強烈な罪悪感
自己紹介が終わって、清水が空いてる席に西野を座らせた。
俺の三つ隣の席だ。窓際の反対の一番後ろ、智と間反対の席だ。
うちの教室は五列に机が並んでいるが、転校生用に無理やり机が置かれている状態だ。
心の中で、残念だったな智などと思っている俺だが。智にそんなものは関係ないようで、俺を含める四人の背中を通り抜けて、間反対にいる西野さんに向かって懸命に手を振っている。
西野さんもそれに合わせて、ずっと手を振り続けている。
智がやめるまでやめないんだろうな。智のバカに付き合わされるなんて可哀想だ。
だが助ける気はない。
その後、清水が気づいて注意したころには二分くらい振り続けた後だった。
昼休み、当然の事だが休み時間中、クラスの女子どもとバカ(智)が質問ぜめにしたせいで大分グッタリした西野さんが目に映った。
昼は弁当のようだ、ウチは大半が学食なので昼休み教室には弁当組の数人程度しかいない。しかも男子。
おかげで昼休みの質問ぜめはまぬがれたようだ。
ちなみに智も学食だ。
西野さんから目線を外し、自分の弁当を食べていると。
「木村君」
「は?」
かなり驚いた。突然、後ろに西野さんがいて、しかも自己紹介もしてないのに名前を呼ばれたのだから驚くに決まってる。
「え⁉︎あぁ、えーと、もしかして名前間違えてましたか?」
俺の返事が威嚇混じりだったのか、ビクッとした後、かなり申し訳なさそうにたずねてくる。
「いや、名前はあってる。木村だ。だけど何で俺の名前を知ってるんだ?」
「それは、上履きに書いてあるから・・・」
よく考えたら確かにそうだ。てことは下の名前は知らないわけか。
「それで、どうしたの西野さん?」
「え?」
「だから、俺の名前を呼んで近ずいてきたって事は、何か用事があるんだよね?」
「あぁ、うん、そうでした!」
本当に突然思い出したみたいに言うな。大丈夫かこの人。
俺は、西野さんは実は智と同類なんじゃないだろうかと思いながら、次の言葉を待った。
「もしよければ学校を案内してください!」
すごく眩しい、満面の笑みで言われた。そして思わず即答してしまう。
「嫌です」
「えぇ‼︎」
西野さんが驚愕の声を上げた。
まぁ、そうだろう。学校の案内を頼んだだけなのに即答で断られたのだから。
普通はそんな事くらい引き受けるし、ましてや用事があるならまだしも、即答などはしないだろう。
だが俺は断る。即答する。
だって変じゃないか。何故あったばかりで目があったくらいにしか親しみがない俺にそんなことを頼むんだ。
何かを狙ってるにきまってる。
「なんで俺なんだ。さっき西野さんの周りに集まってた人達にでも頼めばいい」
「そうなんですけど、一番親しみがある木村さんに頼みたいんです」
「は?」
何を言ってるんだこいつは・・・。
「一番親しみがあるって・・・、自己紹介の時に目があっただけじゃないか」
「いえ、やっぱり気づいてなかったんですね。私達、朝から廊下ですれ違っているんですよ」
ますますわからない。
いやまてよ、朝からすれ違った・・・・・・・・・・・。
「朝から廊下をうろついていたのはお前だったのか!」
「はい!」
またもや満面の笑みを向けられた。
「というより、気づいていたんですか?」
やばい・・・。
さすがに『あぁ、めんどくさそうだったから無視した』とは言えるわけがない。
「いや違う!その時は気づいてなかった!後々になって誰かいたような気がしたんだ!」
つい声を荒げてしまった。
さすがにこの嘘はキツイか・・・
「そうなんですか。木村さんって抜けてるところがあるんですね。意外です」
もう何度目かという満面の笑みを向けられる。
なんて良い子なんだ。疑うことを知らないのだろうか。
それとも強烈な罪悪感を植え付ける技なのだろうか。
「木村さんに案内してもらいたい理由がわかってもらえたところで、あらためて。私に学校を案内してください!」
「・・・はい」
先ほど植え付けられた罪悪感に勝てるわけがなかった。
でもまぁ、よくよく考えると。西野さんが俺に学校案内を頼んだ理由もわかったので、別に断る理由もなかったのだった。
キャラが崩壊してないといいけど…。西野さんが千反田さんみたいな口調になってきたので…。
あと、内容がとても薄いです。