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聖獣だってばよ?  作者: ゴロタ
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暗躍する者

 


「何だと!? も、もう一度申してみよ!」

「まぁ……ガルデニア卿には、寝耳に水な話ではありましょうなぁ…………」


 クインツはニタニタと笑う。 その顔は醜悪の一言に尽きる。 その表情を見てイラッとするのだが、このクインツ、ガルデニアが長年手足のように使っている情報屋でもあった。


「クインツ! 御託は(さえ)ずらなくてよい。して、 エドウィン様の婚約者が決定したとは、まことなのか?」


 勿論周到なガルデニアだ。 複数の情報筋から、同様の話は伝わって来ている。 その情報の正確性を確認するために、クインツを邸に呼んだのである。


「はい。 ガルデニア卿にとっては、本当に残念だと言わざるを得ないでしょうが、そのお話は事実に御座います」

「クッ…………そうか。 しかもそのエドウィン様の相手というのが、聖獣様であるとな? そんな………人ですら無いではないか」


 この話を最初聞いたときは、どんな冗談なのかと伝令者に向かってワッハッハと豪快に笑ってしまった。 しかし、その伝令者が全く笑っていないのを確認して、その笑い声は次第に小さくなり、仕舞いには消え果てた。


「ええ、ガルデニア卿の仰る通りでございます。ですが我が国を守護して下さっている聖獣様が、第七王子を番だと仰せですのでそれに異を唱える事が出来る者など我が国におりましょうか? それに………あの(・・)第七王子ですので………」

「クインツ! それ以上申すな!! 不敬であるぞ!?」

「何を今さら…………第七王子への扱いなぞ、その程度で充分しょうに?」


 クインツはそう言うと、人の悪さを纏った笑みを浮かべる。


 エドウィンを産んだことで、王妃は亡くなったのだ。 現在はまだましな扱いになったとはいえ、あの当時エドウィンへの風当たりは相当酷かった。


「………それは昔の事だ。確かにお前と同じ意見の者は上位貴族の間では少なくない。 だが普段から気を付けておかねば、いざとなった時にその侮りが表に出てしまうであろう。 エドウィン様に対しての不敬な発言や態度は今後はきちんと控えるように。 分かったなクインツ?」

「…………ガルデニア卿の御意に従います」


 あれほど侮っていた相手なのに、今さらどう取り繕っても無駄だろうに。 クインツは貴族とは難儀な生き物なのだなと、再認識した。


「して、いかがなされます? ガルデニア卿のお嬢様と、第七王子とのご婚姻をお考えだったはずでしょう?」

「うむ。 それについては考えがある。 聖獣様の番にと命じられたとしても、だ。 お子は必要であろう? なので我が娘をエドウィン様の側室にでも宛がえぬだろうかと考えておる」

「…………ご側室にございますか? たかだか第七王子にティファニア様をご側室にと差し出すのですか?」


 ガルデニア卿の娘であるティファニアは、高位貴族の娘として何ら恥じる事が無い教養と気品を兼ね備えた令嬢である。 年齢差はあるが、第一王子や第二王子の元に嫁いだとて否やない。しかしガルデニア卿が選んだのはよりにもよって曰く付きの第七王子、エドウィンであった。


 ガルデニア卿がどの様な判断を元に、あの第七王子へと、娘を差し出すつもりなのかが全く分からなかったクインツであったが、ガルデニア卿の次の言葉で感ずるものがあった。


「エドウィン様こそが、我が王国を統べるに足る御方だと判断したまでだ。 だから聖獣様に番であると選ばれたに違いない」

「…………なるほど」


 クインツにはこのガルデニア卿の判断が、一概に間違いであるとは断言できなかった。 何故ならば、気にする価値もないと思っていたエドウィンの元に、価値が生じたからである。そう、聖獣の番としての価値が。


 その高い価値に、今後は他の貴族たちもエドウィンの今後に注目するだろう。 その点から鑑みても、ティファニアをエドウィンの側室に宛がうのも良いだろうとクインは思った。





「はてさて………このガルデニア卿の判断が、凶とでるか吉とでるか…………愉しみですねぇ」



 クインツは愉しげにポツリと言葉を呟いた。





本日のイオ殿もまた可愛すぎる。

私の心のオアシスはエドウィン様の足下で、プープー鼻提灯を膨らましたり萎めたりしながら寝入っている模様。


その少々間抜けなご尊顔は、聖獣なのに可愛らしさが際立っている。


そんなお姿を柱の影から見詰めつつ、シャカシャカと大きな紙にその愛らしさを描く私。

こないだの後遺症にしばしば悩まされて居りますが、イオ殿を見ていると癒されます。


「おや? スカルゴ神官? このような場所で一体何を……………」

「ぎゃぁぁぁぁぁ~!! 私の後遺症(トラウマ)が目の前にぃぃぃ!!!」


マッチョの兵士恐怖症。


私は描いていた大きな紙を小脇に抱えると、脱兎の如くこの場から走り去ったのであった。


これは断じて逃げた訳ではない。 戦略的撤退なのである!(間違いなく逃げてる)


「元気なご様子…………良かった」


何か聞こえた気がするが気にしない。私にはイオ殿が居る。私にはイオ殿が居る。 私にはイオ殿ががががが…………。





本編との落差がエグい。

スカルゴ神官バグってます。


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