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聖獣だってばよ?  作者: ゴロタ
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番ですか? 私にはまだ早すぎない?

暑いですね。 もう夜更けだと言うのにこの不愉快な暑さ………。 部屋に扇風機しか無いので頭茹だる。多分誤字脱字はそのせいです(言い訳)

 


 入ってきたとほぼ同時に、スカルゴは外に出ていった。 なにしに部屋に入って来たのかな?とか思ってると、部屋の外から聞き覚えのある声が耳に入ってくる。


『レアッ! ま、待てって!?』

『ヴァル、邪魔よ。お退きなさい!』

『一旦落ち着け。 お前はいま冷静じゃない』

『当たり前よ。 アホの相手は冷静じゃ無理なのよ。 勢いで言い(くる)めないと駄目なの! 若しくは力ずくで分からせるしかないのよ!どちらが上なのかってね!』

『うはぁ………む、無駄に良い笑顔だなレア…………』


 扉の向こうから、こんなはっちゃけた両親の会話が聞こえて来た。 さてあなたならどうする?


 ①怯むことなく闘う

 ②尻尾を巻いて逃げる

 ③溢るる知能を駆使して論破する

 ④全面的に降伏する

 ⑤庇護からの脱却、つまり自立する


 って、どれもこれも録な選択肢が無い。


 ①はまずあり得ない。勝てるわけないし確実にお仕置きルートだ。②は現実的に無理。秒で捕まってお仕置きされる未来が目に浮かぶ。③には自分的にちょっと自信があるけど、結局はママとの舌戦に負けてお仕置きされるイメージが湧く。④が一番妥当だけど私のプライドがノーと囁いてくるし、まんまお仕置き確定コースだよね? ⑤も現実的に考えてまだ無理。将来的にはそうでありたいけれど、今は無理。そしてお仕置きへ………。 って、結局はどれを選んでもお仕置きされる未来にしか至れない。 ダメじゃん!


 そんな混乱の局地に陥っている私を、背後から抱き上げる者が居た。 そう、狂気を滲ませる少年こと、エドウィンである。


「捕~かまえた~♪」


 ひぎぁぁぁぁ…………ぁ……………ぁ………。

 フンスフンスッ……ううむ。分かってたけどやっぱ良い匂いだなエドウィンの分際で。 でもさっき存分に舐め回したからか、今は特に舐め回したいってほどの(たぎ)りは湧いてこないけど、やっぱし好きな匂いだよほんと………こんなことしてる場合じゃないのに嗅ぎたくなるってどんだけ~? 危険薬物とか使用していないよね…………エドウィン少年!?



『ほら扉壊されたくなくば、いま直ぐに開けなさいな! そこの神官!』

「ハハァッ! 畏まりましてぇぇぇぇ!!!」


 部屋の外からスカルゴの声も聞こえる。 どうやらママとパパを呼んだのはスカルゴの模様。この裏切り者がっ!(特にスカルゴは私の味方では無いが何となくキモいので、裏切り者扱いしてやった)



 バァーーーーーーーンッ!!!



 勢い良く扉を開いたスカルゴは、同時に軽やかなステップで背後に避ける。 もはやスカルゴの動きはただの神官には見えない。 一体何者なの? そして果てしなくキモい。理由は特に浮かばない。でもそこはかとなくキモい。



 ――――――そしてスカルゴが避けた瞬間、ママが部屋の中へと突撃してきた。


『あらあら、ご機嫌いかがかしらぁ? ねぇ…………イ・オォォォォォ???』


 私の尻尾が恐怖でピャンッて上下に弾む。

 これはかなり頭に来ていらっしゃる模様。 声が魔界からの使者(※聖獣です)の様だ。


『マママ………ママママ………ママママママママ………』


 余りの恐怖にもはや私の言葉は意味を持たない。 エドウィンに抱っこされたまま、しっかりと尻尾を彼の腕に巻き付ける。 放さない………決して放さない。このまま私と一蓮托生になるのだ。


 ママは私を抱っこしたエドウィンに、初めはああん? テメェ、邪魔する気かよ? って感じに柄の悪いメンチを切ってたんだけど、だんだんとオヤ? オヤヤ? みたいな怪訝な表情になり、最終的に困惑した表情になった。


