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聖獣だってばよ?  作者: ゴロタ
6/9

エドウィンside

お読み頂きありがたいの極み。

今回はノーテンキなイオ視点ではございません。


 


 エドウィン・デュランダルトは、聖獣に守護されし、デュランダルト聖王国の第七王子としてこの世に生をうけた。


 そしてエドウィンの母である王妃は、高齢でエドウィンを産んだため産後の肥立ちが悪く、呆気なく風邪を拗らせて亡くなった。


 もちろん王妃が亡くなってしまった事は、エドウィンが悪いわけでは決して無い。


 しかし悲しみに(さいな)まれた者たちの行動は、謀らずも幼いエドウィンの心を傷付ける。


「王妃様が亡くなられたのは、エドウィン様をお産みになられたせいだわ」 「下々の者にも慈悲深く、優しい方だったというのに………」王妃付きであった侍女たちが、ポロリと溢した悲痛な言葉を、たまたま通りがかった幼いエドウィンが聞いてしまい、その無垢な心を黒く染めた。



 第五から上の王子は、ある程度分別が付く年齢であったため、直接エドウィンに何かを言ったり、行動を起こしたりはしなかった。


 しかしすぐ上の兄である第六王子カドゥンは、エドウィンよりも三つ歳上なだけであった。まだ母恋しい年齢であった。 そのためエドウィンと顔を合わす度に「人殺し!」「母上を返せ!」「お前が産まれなければ!」などと罵倒を繰返し、突き飛ばしたり叩いたりと暴力を振るったりもした。


 それによりエドウィンの心を真っ黒に染めあげた。



 流石にカドゥンが分別の付く年齢になると、エドウィンに罵倒を浴びせたり、暴力を振るうことは無くなったのだが、幼いエドウィンの心に染み付いた黒は落ちなかった。 そして年齢を重ねる(ごと)にエドウィンの顔からは笑顔が消え、代わりに瞳の奥が常に冷めている微笑みを、顔に張り付けるようになっていったのであった。



 ***



 月日は流れ、エドウィンは十歳になっていた。



 その日もエドウィンは普段通りに過ごしていた。その日は大変お目出度い日であり、数百年もの長きに渡って聖王国を守護してくれてる聖獣様が、新たな聖獣である三匹の幼獣をお披露目をするという、近年稀に見る慶事であった。


 神官はもちろん、国の伯爵以上の高位貴族、そして王族も聖獣様を迎えるため、庭園に集まっていた。

 そんな中、エドウィンだけは普段と変わらない生活を過ごしていた。 自分が祝いの席に居たら、皆気まずいだろうとの配慮からであった。



 他の兄弟たちが暮らす、王宮の中心地から一人、離れた王宮の隅に部屋を構えるエドウィンは、静かに読書をしていた。



 物語が佳境に入ったその時、突然扉の方からカリカリと何かが引っ掻く音が聞こえてきて、読んでいた本から音の方へと視線を向ける。


「……………?」


 カリカリという音はその後も断続的に続き、小さな穴が開いた。 エドウィンはこの時、城の図書棟で読んだ【王城に蔓 延(はびこ)る悪霊集 上巻】の、第六章三項が脳裏に浮かんでいた。


 悪霊には基本的に実体はない。 しかし年月を経た深い怨みによって、稀に実体化する場合がある。 もしも実体化してしまった悪霊に遭遇してしまったら、どうするべきなのか?

【※対処法は下巻に記載させて致きます】



 余計な部分も一緒に思い出してしまった。 そう、エドウィンはまだ下巻を読んでいなかったのである。


 その間にも扉から聞こえるカリカリ音が止まることは無かった。むしろ小さな穴が開いてからの方が更に音が大きくなったほどだ。


 悪霊でも実体化していれば、物理攻撃は有効な手段である。 エドウィンはカタカタと震えながらも、いつでも抜けるように護身用の短剣の柄に手を置いた。



 扉の小さな穴がみるみる内に大きくなって行く。 エドウィンの緊張も最高潮に達しようとした、正にそのとき、その穴から何かが勢いよく突き出て来たのであった。


「ひっ………な、何? あ、あれっ? 猫?」


 そう、何かとは猫の頭部だったのだ。

 そしてすぐに猫はその穴から部屋の中に入ってくると、ホッとしているエドウィンに向かって飛び付いてきた。


「う、うわあっ!? なに? なんなの?」


 動揺していたエドウィンは、思わずその猫を抱き止めてしまう。 するとその猫は意外な行動に出る。


「……うひゃっ! アハハ………ちょっ、止め………く、くすぐったいよぉ…………」

『ムフ~…………美味しそうな匂い~ サイコーだよぉ~』


 エドウィンの首筋をクンカクンカし、その後おもむろに首筋や胸元をザリザリな舌で舐め始めたのである。


「うっひゃあ! ザリッてしたよ。 猫の舌って結構痛いんだなぁ……」


 最初は猫の舌って結構痛いんだなぁ………などと悠長な考えが浮かんでいたのだが、何度も舐められる内にソコが段々痛くなって来た。


「んっ………いたっ………痛いっ……あ、ンンッ……。ンやぁぁぁっっ…………」


 ずっと舐められてしまい、首筋や胸元がヒリヒリと痛い。

 ついにエドウィンは十歳にもなって、しくしくと悲しげに泣いてしまった。 せめてもの抵抗に泣き顔を曝したくなくて、両手で顔を覆って隠しておくことにした。 それがロイにとんでもない勘違いを起こさせる原因になるのだが、そんなの十歳のエドウィンに分かるはずも無かったのであった。




 これがエドウィンの【(つがい)】となる、聖獣イオとの出会いであったのだが、ロマンチックやドラマチックとは無縁な出会いであったのは、言うまでもない。







ちなみに【王城に蔓延る悪霊集 下巻】に記載されている対処法はこんな感じ。


①とにかくまず逃げろ!

②無理ならば戦え!!

③聖なる水や聖なる塩を用意(聖なるシリーズが無ければ清水や調味料の塩でも代用可※ただし威力は絶望的に落ちる)近寄ってこられたら掛ける。ただ掛ける。邪念を振り払って掛ける掛ける掛ける!!!

④水も塩も入手出来なかったというそんなあなたに朗報です。 敬虔な信徒であれば神に祈ってみるのもひとつの手です!!!!(※ただしそれで助からなくても著者を怨んで化けて出るのは止めてね♡)

⑤祈っても今一つだったそんなあなた★ 諦めが肝心な場合も時にはあります。この本の最後のページには、棺桶と有り難い神父のお祈り付き葬儀が、半額になるクーポン券が付属しています。 半額券であなたのご家族はハッピー♡

神父のお祈りであなた(悪霊)もハッピー♡

本が売れて著者もハッピー♡



※この本の収益の半分は聖教会へと寄付されます。




って、間違いなく聖教会と著者は癒着してるよな!?

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