エピソード2 探し人
次回は15日の予定です。
輝が少し疲れた表情をし、家に入っていく。
僕はその後ろ姿を見送りつつ走り込みに行く、朝の冷たい空気を吸い込み肺が空気で満たされる感覚の後ゆっくり吐き出す。
「ねぇブン、大変な任務になるってどうしてさ?」
『ふぅ〜良いか小僧……お前さんもだいたい相手の力量はわかるだろ?』
「うん」
『恐らく昨日のカケルと名乗る小僧の力は強大だ、お前さんならどうする?』
「……仲間にする?」
ブンがうむと頷き、欠伸をしながらまた話だす。
『そのとうりなのだ、あれだけの能力を【黒の十字架】や【傀】がほおっておくわけないのだ』
「じゃ、運が悪かったら鬼神やエミティを同時に相手しなくちゃいけないのか」
僕は血の気が引いていくのを感じながら冷たくなってきた指先に吐息を吹き掛け走るペースをあげる。
何時ものコースを走り終えた僕は学校の支度を済ませ朝食をとる今日は和食だった。
「はい!輝!」
「しなくてはダメか?」
「は・や・く!」
このバカ夫婦は………てか、普通?かは分かんないけど大体は女の子が男の子にあーんをしてもらうんじゃないの?
なぜ、逆なんだ!
と思いつつも味噌汁をすすり眺める。
「いってくる」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい!」
カナメさんに見送られ森さんが運転する銀のクーペ・森アレンジで送って貰う。森さんのドライブに毎朝感心しつつ学校に到着した。教室は大半の生徒は集まっていて賑やかた。
「奏歌!輝!おはよう」
「おはよう」
「ああ、おはよう」
僕達が席に付き寛ぐと直ぐに夕夏が登校してくる。
僕達に気付くと直ぐに向かってくる。
「あんた達は何か知ってるの?昨日の異質な力の正体を?」
僕は知ってる事を全て話す夕夏はコクコク頷きグッタリする。
「じゃその子は能力を抑えず歩き回ってるってこと?!」
「ああ、だが伊吹が環視についててくれる、それに俺も午後から向かうつもりだ」
「僕もいく!」
二人が仕事モードに入りかかっているので引き戻す。
「ダメ!あんたは真面目に授業を受ける!」
間髪入れず夕夏に怒られ、輝も困ったと言う表情なのであっさりと諦めた。
授業は平凡に進むお昼になり輝が早退し夕夏は生徒会に出向き僕は一人になる。屋上にいきベンチに座り込みボーッと空を眺める、隼人がサボりで暇だ。
「………奏歌」
「うわぁ、咲鬼………久しぶりでいいのかな?」
「うん」
あの一件いらい姿を見せなかった咲鬼は僕の横に座る。
必然?かは分からないが咲鬼の唇にばかり目がいってしまい顔を赤くしてしまう。
「これ、返すわ」
「あ、読み終わったんだ!面白かった?」
「ええ」
余り表情を変えない咲鬼だが優しく微笑んだ。
僕もなんだか嬉しくなる。ちなみに僕が貸したのは小説で、へたれ極まりない兄とオレッ子な妹と料理人な弟の織り成すホームコメディだ。
暫く、兄のへたれっぷりに着いて議論を繰り広げる。
「……ん…また」
「どーしたの?」
突然バッと顔を上げて険しい表情になる。
「近い……昨日と同じもの……嫌な感覚」
「え?」
それ以来口を閉ざした咲鬼は立ち上がり、屋上から出ていった。
「………カケル・マガリ君の事なのか?」
『コゾウ!』
「なに」
『……奴が出てきても、手加減はするなよお前と才鬼とは敵どおしなのだ』
その事に気分が沈む、今更ながら咲鬼と知り合った事を後悔する。
『だが……我輩はコゾウに着いて行くだけなのだ』
ブンがニヤリと笑いステルスで消えた。
僕は蒼い空を見ながら午後の授業をサボタージュした。
〜〜〜〜〜輝〜〜〜〜〜〜
「………なにしてるんだ?」
「ガラスに張り付いてる」
