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鬼嶋の鬼  作者: 悠志
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壱 孤独

「妖しの魔鏡」の続編となる作品です。

魔鏡事件を解決してから1年後の物語です。

 俺、姫崎(ひめさき)亮一(りょういち)は、最低な人間だ。そう言われている。

 俺が済んでいるのは、都会と言う程発展しておらず、かと言って物凄い田舎という訳でもないありふれた町、鬼嶋(きしま)町。

 高校3年の夏休み明けのある日、俺はクラスでもすごく可愛いと評判の後輩の女の子、小鳥遊(たかなし)向日葵(ひまわり)に告白さた。もちろん俺は、こんな可愛い子から告白されて嬉しかったし、交際を承諾した。

 その日の放課後、俺は小鳥遊さんの事をもっと知ろうと放課後デートに誘った。その時俺は、今まで知らなかった小鳥遊さんの事を知る事が出来てすごく嬉しかった。もっと知りたいと思った。

 きっかけは浅はかだったが、デートしていくうちに彼女の事をより理解したい、もっと近づきたいと強く思った。

 だが、俺は知らなかった。彼女が学校でどれだけ人気が高かったのか。彼女と付き合いたいと思っていた男子が、学校だけでどれだけいたのかも。

 そんな男子たちの嫉妬を買ってしまった俺は、帰る途中で男子たちに責め立てられ、小鳥遊さんはそんな俺を必死で庇ってくれた。

 だが、その内の誰かがうっかり小鳥遊さんの肩を突き飛ばしてしまい、彼女は車道に転んでしまった。丁度そんな時に1台の車が通り、轢かれそうになった所を俺は必死に手を引っ張って歩道側に寄せた。その代りに俺が、車に撥ねられてしまった。

 小鳥遊さんを車道に突き飛ばしてしまった男子は、学校でも女子の人気がとても高かった。わざとではないにしろ、彼が小鳥遊さんを車道に突き飛ばしたという事実には変わりない。

 車に轢かれ、大量の血を流す俺を泣きながら抱き抱える小鳥遊さんの顔は今も目に焼き付いて離れない。

幸いにも俺は一命を取り留めたが、小鳥遊さんを傷つけた事を怒ったクラスメイト、いや、全校生徒と彼女の父親から反感を買われ、俺と小鳥遊さんは無理やり引き離されてしまった。

 それだけでなく、小鳥遊さんを突き飛ばしたのが何故か俺という事になってしまい、俺は全生徒や彼女の両親からも激しく憎まれる事になった。何度も違うと言ったが、誰も俺の言葉に耳を傾けようとはしてくれなかった。俺の両親でさえ。

 小鳥遊さんだけは俺の冤罪を晴らそうと、学校や親や自分の親に何度も説得したが、俺を庇う為だと言って誰も聞き入れてはくれなかった。

 結果、俺は学校でも、家でも、町でも居場所を失ってしまい孤立してしまった。小鳥遊さんとも、告白をしてくれたあの日以来話す機会も会う機会も無くなったまま卒業を迎えてしまった。




 卒業後俺は、3つのバイトを掛け持ちしながら今も就活を行っている。高卒で、尚且つあの事故の事もあってバイトでもなかなか俺を雇おうとはしてくれなかった。

 大学も、両親がこれ以上俺に学費を払いたくないという事で受験を受ける事が出来なかった。

 そんな生活を続ける事2年。


「疲れた‥‥‥」


 バイトを終えてアパートに帰った俺は、シャワーを浴びる事なく倒れ込む様に布団に寝転がった。早朝に新聞配達と、日中のスーパーの商品管理とレジ打ち、そして深夜にはコンビニでバイトを行っている。

 出来るだけ、1日に3つのバイトが出来き、間に休みが入る様に調整はしているが、何処もたまに交代で違う日に入る事があり、帰る間もなく新聞配達のバイトとスーパーとコンビニという、地獄のスケジュールをこなす事もある。

 そうならないようにする為に、何処の店もいろいろ融通と聞かせてくれるが、どうしても入らないといけない時は徹夜覚悟で仕方なく入る。

 今日はまさにそんな日であった。就活中なって言っているが、こんなハードスケジュールでは就活なんて出来る訳が無かった。


「スーパーとコンビニのバイトが今日休みだというのが幸いだ。1日にまとめないとしんどいのに、何でいつもまばらになるんだ」


 そんな愚痴を漏らしながら、俺は徹夜明けの疲れからそのまま深い眠りに就いた。


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 とある小屋の中で、松明の炎が燃え上がる中、巫女装束の長い赤髪の女性が大きな鏡に向かって呪文を唱えていた。


「鏡よ、この先に起こる出来事を、未来を映し出せ」


 その瞬間、松明の炎が激しく燃え上がり、鏡に何かが映し出された。その映し出された何かを、女性は訝し気に見ていた。


「鬼嶋町?でも、何故?あそこには、曽根島一族がいる筈。私の家程ではないが、それなりに強い力を持った一族の筈」


 そんな彼女の疑問を、後ろに控えていた老婆が話してくれた。


「曽根島は絶えた。血は受け継がれているが、第二次世界大戦が終結した時、とある商会の御曹司に当時の一人娘が嫁入りし、力が受け継がれる事無く曽根島家は無くなった。今鬼嶋町を守るものはおりません」

「そんな。何百年も続く由緒ある一族なのに」


 曽根島一族は、女の家ともかつては深いつながりを持っていたが、ここ百年以上は何の交流も持てずにいた。

 その理由を知り、女性は早足で小屋を出てすぐに出発の準備をした。


例によって、1話と2話は怖くありません。

元々続編は考えていませんでしたが、続編を望む声がありましたので作ってみました。今回は日本の王道の化け物の鬼を題材に作ってみました。

果たしてこの先主人公がどうなるのか、僕も書いていてすごく気になります。


前作を読んていない方は、「妖しの魔鏡」も是非読んでみてください。

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