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リバーシブル・シスター  作者: 深峰 聚志
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第三話 『完璧だった姉の相談ーいち』

今回も少なめに。

 皆さんは年頃の女の子の部屋に入ったことはあるだろうか?

 特に姉とか妹とか友人とかの部屋。さらに細々というのであれば出来のいい完璧なイメージのある姉の部屋に入ったことがある、または見たことがある、しょっちゅう行ってるぜ!というそんな皆さんに一つ言いたい。

 女の子の部屋ってすげぇな……。なんていうか……ギャップ?

 何故、突然こんな話をしているのかというと今、目の前に広がる光景に驚きを隠せないからだ。


 「ふぁ……ふぁんしー?」


 「あんまジロジロみんな、変態!」


 あの完璧人間のイメージが強い天澄のお部屋は一言で表すならファンシー。

 年頃の女の子の部屋に入ったことがない素人身の俺だから驚いているだけなのかもしれないが天澄の部屋は可愛いぬいぐるみがベッドの周り、机の上、本棚と至る所に列をなして並んでいた。


 「……お前、ぬいぐるみ好きなのか」


 「そうよ……悪い?」


 少し頬を膨らませてそっぽを向いて拗ねる天澄。


 「いや、なんつーか……意外だなと思って」


 「なっ!? 私だって……か、可愛いのくらいす、好きだし……ふん」


 今度は顔を真っ赤にしながら怒る。今日の天澄はころころと表情がよく変わる。


 「……へ、変……かな」


 顔を紅に染めて恐る恐る尋ねてくる。


 「別に変じゃねぇよ、確かに完璧人間って言われてる姉とは思えない程ギャップはあったけど……でも、まぁ、可愛い趣味だと思う 俺は好きだよ こういう趣味がある天澄」


 「なっ、なななっ!? そこまで聞いてないわ! ボケーーーーーッ!!」


 鋭いアッパーブロウを顔面にクリーンヒット。部屋のドアに目掛けて背中を強打し、伸びる。


 「あっ……や、やりすぎちゃった」


 「『あっ……や、やりすぎちゃった』、じゃねえぇぇぇぇぇぇ!! 死ぬかと思ったわ!」


 「あ、あはは……ご、ごめん」


 天澄はちろっと小さい舌を出して謝ると床に座って俺を見る。

 さっきまでおちゃらけた表情をしていた天澄とは一変し真剣な顔持ちとなった。

 これから何を話すかはもう察しはついていた。そもそも俺が天澄の部屋にいる理由は一つだ。例の「相談」についてなのだ。


 「で、相談ってなんだよ」


 天澄が言う前に本題へと進める。


 「この前の……噂話あったじゃない? あの子達が少し言ってたけど……わ、私その……と、友達が……いない……の」


 恥ずかしがりながら、歯切れ悪く悩みを相談する天澄。


 「ずっとなのか?」


 小さく頷き、俯く。


 「そっか、よし」

 

 天澄は長い時間ずっと独りでいたんだ。

 俺には幸那や鷹輝がいたから独りの時間っていうのは今思い返すとあまり無かったと思う。

 でも、天澄の顔を見れば今までずっと寂しい思いをしていたのだとすぐ理解出来た。

 完璧人間で周りからも慕われている天澄。そんな穹の上の存在だからこそ近寄り難い雰囲気があったのだろう。

 だけど、本当の天澄は実は寂しがり屋で打たれ弱くて……完璧とは少し遠い存在だった。

 だから、ゆっくり立ち上がり俺は天澄の頭に手を伸ばし、優しく頭を撫でてこう言う。


 「俺が何とかする」


 「……あ、ありがと」


 顔を俯かせながら恥ずかしそうに天澄は礼を言うのだった。

 早速と言わんばかりに話を進めようとふと、疑問に思ったことを尋ねる。


 「友達って学校の子じゃなきゃダメか?」


 「え、こだわりはないけど……」


 「けど?」


 「その……実は」


 歯切れの悪いまま言葉に詰まると少しの間、部屋に静寂が流れた。何かを言いかけようとする天澄だが、口を開いては言葉を押し戻し幾らかそれを繰り返すと、意を決したのか顔を上げた。


 「友達がいない理由って……私、話すのがへ、下手 ってのもある……と思う」


 「へ? なんて?」


 耳を疑う驚愕の事実を目の前にいる少女は明かした。


 「だ、だから! よく独りだったし……その、何を話たらいいのか分からなくて……話すのが下手なのよ! 文句ある!? に、 二度も言わせんなっ! バカ!」


 ゆでだこのように顔を真っ赤にさせながら怒鳴る天澄。


 「でも、さっきなんて後輩に声掛けられてたし普通に話せてたじゃん」


 「あれは……社交辞令というかただの挨拶だから別に大丈夫だっただけで……」

 

 要するに、挨拶とかそういった会話は卒なくこなせるが、いざ誰かと話すとなると話題が分からなくて話に困る、と。

 これは単純に天澄の話題性の無さが問題……ということか。


 「とりあえず、別に話すのが恥ずかしくて喋れなくなるって訳じゃないんだろ?」


 「うん、それに関しては全くの無縁ねーー何かいい案でも思いついたの?」


 「なら、やる事は一つだろ? ひたすら……」


 「ひたすら?」


 「俺相手とかに練習」


 「……」


 「なんだよ なにか言いたげだな」


 「普通過ぎて」


 「お前は俺に何を求めてるんだよッ!!」


 「あ、ヴァイオリンの練習しないと」


 「頼んでおいてやんねぇのかよッ!!」


 「あとでね」


 「あの……頼んでおいてそれっすか……」


 黙々とヴァイオリンの楽器を手に弾き出す天澄を見て少しほっとする俺であった。


 (さっきまであんな辛そうにしてたのに今は……)


 楽しそうに大好きなヴァイオリンを弾く目の前の少女にはさっきまでの苦々しい表情とは一変し今では満面の笑みを浮かべていた。


 (天澄はこうじゃないとな)


 天澄の相談はこうして幕を開けたのだった。


今回も三話を書いてみました。よろしくお願いします!

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