俺は伊吹と共にカケル・マガリ達を監視している、不思議な力場を発してる玉を持ってアチコチ歩き回っている。
金を持ってないのか分からないが定食の見本を眺めガラスに張り付いている。
「それにしても輝、皆勤賞を諦めたんだボクに何か奢れ」
「わかった、ついでだあいつらも呼ぼう」
カケル・マガリ達との距離を縮めヒカルに話しかけたヒカリは肩で息をし、カケルは鵬を赤く腫らしピクピクしている。
休日の商店街じゃなくて良かったと思う。
「狩崎さん、ちょっと待っててくださいこのヘタレを片付けて………」
「ちょ……すいませんでした!」
悪魔のような笑みを浮かべユックリ迫るヒカリに冷や汗を浮かべ土下座した。
「情けない奴だな」
伊吹の冷たい一言に止めを刺され大人しくなった。
「ところで狩崎は何故ここに?」
ヒカリがソバを啜りつつ、聞いてくる。
「……仕事だ」
「そうですか」
ヒカリは感情を出さない用にしているが慣れてない直ぐに見破る。
「そう警戒する事もないよ、君達に危害を加えるわけじゃないしさ、すいませーん!お代わりお願いします」
伊吹が六杯目の天ソバを頼み、楽しそうに笑う見た目美少年な伊吹だ何回足止めを食らったことかヒカリも例外ではなかったようだ。
「は、はい、そうですね」
「ちぇ」
伊吹が食べ終わるのを待ち店をでる。
カケルは別れるまで伊吹をずっと睨んでいた伊吹に惚れたのか?
「食事有り難うな!」
「気にするな」
伊吹を睨むのをやめたカケルが俺に礼をいう、ヒカリも頭を下げて今度は住宅街の方に向かった。
「それにしても嫌なプレッシャーだね、本人は気付いてないみたいだけど」
「ああ、神鬼には劣るが強力だな」
また尾行を始める途中何度も女性に呼び止められうんざりする、伊吹には困ったものだ女なのに。
「君のせいだろ?」
「ん?何かいったか?」
「別に」
それにしても何がしたいだ?
あの玉に何が進む度に光が強くなっていく目当ての物に近づいているのか?
「うぉ?!なんだお前!」
「カケル!危ない!」
こんな時に、奏歌を運んで来た狐面の男だ。
男は手をかざし黒い焔を発射する。
「珍しい能力だ、危ないな………計画の障害になるか?」
「この!」
カケルが狐面に斬りかかるが簡単に避けられる。
「危ないな〜おっとまた珍客だ」
狐面が目線を合わせた先から空間が割れる。
割れ目から灰色のロン毛の男が出てくる。
「………あれは!NO・6レノンバルド!カケル逃げるわよ!」
くそ!伊吹はまだか!
俺は颯双を手にはめて駆け出す。
「引き時かな」
狐面は黒い焔に包まれ居なくなる。
俺は構ってる暇はない、カケルとヒカリの前に立ち、異質な気配を感じる男と対峙する。
「……お前は良くないモノだ、始末する」
「笑止」
俺は氣を練り拳に纏う、対する男も向かってくる構えで止まる。
(不味いなこんな町中で!早くケリをつけないと)
「狩崎さん!逃げてただの人間が賢者に勝てるわけない」
「そうだ!逃げろ!」
二人が心配した表情をしているが気が抜けない、久しぶり本気を出す必要がある。
「参る」
「いくぞ!」
一直線に突っ込み拳を繰り出す、かするが直撃はせず賢者とやらのチョップを回避ボディに左ストーリーがもろに入る。
「効かん」
「……………」
繰り出される鋭い蹴り、なんとか回避切り返し距離を詰められ回し蹴りを受け止める。
「やはり機械か……」
さっきから違和感を感じていたがこの男は両足とも機械で出来ている。
「くっ!」
普通の蹴りを織り混ぜ変則的な蹴りが繰り出される、しかも機械なので威力が凄まじい。
「輝!援護入ろうか?」
「いい!二人を守ってくれ!はぁ!」
蹴りを受け流し体制が崩れた、すかさずひじうちを腹部に叩き込みアッパーをアゴに決める。