『おい、どうしたんだよレア?』

『………………………………………………………』


 さっきまでの勢いが消失し、黙りこむママにパパが心配そうに名を呼ぶ。


『ふむ。 なるほどね。 これは………しょうがないことなのかしら?』

『は? どうしたレア?』

『ヴァル、この人族の匂いをちょっと嗅いでみてちょうだい』

『別に良いけどなぁ…………。う~ん? 何か少し良い匂い、か?』

『でしょうね。 コレは我々の持つ神力と似通った力を持っている様ね。 多分コレの匂いにイオは釣られたのね、きっと』

『そうか~? 確かに悪くは無いが………釣られるほどか?』


 パパがエドウィンの頭に鼻先を押し付けて、遠慮も無しにクンカクンカする。

 流石にパパほど身体が大きくなると、エドウィンも恐ろしいのか少しプルプル震えている。うん、端から見るとかなりのショッキングな絵面だよね、これ。 俺、コイツ丸噛じり! 的な。


『相性があるのよ。 コレはもしかするとイオの番なのかも………………』

『はあっ? つ、番だってぇ? コイツはただの人族だろ? 俺たち聖獣の番になるはず無いだろ!?』


 ママの唐突な発言にパパは素っ頓狂な声で驚く。 私も驚きだ。 驚き過ぎてエドウィンの腕に巻き付ていた尻尾がスルリと離れた。 それをエドウィンが寂しそうな声で「あっ………」と言った声が聞こえた。


『でも覚えがあるのよねこの淡い感じの匂い方。 確かヴァルの弟からもこんな感じの微かな匂いを感じたのよね。 番であるヴァルほどでないにせよ、好ましい匂いが…………』

『はあっ? レア、お前ディグにそんな匂い感じてたのか!?』

『ええ、少しね。だから番の身内にはほどほどに良い匂いが感じられるのだと思うのよ』


 どうやらママの発言にショックを受けたパパは、呆然とママを見詰めたまま黙る。


『だからかしらね………。 でもこれだけじゃ判断が難しいわね…………しょうがない、リィギ! リュカ! そこに隠れているのは分かっているわ。 出ていらっしゃい!』


 ママは呆然としたパパを無 視(シカト)して、リィギとリュカを呼ぶ。

 少しして、恐る恐るゆっくりと柱の影からリィギとリュカが顔を出してくる。 貴方たち………居たんだ。


『……なに?』

『……な~に?』

『貴方たちもこの人族の匂いを嗅いでちょうだい』

『はっ? 興味ないけど』

『え~? 何か嫌だな~』

『口・答・え・す・る・気?』


 ママのどす黒い不機嫌オーラ(※聖獣です)に当てられ、もの凄いスピードで柱から飛び出てきて高速で頷く二匹。


 クンカクンカ………クンカクンカと、どうも本日はクンカクンカ大会で大変ですねぇエドウィン? プププッ………。


『ていっ!!』

『ぷぎゃっ!』


 私の笑いの空気を察したのか、ママか軽く頭を叩いて来る。 またかっ!!


『イオ………カッコ悪い』

『イオ………情けな~い』


 リィギとリュカが私を貶してくる。これもまたかっ!!


『で? どうなの二匹共?』

『うん………確かに父上の言ったように悪くないと思う』

『そだね~! どっちかと言うと良い匂いの部類じゃないかな~?』


『ではほぼ確実だわね。 おめでとう、イオ! コレが貴女の番の様よ?』



 良い笑顔でママにそう告げられけど、そんなの信じられない。 人族が私の番? 異種族なんだけど? その上それが狂気を宿すエドウィンなの? 冗談よね? だって私まだ幼獣よ? 子供よ? 番とか決まるの早すぎじゃない?





どうも皆様ごきげんよう! 私の名前はスカルゴ! しがない神官です。


本編にてイオ殿にキモいキモいと言われている私ですが、何故でしょう? ちょっと可愛(かわゆ)い イオ殿をトキメキチックな眼差しでペロペロしたいなぁ……って見詰めているだけですのに!

えっ? それがキモいんだよって? ハハハ…………ご冗談でしょう? 言っておきますがこれはあくまでも信仰心ですよ? ええ、そうですとも! 信仰心(隠れ蓑)! 何て心踊るワードでしょうか? 決して私が末期のケモナーなどでは無いのですよ? 人語を理解し操る獣…………立派なケモナー対象ですって?

あなたたちの欲にまみれた欲心などとは、一緒にしないで頂きたい!!

大事な事なのでもう一度言いますよ? これは私の信仰心(隠れ蓑)です! 尊く清らかで無垢なる私のリビドー…………げふんげふん………そう、本音を隠す……ではなく正面から見据えるための信仰心ですよ?


おや? やっとご理解頂けましたでしょうか? はい? もう疲れたからソッとしておいてくれ、ですか???


はい分かりました。 ご自愛くださいませね? ではごきげんよう!

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