を一回見ていたんじゃないのか?


聞いてみるとどうやら見ていたのは、銃を使って倒していたところかららしい。


そりゃ驚くか。まあまだ全然スキルとか使っていないが。



私は目の前で起こっていることに信じられずにいた。


彼が1人で倒すと言っていたのでそれを許可したが、きっとすぐに助けが必要になると思っていた。


しかし、その予想は簡単に裏切られた。


彼は流れるような動きの中で素早く、淡々とゾンビを切り伏せていく。しかも時々高くジャンプしてから着地前に二体同時に切り伏せるなど派手に動きながらだ。

しかも中には彼の剣速が速すぎて見えないことがある。

ゲームの中でならあの動きも猛者と呼ばれる人達なら出来るだろう。私も出来る。


ただ、ここは現実世界。例えレインフォースを持っていたとしても、身体の感覚や思考速度など結局のところ人間としての限界がある。ゲームのような動きをするなら100%使いこなさなければいけない。故にそれはあり得ない(・・・・・)


だからこそ彼は明らかに普通じゃない。


一体彼は何者なのだろうか。


普段は冷静な私もこれには驚きを隠しきれず、さらに彼からずっと目を離せずにいた。まるで目線が圧倒的な力を振るうその姿に吸い込まれていくように。その時に私の胸に何か新しい感情が芽生えていくのを実感しながら。


(ついに、銀太の普通ではない一面が見られてしまった。この後彼女はどう銀太と過ごしていくのだろうか。まだまだ続く。)




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