「強い」
「最後だ、決める!」
俺の目が銀色に変わる、身体に力が溢れ、司会が白黒に変わる賢者らしい男の動きがスローモーションでわかる。
「絶・哭死蝶!」
俺から見ればスローモーション相手から見れば超高速の乱舞が決まる。
「?!敗北」
体の至る所から血が吹き出す賢者が倒れ俺の目が怨念や無念など様々な嘆きの感情が移る。
俺の瞳から黒い蝶が飛び立ち賢者の心を全て吸い付くす、酷い目眩と記憶、感情なのどの情報と呪眼の力がまた高まった。
「ぐっ!はぁはぁ使うのは久しぶりだな」
「お疲れ立てる?」
「ああ」
伊吹に支えられ、体制を立て直し息を整える。
服に着いた埃を払いカケル達の様子を見る。
二人とも唖然としヒカリにはハッキリと恐怖の色が伺える、カケルはぼーぜんとし呆けている。
「………すげぇ……リディアより……」
「ホントに人間?」
伊吹が見かねて手を叩く、二人はビクッと体を振るわせ現実に引き戻された。
「あれはなんなんだ?」
伊吹が指を差し血塗れの男に視線を向ける。
「あれは賢者………あたし達の敵です」
ヒカリはそれだけ口にする。
なんとなく気まずい雰囲気になるが明るい声が響く。
「輝〜!」
「援護の必要は………なさそうね」
学校が終わり気配を辿ってきたで有ろう夕夏と奏歌、場の雰囲気が穏やかになる。
「!!撤退!」
「なに?!」
レノンバルドがむくりと起き上がり、光の粒子に包まれ消えた。
「何あれ?」
「鬼神?」
二人が同時に質問をしてくる。
俺はカケル達から聞いた話を話した、二人はまた敵が増えたと落ち込む。
場所を移動し人気のない古い家が立ち並ぶ地域にくる。
〜〜〜〜〜奏歌〜〜〜〜〜
輝がカケル達に情報の提供を頼む、ヒカリは複雑な表情をするがカケルは有効的な態度で教えてくれた。
「ここね………近い」
「黒翼魔神に会える!」
二人が期待しじっと待つ、ゆっくりと近ずいて来る足音、角を曲がると現れたのは。
「あれ?何してるんだい、奏歌」
「あっ奏歌くん、こんちは」
現れたのは隼人と妃那さんだった話に夜と個人的にお世話になっている医者の帰りらしい。
「あれ?」
「そんな〜黒翼魔神じゃない」
二人がガッカリとし脱力した妃那さんは
「何か悪いことしたかしら」と呟く。
「じゃ僕は行くよ」
「皆さんまた」
隼人は妃那さんに歩調を合わせゆっくり帰っていった。
隼人達が見えなくなってから再び歩きだす、ヒカリさんは相変わらず難しい顔をするがカケル君の能天気な態度に呆れて、皆の方を見る。
「こうなったら、手段は選ばないわ!カケル!」
「わかった」
カケルから光る玉を貸してもらい、真剣な顔になる僕も笑うのを止めた。
「この次元玉の情報をあなた方に教えます、あなた方の知識を貸して貰えませんか」
「俺からも頼む!」
二人が頭を下げる、僕は輝達の方を向く。
「ああ、俺達で良ければな」
「任せてカケル君!」
バッと顔をあげ安心したのかユックリと息をはく。
「お客さんね」
「またか」
皆の顔に緊張が走り各々、武器を構える。
回りが灰色の空間に覆われ空気が重くなる僕達は慣れているがカケル君とヒカリさんは気分が優れない様だ。
僕達の回りに六体のエミティ・ドール、タイプ・デーモンと呼ばれる様になった白い悪魔がザッと50。
「ちょ………マジかよ」
「嫌な感じね」
カケル達が呟く、僕も最初は驚愕したけど人間慣れが肝心だ。
アイコンタクトで走り出す僕はカケル達の護衛に勤める、カケル達も一応闘いに参加するが長くは持たないと思う。
向かってくるデーモンを迎撃する今回は敵がデーモンなのでヒカリさん達の攻撃は有効だ輝達はエミティ・ドールの相手で手一杯数で攻められてはどうしようもない。
「奏歌!お前の仲間すげぇな……おわっと!」
