「初対面の記憶3」
あらすじ。
少女を背中に慣れない重労働を強いられた主人公は、バス停に金属の廃材をいくつも積み上げた隠れ家に行きつく―――。
歩き疲れてやっと安全そうな場所を見つけた。ちょうど雨が降ってきたところなのでそこで休むことにする。
そこはいくつもの巨大な板状の廃材が積み上がり、唯一人が入れるほどの入り口になる穴をあけておいた程度のちょうどよい場所だった。中は広くないが、積みあがった廃材のおかげで気温が低くなることはなさそうだ。
それにしてもよく崩れないようにこれだけの廃材を積めたものか。中はバス停の後になっていて、屋根を中心に積みあがっている設計だ。
よく見ると電球も付いている。裸電球だが、この際光源があるのはありがたい。その先にはバッテリーが備わっていて、電力はここからきているようだ。あとどれくらいで電力が尽きるのかは知らないが、二十一世紀の終期ごろに流行したこのタイプで電球一つだと、大体付けっぱなしで八年程度。心もとないがそれだけあれば十分だろう。"上界"の"永久光"とは比べ物にならないくらい弱いが、こうなるとまた違ってくるものなのだなと痛感する。灯りをつけるとぼんやりと室内が浮かび上がり、壁面にインクで小さく書いてある文字も同時に映し出してくれた。
「私は旅に出ます。私が居ない間ここはお好きなように使ってくれて結構です」
有り難く使わせてもらうことにしよう。と、僕は全身に伝わる筋肉の激しい痛みを我慢しながらそう思ったのだった。
今回は主人公ボクが出てきませんでした。主人公僕と主人公ボクは語り手の僕とその当時のボクという設定です。ただでさえ読みづらい私の文章で長いと疲れるかなと思い、短い話をいくつも作る形式にしました。