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聖獣だってばよ?  作者: ゴロタ
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エドウィンのせいで私は………

会話中心回でっす。

 


『ええっ!? どういうこと?』

『どういう事も何も、私たちはソロソロ神界に帰るわ』

『でもでも………わ、私は? 一緒じゃ無いの?』

『あら、おかしな事を言うわね? 貴女にはもう番が居るのよ? しかもその番は人族。 番は一緒に居るのが当たり前であり、相手が人族では神界には連れていけないわ。 分かるわね?』


 聞いてない。

 全くもって聞いてない。

 勝手にエドウィンを番と決められて、おまけに神界に帰れない何て私は一言も聞いてない。



 私をエドウィンの番であると、スカルゴ神官が聖王国の人々に(のたま)ってから約一週間が経った。 私たち兄弟のお披露目をするために来たのだから、終わったら神界に帰るのは当たり前だ。 むしろ現在は長居し過ぎてる位であった。


 私もこの番騒動(?)が無かったら、きっとハァ~ヤレヤレ、やっと帰れる~♪ って喜んださ。 でもね、当事者になると分かることもあるんだよ。


 そろそろ幼獣から、成獣になる時季だからと言ってもまだ成獣じゃない、すなわち、私はまだまだママやパパと一緒に居たい年頃(子供)なのだ。


『まだ皆と離れたくないよ! エドウィンは確かに美味しい匂いがするから気に入ってるけど、番かどうかなんて分からないもん! ママが勝手に私の番だって言ってるだけだし!』

『アレが番じゃないとでも言うのかしら? じゃあアレを置いて、イオは私たちと一緒に神界に帰るの? 帰れるの?』


 エドウィンを置いてママたちと一緒に神界へ帰る?

 そりゃあ………………『もちろん! 帰れるに決まってるじゃん!』 という台詞が、中々口から出て来ない。

 実際に私の口から出るのは『グルルゥ……………』という低い唸る様な鳴き声のみである。


 そんな私の態度にママは『仕方がない子ね』と囁くと、更にこう言い放った。


『それに貴女は番が出来たのだから、もう幼獣じゃないわ。 たとえ姿が幼獣であっても、成獣と同等に扱わなければならないの。それが一族での決まり事よ』

『………………じゃあ、じゃあママたちがこっちに居れば良いじゃん!』


 おお、我ながら良い考えだ。 そうだそうだ。私が神界に帰れないのならば、ママたちがこっちに居てくれれば丸く修まる話だよ。


『えっ? 嫌だわ』

『だな。 イオには悪いがそれは俺も嫌だな』

『俺も嫌だ』

『僕も~!』


 即座に皆から断られた。なぜ?

 エドウィンが手ずからくれるレッドボアの丸焼き、メッチャ美味しいじゃん! 庭園にあるおっきな噴水で水浴びするのもメッチャ楽しいじゃん! お城のひっろいバルコニーから階下に飛び降りるのもメッチャ爽快じゃん!


『…………皆がそんなに嫌がる理由ってなあに?』


『『『『本能』』』』


 えっ? 四匹の声がピッタリ揃っちゃったよ。 本能的にこっちに居たくないって……………ええ~~~? そんなの私は感じないけど?ってことは私には本能が無いってこと? そんな馬鹿なっ!? 自分で言うのもなんだけど、私って本能丸出しじゃない? ねぇ!?


『じゃあ私には本能が無いってこと? だって別にこっちでの暮らし嫌じゃないんだけど?』

『それはね、イオ…………貴女の無二の番がここに居るからなのよ。 だから貴女に本能が無いとかそういうのでは無いの』


 またエドウィンか。

 私が神界に帰れないのもエドウィンのせい。

 私が人族の世界から離れがたいのもエドウィンのせい。全部全部み~んなエドウィンのせい。


『…………エドウィンめぇ』

「あれ? 僕がどうかした?」


 ポツリと呟いた私の声に背後から反応があった。


『エ、エドウィン……………べっつにぃ~』


 で、出たなエドウィン!


 私が神界に帰れない元凶が目の前に現れたので、プイッと明後日の方向を向いて自分のモヤモヤとした複雑な気持ちを誤魔化す。


「イオ~? どうしたの?」


 私が頑張って自分の複雑な気持ちを誤魔化しているというのに、エドウィンは全く意に介さず椅子に座ると、自分の膝の上に私をチョコンと座らせた。 おまけに私の喉を指先でコチョコチョするのである。


 それはモヤモヤが一瞬で吹き飛ぶほどの破壊力だった。


 私は蕩けきった表情で喉から『ゴロゴロ~ゴロゴロ~』という気持ちよさげな音を立てながらエドウィンの膝の上でグデェ~~~ンと寝っ転がって(くつろ)ぐ。





 そして………………私がエドウィンの膝の上での、至福の一時を堪能している間にママたちが『じゃあイオを頼むわよ!』とか『たまにイオの様子を見に来るからな!』とか『イオによろしくと言っておいてくれ』とか『イオを泣かせたりしないでね~?』などと言いながら、さっさと神界に帰って行った。



 それを知った私は神界がある大空へ向かって『エドウィンめーーーーー!!!』と、悔しげに叫んでしまったのであった。





『アレが番じゃない番じゃないって言うけど、番じゃなかったらなんなのかしら?』

『確かに…………あんなに気を許した表情で、膝の上に乗ってるしなぁ………』


イオの態度から、エドウィンが番であるのは間違いないのだが、未だに本人には自覚が薄い模様。レアはヤレヤレとため息を吐いた。


『ねぇ母上? このまま神界に帰ってしまった方が楽ではありませんか?』

『そうだよ~! このままだと、イオはまだまだ駄々をこね続けるよ~』


リュギとリュイが意見をのべる。


『確かにそうね。 イオの駄々をこねている光景が眼に浮かぶわ…………。 面倒くさいから、この隙に神界に帰りましょうか?』


レアは二匹の意見を聞くと、非情とも言える決定を即座に下し、クルリと体を反転させた。 そして躊躇いもなく部屋から出ていこうとする。


『………さ、さすがにイオが可哀想じゃないか?』


ヴァルだけは娘の心配を本気でしている。


『じゃあヴァルだけ残れば良いじゃない?』

『無理だ! イオは心配だが、番であるレアと離れるなんて俺には無理だ!』


どちらか選ぶのは辛い。

しかし聖獣は番と共にあるのが当たり前の生き物だ。


『すまんな…………イオ。 不甲斐ないパパを許してくれ。そしてお前の番と達者で暮らせよ…………』


ションボリ尻尾を下げながら、レアの後に続いてヴァルは部屋から静かに去って行くのであった。


『じゃあなレア!』

『またね~レア!』


リュギとリュイも両親に続いて部屋から出ていったのであった。



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