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聖獣だってばよ?  作者: ゴロタ
2/9

我慢? 無理! だって私だよ?

誤字脱字………以下略。

 


 スタンッ………。


 前足と後ろ足の左右同時に交差させた決めポーズを取って、お城の拓けた庭園に着地した私。 ふふん? どや? 格好良かろう?


 チラリと周囲に視線を向けるが、周りに集まった誰一人としてスッゲ~! 格好良い~!って感じで見てこないし囃し立てもしない。 むしろ何だこの珍種は? 的な怪訝顔だ。 ぐぬぬ………解せぬ。



「…………ハッ! し、失礼致しました。 神界より御光臨して下さいまして、誠に有り難う御座います聖獣様方! 私は案内を任されております、神官のスカルゴと申します」


 スカルゴっていう神官と、その周りに居る人達に全員に私の決めポーズをスルーされた! リアクションをもらえないのって軽くショックだね。


『うむ。 この三匹が俺たちの愛し子たちだ。 数日内にお披露目せよ』

「はい! 畏まりまして! すでにご準備は整って御座います」

『あら。それでは直ぐね。 今回はどうなのかしら? ヴァルは前回参加したのでしょう?』

『まあな………ただ、前回と言っても何百年も前だぞ? そんなのいちいち覚えてないからな………』

『では新鮮な気分でたのしめますね?』

『ま、そうだな』


 パパとママがスカルゴ神官とサラッと普通に会話しているけど違和感がすごい。 一方は三メートルはある大型の獣。 もう一方はせいぜい一メートル七十センチ程度。 でもこの違和感の正体って何なんだろ? この感覚って私だけ? チラリと兄弟であるリィギとリュイの方を見るけど、涼しい顔をしてキリッとしてる。


 あれっ? どうやら私だけの感覚みたいだね。



「では歓迎の宴を開きますゆえ、こちらにいらして頂いても宜しゅう御座いますか?」

『ああ。分かった。 ほら皆、行くぞ』


 パパたちがスカルゴ神官に先導されて、ユックリと庭園から放れて行く。




 ―――――――のを後目に、私はスッタカタッタと逆方向に走って行く。 何でって? それはとても興味深い匂いがするからだ。 甘く切なくそこはかとなく美味しそうな匂いが。


 匂いの元を辿って走る。走る。走る。

 幼獣とは言え曲なりにも聖獣である私の嗅覚は誤魔化せない。 歓迎の宴とやらよりもこっちの方に心引かれるのだからしょうがない。


 クンカクンカ…………クンカクンカ…………。


 結構な時間走っただろうか。 近い………近いぞこの匂い!


 匂いが強く発生している扉の前までやって来た。 この中に美味しそうな匂いの元がある。


 扉を開けようと、必死になってカリカリと爪で引っ掻く。 でもどれだけ引っ掻いても誰も扉を開けてくれない事から、どうやら匂いの元は物だと私は判断した。なので遠慮もせずに爪を立てて存分に抉る。

 するとみるみる内に扉はボロボロになった。 終いには引っ掻き過ぎてポコンと小さな穴が開いてきた。 途端に美味しそうな匂いが倍増する。 うっひゃあ! 何この食欲をダイレクトに刺激する匂いはっ!


 扉を引っ掻くスピードがグングン上がる。 そして数分後その成果が実を結ぶ。


 どや? 幼獣なれど私だって一端の聖獣だもんね! この程度の木の扉ならばこれもんよぉ!ってドヤ顔しながらふんぞり返ってみる。


 扉に猫程度の大きさならば、通り抜けられる位の穴がボッコリと開いていた。


 いざ行かん! この匂いの元へ!!


 躊躇なくあいた穴に頭部をズポンと突っ込むと、一対の怯えた瞳の少年と目が合った。


「ひっ………な、何? あ、あれっ? 猫?」


 少年は驚いた表情だが、直ぐに恐怖は去った模様。 ずっとカリカリ音を立てて、更には扉に穴まで開けた相手が、私(外見は猫)だったので安心でもしたのだろう。 だがそれは油断と言うものだよ、少年!!


 扉の穴から抜け出ると、速攻で少年の元へ走り出す。 何でって? だってこの少年からとっても良い匂いがするのだ。 匂いの発生源はこの少年だったのだ。


 でも正直私はムカついていた。

 だって少年だったら私が扉をカリカリした時点で素直に扉を開けろよと思った。 わざわざ扉に穴を開けた私の労力が無駄じゃないの? って話よ。


「う、うわぁっ!? なに? なんなの?」


 驚き戸惑っている少年の胸ぐらにダイレクトジャンプしてやった。

 そして少年が私を反射的に抱き止めたところで、すかさずクンカクンカ………クンカクンカ……………と首筋の匂いを嗅いでやった。


「……うひゃっ! アハハ………ちょっ、止め………く、くすぐったいよぉ…………」

『ムフ~…………美味しそうな匂い~ サイコーだよぉ~』


 頭がパッパラパーになるほど芳しい匂いに(たが)が外れちゃう私。 匂いだけじゃ物足りない………ちょっとだけ………ほんのちょっとだけ……一舐め…………そうだ、ペロッぐらいなら許されるよね、きっと。


 ザリッ…………。


「うっひゃあ! ザリッてしたよ。 猫の舌って結構痛いんだなぁ……」


 うむ。そうだね少年、新しいことを知って一つ大人になったね。 猫科の舌はザラザラなのだ。 ペロッじゃなかった。 ザリッだったけどそこは諦めたまえ少年よ。


 う~ん………一舐めとか言ったけど無理。 これは途中で止めるのは無理な罪な味。 ザリザリと少年の首筋、果ては胸元にまで首を突っ込んで舐め舐めしまくる私。


「んっ………いたっ………痛いっ……あ、ンンッ……。ンやぁぁぁっっ…………」


 結局私が満足するまで少年を舐め回した(字面にするとマジで変態臭いな)のであった。 その間少年からは艶めかしい声が聞こえて来たけど、私の知ったことではない。



 その後少年は両手で、顔を覆いながらしくしくと泣いていた。


 

 そんな少年の汚されちゃった感、満載な微妙な部屋にコンコンと響く軽やかなノックの音。



「エドウィン様? こ、この扉の穴は一体どうされたのですか!? 失礼ながら私の一存にて開けさせて頂きます!!」



 それは慌てたような若い男の声であった。


 やばっ…………そういえば扉に穴あけちゃったんだったけな。


民衆は聖獣呼ばわり。しかしお偉いさんは聖獣様呼び。別に表記ミスとかじゃないです。 アバウトなだけです。

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