知らない。だって私には関係無いからね!
推敲………? 投稿してからしたりする、悪辣極まりない諸行の主たあ、私のことだ!!
部屋に入ってきた男は、満足気に己れの毛皮をペロペロと舐める私と、しくしく泣いている少年とを見比べ途方に暮れた表情を浮かべた。
「エ、エドウィン様? あ、あの? 大丈夫ですか? えっと………その………一体何があったのですか?」
「うぇ~ん!…………ロイ…………ロイィ…ィ…………」
エドウィンと呼ばれた少年は、しくしく泣きながら、ロイと呼んだ若い男へと両腕を差し出す。 いわゆる抱っこしてポーズだ。 いつも通りの事なのか、特にロイは異論を挟まずエドウィンを抱き上げようとして、その挙動がピタリと静止する。
数秒おいて猛烈に顔色が真っ赤になって行く。
おいおいどうした? 唐突的な発熱でもしたのかい? ボーイよ?
「エ、エドウィン様っっっ!? こ、このお姿は如何したのですか? 艶かしっ………いえ、ふ、不謹慎なお姿は一体!?」
ロイが慌てた理由は私には良く分からない。
でもジッと、ジ~ッとエドウィンの赤くなった首筋や、上衣がはだけた胸元を注視しているのは視認した。
「………こ、この様になる赤い痕って………。ま、まさか……………まさかエドウィン様は何者かに狼藉を受け、も、もしや汚され、て……………?」
ロイはそう言ってガタガタ震え始めたけど、それの犯人(犯獣)は私ですけど~? 汚されてって………ただ舐めただけですよ? でも何か面白いのでスルーしておく。 あっ………さっきは私がスルーされてショックだったけど、私がスルーする分には全く問題がない。 自己中だって? ハハハ………だからなんなの?
「か、確認をせねばっ! 失礼しますっ!!」
「きゃあっっっ!!」
ロイはエドウィンの下履きをペロリと捲った。うむ。確かに失礼な態度だなロイよ。
そして男同士とは言え、エドウィンの恥じらいの悲鳴も分からんでは無いが「きゃあ」ってなんですかね? 生娘か? 乙女か? というか、唐突に頭に浮かんで来た生娘って何の事だろ? 乙女って? うう~ん………さっきからチョイチョイ、良く分からない言葉が出て来るんだよね? これが人族の住まう世界の不思議ってやつ? 神界に居たときは、こんなこと浮かんで来なかったけど……………ま、良いっか?
「ロイ? なに? どうしたのぉ? そんなところ見られたら、僕………恥ずかしいんだけど」
「ぐふっ…………………」
頬を染めながら、涙の溜まった瞳で上目使いにロイを見詰めるエドウィン(下半身露出中)。 って上級者かよぉっ!?
ロイの奴がおもいっきり噎せたぞ? どれだけ攻撃力高めなの、エドウィン貴方…………恐ろしい子っ……………。
ひとしきり噎せまくったロイがようやく回復すると、視線をアチコチに忙しなく動かしながらエドウィンの下履きを戻してやった。
どうやらソコを確認したかった模様。 大丈夫だぞロイ! 私も箍が外れちゃたけど、流石にソコまで舐めないや。
「ふうっ………良かった。 ご無事でしたね?」
「………ロイがなにを言ってるか、僕には良く分かんないよ」
『それで良いのよ。 ロイが言ったことが分かったら、多分エドウィンは死にたくなるからね』
「えっ? そんな死にたくなる様なことを僕にしたの? ロイッ!?」
「ち、違います! 誤解ですよ、エドウィン様! 貴女も余計なことをエドウィン様に吹き込まないで下さ………………い……………?」
「………っ………………っ……………っっ………!?」
サラッと会話に参加した私に、ロイが驚愕の表情を浮かべ、エドウィンはパクパクと声にならない悲鳴を上げた。
『あれ? どーしたの? 私の声、聞こえてるはずだよね?』
小首を傾げて私が質問すると、エドウィンもロイも首だけがブンブンと上下した。 いや、言葉があるんだから喋れよ。
数秒唖然とする両者だったけと、直ぐに正気に戻って再起動した。
「ね、猫が喋った、だと?」
「ふぁっ!? や、やっぱりこの猫喋るんだ!」
慄くロイと、何でか嬉しそうに喜ぶエドウィンの対比がエグい。 特に悲鳴からの嬉しげに微笑むエドウィンには狂気を感じる。
『ちょっ、ちょっと! 近寄らないでくれる?』
「なんで? さっきは君の方から僕に抱きついて来たのに?」
『………それはそれ、これはこれよ!!!』
正論をぶちかますエドウィンにまたムカついて来た。 確かに私が先に抱きついたのは認める。でもね、私から抱きつくのと相手から抱きつかれるのとでは、まったく意味とか意義とかが違ってくるのよ。 私って追い掛けたい質なのよね。 逆に追い掛けられると、嫌気が差して逃げるタイプ。
まんま猫気質なの。
ジリジリとこちらへ近寄ろうとするエドウィンに『フシャーーーー!』と威嚇する私。
そんな奇妙な膠着状態を打破する者がまたもやこの部屋に現れた。
コンコン………キィッ…………。
「ややっ!? こちらにお出ででしたか…………。おお~~~い! イオ殿が見付かりましたぞ!」
その人物の名はスカルゴ。 最初に出会い、私の渾身の決めポーズを華麗にスルーして見せた神官であり、どうやらノックの返事を待たないで扉を開ける系、不届き者らしい態度の持ち主であった。
『あっれ~? イオどこに行った~?』
『ん? 後ろに居るだろう?』
リュカとリィギがキョロキョロ辺りを見回すと、末っ子であるイオの姿が見当たらない。
ほんのさっきまで一緒に居たはずなのに、あの我が儘で自己中な妹はどこに行ったのやら。
『居ないよ~?』
『……みたいだな』
身体が兄弟の中でも一番小さいとはいえ、流石に近くに居ないことは間違えようがない。
『おい、リュカが母上や父上に報告しろよ』
『え~なんで? ズルくない? リィギがしてよ~』
『リュカが先に言い出したんだろ? イオが居ないってさ』
『ええっ? そんなことで決めるの~? やっぱりそれってズルくない?』
ワアワア言い合い、両者お互いに面倒ごとを押し付けあっていると、背後よりヴァルが雄々しく近寄ってくる。
『おいお前ら、どうした五月蝿いぞ? 静かにしろ!』
『『ひっ…………』』
リュカ、リィギ共に小さく悲鳴を上げて黙りこむ。
『まったく…………ん? おい、イオはどこだ? お前らと一緒じゃないのか?』
ヤレヤレといった表情で辺りを見回すヴァル。 この行動がリィギとリュカと同じだ。 流石は二匹の父親であるといったところか。
『『…………………………』』
黙ったままの二匹に、段々とヴァルの表情が変わって行く。
『お、おいまさか………イ、イオはどこだ?』
ブルブル震えるヴァルに向かって
『知らない』
『分かんな~い』
二匹はそう言うと逃げるように走り去った。
『ちょ、待てっ!? えっ? これ、誰がレアに報告すんの?………………って、まぁ俺しか居ないかぁ……………ハァ~』
ガックリと項垂れた表情で、ヴァルはレアの元にイオの行方不明を告げに行くのであった。
『~~~~~~~~!!! あんのクソガキめがぁっっっ!!!』
誇り高いはずのレアが口汚くイオを罵るのは、多分もうすぐであった。




