はじまり
異世界転生ものは初めてになります。
どうぞよろしくお願いします。
ああ、嫌だな。
流れる景色を見ながら、何を思えばいいのか。
……そんなもの、決まっているじゃないか。
(死にたくない)
ただ、それだけだ。
そもそもどうしてこうなったのか?
アイツと喧嘩して、突き飛ばされた。
喧嘩した場所が学校の屋上。落下防止のフェンスが脆くなっていて、よろけた私を受け止められる程の強度は残っていなかったみたいで。
ガシャン、と音を立てて私の体は空中に投げ出された。
痛かったのは一瞬で、その後は浮遊感しかない。ただ下へと落ちていく。
―――…多分、助からない。
(嫌だ、死にたくない…!)
まだ、やり残したことが多すぎる。こんなことで、私は…――――
地上が近づいた時、意識が
「………怜」
優しい声が聞こえる。
あれ、私どうして…?
「うん。気付いてはいるみたいだね。」
視界は白い。何処か温かみを感じる白だ。そして、水に浮かんでいるような感覚。体は動かない。…動かせなかった。
声は耳から聞こえてくるのではなく、頭に直接響いてくる。
「わかっているかもしれないけど、君は死んだんだ。」
「…やっぱり」
声は出せる。けど、依然体は動かない。辛うじて目を動かせるが、白しか見えない。
「ねぇ、君はどうしたい?」
――生きたいのか、逝きたいのか。
…そんなもの、決まっているじゃないか。
「生きたい。まだ、終わりたくない」
こんなことで、終わりたくない…!!
「君なら言うと思ったよ。わかった」
とたん、体がふわりと浮いた感覚。下の方から温かい光が溢れ出した。
「…え?」
「君を異世界へ転生させます。……こちらの世界なら確実にミスはしないから」
「い…異世界?というか…ミスって?」
問い返せば息を呑む音がした。「ええと」とか「その」とか言い淀んでいる。
「……その、僕のミスで君は死んでしまったんだよ」
「……は?」
"僕のミスで死んだ"?
え、何なの。この声のヒトは神様か何かなの?…いや、転生させるとか言っているあたりそんな気もしていたけど…――
じゃなくて、ミスって何?神様の失敗で私は死んだの?
何だか急に腹が立ってきた。自分のミスのせいで死んだヒトを、都合よく転生させる…しかも、「確実にミスはしない」とか言っているし……次は無い様にするってこと?
いや、そう言うなら最初から気をつけてほしいというか…
「あ、その…転生させるからね?」
声がして、体がゆっくり降下していく。同時に体が動かせるようになった。
「え」
驚いたような声が聞こえた。何故なら…私が体を動かしたからだ。
相変わらず視界は白い。先程感じた温かい光はゲートの様な物から溢れている。仰向けになっていた体を起こすが、どういうわけか立つことが出来ない。今度はうつ伏せの様な体勢になった。そのまま手探りするように闇雲に手を伸ばす。
何度か空を切ったが次の瞬間、何かを掴んだ。それを思い切り引っ張る。
「ちょ、や、やめっ」
今度は耳から声が聞こえ、それがとても若い声だとはじめて認識する。声の主は慌てているようだが、関係ない。
「これは…仕返しよ!」
「仕返しって…はぁぁぁぁぁぁ!?」
そんな叫び声を最後に、私の視界は光で埋め尽くされた。