福沢諭吉に食べられた人々。
あぁ・・・。またこの街で奴に食べられた人々がいる。
―ケース1―
「あぁ~諭吉さん降ってこないかな」友人がそう言うと、ヒラヒラと「福沢諭吉」が降ってきた。
次の瞬間、その「福沢諭吉」とは違うものが降ってきた。
ドスッ。鈍い音とともに地面を赤く染め、あらぬ方向に曲がって、ピクリとも動かない。
友人は突然の出来事におどおどし気を失った。たまたま、巡回中だった警察官がそこへ行き。
「〇時〇分死亡確認」そう言っていた。
救急車とパトカーのサイレンが聞こえる。
「大丈夫かい?」気絶している友人に駆け寄りそう言った。
「事故の状況を詳しく聞きたいのだがいいかな?」と警官は僕に言った。
僕は「たまたま歩いていたら上からお金とともに降ってきた」と伝える事しか出来なかった。
「最近、多いんだよな。こういう事・・・」警官はそう言っていた。
友人と共に救急車に乗ってひとまず病院へ行った。
その後友人も無事に起きお互い帰宅することができた。
昨日の事もあって、友人は学校を休んでいる。
無理もない。目の前で人が死んだのだから。
昨日の場所を通ると昨日の警官がいた。
目が合ったので「こんにちは」と挨拶をしてみた。
「あ、あぁ。昨日の子か。こんにちは」警官は答えてくれた。
「なんか。あの人は最後はお金に埋もれていましたね」
「あぁ・・・。また、そいつに食われたんだよ。最近多いんだよな」
「自殺だったんですか?」
「自殺というかな・・・」
「ヤクザ絡み・・・」
「鋭いね。薬物に手を出して借金まみれで、最後は薬物で頭がおかしくなって・・・って感じだ」
「・・・」
「ま、君も薬物に手を出さない様十分気を付けるんだぞ」
「うん」
最近は芸能人でも薬物に手を染める人間が多い。
ストレスなのかそれとも違う意味があるのか・・・。
―ケース2―
この間の事件から数日がたった頃、友人に電話で呼び出された。
近所の喫茶店で待ち合わせをすることにした。
喫茶店で会うなりすぐに友人は
「ハルくん・・・。助けて」友人から突然言われた。
「ど、どうしたの?」
「このままだと私・・・」と突然泣き出す友人。
「ゆっくりでいいから、話してみて」
落ち着いてきたころ友人が話を始めた。
母子家庭でお金がないが、将来やりたいことがあるから
どうしても大学に行きたくて学費を自分で払うといって無理に行ったはいいが、
現実は学費は高く普通のアルバイトでは中々払えないから風俗でバイトをしていた事。
お金も貯まったので風俗を辞めようと思ったらオーナーが辞めさせてくれない。
辞めても追いかけるなどと脅迫をされている。
「私。どうしたらいいのかな」
「学校もあるから何処か遠くに逃げる事も出来ないよね」
「うん・・・」
「ねぇ、他にもっと事情があるんじゃない?」
僕は友人が何かまだ言っていない気がしてならなかった。
しばらく沈黙が続いた。
友人の重い口が開いた「実は、オーナーの愛人をしているの」
「うん」
「お金をもっと簡単に稼がせてくれるっていうから・・・」
「オーナーから出された分を返せって言われてるのかな?」
「そうなの・・・自業自得なんだけどこんな事になるなんて思わなかったの」
僕はどういっていいか全くわからなかった。
「ごめんね。ハルくん。ハルくんに言ってもどうしようもないのにね」
「俺の方こそ。何もできなくてごめん」
友人は泣きながら「でも、話せてよかった。借金になっちゃうけど頑張って辞めるよ」
友人はそう言って、去って行った。
数日後、友人から連絡があった「なんとか辞めれた!ちょっと借金になったけどね」
「今はバイトをしているの?」と僕は聞いた。
「今は、コンビニの店員だよ!給料は全然違うけどいい人ばっかり」
友人は嬉しそうに言っていた。
しかし、数か月したある日。
「あ・・・」
「あ。。。」
別の友人と飲みに行って歓楽街をフラフラしている時に出会った。
「ハルくん・・・」
「何?ハル知り合い?」
「あ・・・うん」
その日友人から会おうと連絡が来た。
「ハルくん・・・。」
「この間の事で呼んだんだよね?」
「うん」
友人から例の風俗は辞めてしばらくはコンビニ店員ですごしていたが、
時給900円だから8時間働いても7200円...。
風俗の時はすぐに4時間程度しかいなくても1万は超える。
「風俗に一度入った人間は、辞めれなくなるってこういう事だったんだね」
「・・・」
「風俗に戻って借オーナーへのお金はすぐに返せたよ」
「それでよかったの?」
「結局お金がすべてなのかも」
友人は続けた「お金があるから余裕があって周りが見れる。最初はコンビニでよかったの。
でも、借金もずっと貯まったまま。催促はされるはでね・・・だんだんストレスになったの。
お金が無い事が。それで、道端で配ってるティッシュみて。風俗ならすぐにお金が手に入るそう感じてしまったの」
「そっか」僕は友人が抜けられないまでにハマっているのは風俗ではなく、お金なのだと。
「ごめんね。この間嫌な目を見ているのにね。ハルくんにも相談してたのに」
「あぁ。それは大丈夫だよ」
「じゃあ、またね。お釣りはいらないから」
そういって友人は「福沢諭吉」をテーブルの上に置いて去って行った。
―福沢諭吉に食べられた人々。・・・END―