結構可愛い転校生【和樹】
処女作です。
今日の朝は、いつもより賑やかだった。
いつも賑やかなのだが、いつもよりも何だかウキウキしているような気がする。
そんな事を思いながら教室に入って行くと。
「おっはよー!和樹〜」
「・・・おはよう。智」
教室に入った瞬間、第一印象チャラ男の友達が勢いよく挨拶をしてきた。
ちなみに《和樹》が俺で《智》がチャラ男である。
「今日は何だか賑やかだけど、何かあるのか?」
さすがに疑問に思った俺は、賑やかさの理由を智に聞いてみた。
流行りの事や身の回りの出来事に、無駄に詳しいコイツなら何か知ってるだろう。
「ん?お前、知らないの?」
その、皆知ってますよ〜もちろん俺も〜みたいな返しやめろ、腹が立つ。
「知らないから聞いてるんだよ、いいから教えてくれ」
「もー、しょうがないな〜」
「いちいち語尾を伸ばさなくていいから早くしろ」
「はいはい」
やっと、本気で早くしろって雰囲気を出してる俺に、本気でしょうがないなーって感じの智が答え始めた。
「今日はなんと!このクラスに転校生が来るらしいのだ!しかも女子!」
「・・・へぇ」
「ちょっとちょっと!人がせっかく答えてあげたのに『へぇ』って何だよ!」
よほど驚くと思っていたのか、あまりにも素朴な返事に何故か智の方が焦っている。
「いやだって、別に転校生が来るからといってたいして何も思わないし。たとえ女子でも」
「お前はバカなのか!?もしかしたら超可愛子チャンだったり、クールビューティーな美人さんかもしれねーんだぞ!」
「漫画の見過ぎだ。そうでなかった時に、期待してた分ガッカリした雰囲気を出された転校生の事を考えろ。後、カッコイイ美人な美人さんって何語だよ」
その後、智の「お前は夢が無い」だの「英語は苦手なんだ」だのと、どうでもいい話を聞いてるウチに先生が来て、「おぉ!きたきたー!」なんていつもなら言わないことを言いながら智は自分の席へ戻って行った。
俺の席は中央の一番後ろで智の席は窓際の一番後ろ、主人公が良く座る席だ。
あぁ、だから漫画脳なのか。
HRが始まると、最初に今日の諸連絡があった。
普通は、諸連絡の前に転校生の紹介をするもんだろ。
諸連絡の間、転校生は一人廊下に立ったままじゃないか。イジメかよ。
ちなみに、諸連絡の内容は「もうすぐ期末なので頑張れ」だそうだ。
そういえば、期末が終われば夏休みのこの時期に転校なんて、結構珍しいな・・・しかもまだ一年生だぞ。
・・・珍しいといえば、さっき教室に来る途中に廊下でウロウロしている女生徒がいたな。俺を見てたような気がしたが、面倒臭そうなのできっちり無視してきた。
もちろん罪悪感どない。
顔も覚えていないし、もう会うことも無いだろう。
そんな事を考えていると、智お待ちかねの事が始まろうとしていた。
「えー、今日はお前らに新しい仲間を紹介する」
「待ってましたー!」
智がバカみたいに騒ぎ出す、本当にバカだなアイツは。
「静かにしろバカ!」
先生と以心伝心した瞬間でした。
一喝された後も騒ぎ続けた智は、先生にバカバカ言われ続け(+ちょっとした脅迫)、ようやく大人しくなった後に先生が仕切り直した。
「遅くなってすまない。入って来なさい」
そう言われ、落ち着いた口調で返事をしながら入って来た転校生は、黒板の前に立った。
とても可愛らしい声で、容姿も普通に可愛い。
前の学校では結構モテてたんじゃないだろうか。
セミロングの黒髪は、頭髪に規則がないこの高校では希少価値だ、きっとこの学校でもモテるだろう。
そんな事を思っていると、黒板に名前を書いてやるなど、何の前振りもなく「自己紹介して」と一言だけ先生に言われた彼女は、少し戸惑いながら自分で黒板に名前を書いて、切り出した。
「西野沙耶です。よろしくお願いします」
入ってくる時とは違って、緊張しているようだった。
ちなみに、黒板の前に立った瞬間から予想通りお祭り騒ぎの智、今回はクラスの男子達も加わっている。
おそらく、緊張と戸惑いの半分はコイツらのせいだろう。
そんなドンチャン騒ぎのバカどもは放って置いて。
HR前、『可愛い子が転校して来るなんて漫画の見過ぎだ』なんてバカにしててすいませんでした。という意を込め、転校生の西野さんをジッと見ていると。
たいして周りを見渡してる様子も無い西野さんと目があってしまった。
驚いた、この席は先生とも目があったことが無いのに。
それでも目を逸らさず西野さんを見ていると、何を思ったのか微笑みかけてきた。
さらに驚いて、さすがに勢いよく目を逸らした後に思いました。
普通に可愛いと思ってたけど・・・結構可愛いです。
ダメだしとか、感想とか頂けたら嬉しいです!
一応、智はイケメン設定です。