「なんなのよ!あんた達は!」
『コゾウ!ドールが一体抜けてきたのだ!』
今までリュックの中にいたブンが這い出てきて警告してくれるり
「くそぉ!」
降り注ぐ氷柱を銀王の銀吹雪で迎撃する。
肉弾戦に持ち込むがだいたいの行動パターンは予測されているだろうが僕だって成長しない訳ではない。
「てぇぇぇぇい!」
「?!」
エミティ・ドールが身体が中に浮く素早く腹部に打ち付け真上に打ち上げる続いて銀吹雪の推進力を利用し飛び上がる。
『痛いのを喰らわせてやるのだ!』
「これが新しい切り札だ!貫・銀雷!!!」
銀王が磁力と銀の閃光が包み魔除針えと伝わる銀の針が伸びそのまま振り落とすエミティ・ドールの腹部に針が貫通し地面に叩きつけられる雷の用な轟音と共にトリガーを引く反動と共に発射された魔除針はエミティの力全てを奪いすくす。
「………突貫………完了」『成敗!』
光に包まれエミティ・ドールは消えてなくなる。
「奏歌……お前…強ぇ」
「なんなの、ここの連中は」
『コゾウ!右だ!』
「しまった!」
輝が倒したはずのエミティ・ドールが血塗れの腕を振りかざし氷の刃を突きつける。
輝が叫び駆け寄るが間に会わないだろう、銀王の防御も間に合わない何とか即死は回避できるが肩に風穴が空くのは確実だ。
「っ!」
「させるか!デメンション・クラック!!」
カケルの掛け声と共に次元が割れてエミティ・ドールが飲み込まれた。
「あ、ありがと……カケル君」
「だろ?俺も負けてられねぇ」
「やる気満々なのは良いけど狩崎さん達が全滅させたわよ?」
回りにデーモン達の死骸が砂になっていく、輝が駆け寄りカケルに頭をさげて礼を言う。
カケルは飯の恩だといい、折れた刀を鞘に戻した。
「奏歌!怪我はしてないな……良かった」
「ボケってしたらダメなんだから!」
夕夏に拳骨を食らい泣きそうになるが僕に非があるので反論はしなかった、伊吹は相変わらず傍観者で楽しそうに笑っている。
「カケル!この反応!」
「ヒットしたのか!」
二人の歓喜の声をあげ駆け出す、僕達もそれに続く角を曲がりカケル達に追い付くと意外な人物がいた。
「ん〜〜こ〜れは、懐かしい〜〜貴方ルシエルの魔力を感じるね〜〜」
「フクロウさん!こんにちは」
「ん〜〜こ〜んにちは〜」
ヒカリさんとカケル君が惚けた顔をしたまま固まり沈黙している。
フクロウさんは何時もの白いスーツに長い髪で顔はよく見えない相変わらず男性か女性かはっきりしない人だと思う。
「ん〜〜ルシエルはどこかな〜〜?久しぶりに〜会いたい」
「あんたが?こ、黒翼魔神か?」
カケル君がフルフルと指を振るわせながら聞く。
ヒカリさんは何も言わず、疲れたのか脱力していた。
「ん〜〜懐かしい名前ですね〜〜あ〜の頃は〜私も〜〜若かったですね〜」
取り敢えず目的の人物に会えたのだ、任務としては成功だろう。
僕達はカケル達の様子を見て解散する事を決めた。
「ボクは帰るよ、まだ仕事が残ってるんだ」
「輝、私も見習い達の夜の鍛練の指導に行かなきゃ」
「わかった俺は残るよ」
「僕も残る」
伊吹と夕夏は仕事で帰ってしまったが僕達はカケル達の警護を続ける事にした。
「あの、本当に黒翼魔神?」
「本〜当ですよ〜次元滅魔懐かしいですね〜…カケル君……折れてるじゃないですか〜〜!」
「す、すいませ〜ん!」
「その事でお願いが……」
全然怒ってる様に聴こえない声でカケル君の胸ぐらを掴んでいた手を離すフクロウさん。
「わ〜かってます〜神禁ですね〜」
「はい」
「頼む!俺達に譲ってくれ」
「良く分かんないけど、僕からもお願いしまし!」
カケル達と共に頭を下げる、フクロウは困った素振りを見せず穏やかな声で
「い〜いですよ〜ついて来てくだ〜さい」