表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バリスタと呼ばれた少女  作者: 風早
バリスタさんと暗黒の森
4/27

第4話

 その後は何事もなく、無事依頼を出した村についた。

 村長に挨拶し、顔合わせと依頼内容の確認をする。

 オーガは2ヶ月ぐらい前に村人が見た森の外で目撃した。幸い襲われることはなかったが、それからも何度か目撃されて依頼を出すことになったらしい。

 この村の狩人は暗黒の森の浅いところを探索して狩りや野草、薬草の採取をしているそうだが、オーガが目撃されてからは中止している。

 危険はあるが、外貨を得るための貴重な手段だから辛いだろう。

 バリスタさんはこの狩人と何か話していた。彼女は暗黒の森の調査に来たのだろうか?

 村人にも話を聞いて回ったが大きな差はない。

 問題はオーガの寝床が判っていたり、常に森の外へ出ているわけじゃないことだ。

 オーガが出てくるまでこの村を拠点に待つか、危険はあるが暗黒の森を探索するか悩ましい。

 仲間と集まって情報整理と今後の方針を相談していると、バリスタさんがやってきた。

「おお、ぬしら。わらわはこの村を離れるからの」

 彼女は一人で暗黒の森へ潜るらしい。気配を感じさせないあの腕ならば森の中でも安全なのだろう。

 バリスタさんを頼って一緒に森へ行くのはありだろうか? いや、なしだな。

 ただの同行者にそこまで頼る訳にいかないし、何より彼女もそこまでやってくれないと思う。

 バリスタさんを見送った後で、もう一度話し合う。俺たちは俺たちに合った方法でやるべきだ。

 3日間村で様子を見て、オーガが出てくればそれを退治する。出てこなければ森を探索してみよう。

 そもそもオーガがずっといるとは限らない。

 森の見張りをどうするか話し合い、村長に報告する。

 森の中を探してもオーガが見つからなかった場合はまた話し合うことになったが、他は了承して貰えた。森の見張りも協力してくれる。

 村を拠点に森を見張ったが、オーガは現れなかった。森を探索する準備をする。

 元々毎日目撃されていた訳でないし、オーガがいなくなったのか判断できない。

 そもそも森から出て人里を襲うわけでもないのに、何をしに出てきたのだろうか?

 食料は森の中の方が豊富だろう。迷って出てきただけなら何度も目撃されない。

 オーガがちらちらしてくる理由が思いつかない。

 仲間も心当たりはないようだ。

「何があっても良いように心構えをしておかないとな」

「ええ、しばらくは深入りはやめて日帰りできる場所を探ってみましょう」

 暗黒の森は俺たちの手に余る。慎重すぎて悪いことはない。

 バリスタさんはまだ森の中にいるのだろうか。もう帰ったかもしれないが、森の調査が3日で終わるとは思えない。おそらくまだ中だろう。

 もし会えれば意見を求めてみたいと思った。彼女がいるのは深い場所だろうし、叶わないと思う。

 準備を終えた俺たちは暗黒の森へ入る。

 暗黒には「人の手が入っていない」意味の他に「木々が生い茂って日の光が届かない」意味があるらしい。

 確かに森の中は昼間でも薄暗い。夜になればどうなるだろうか。

 ごくり、と生唾を飲む。

 妖魔や魔物は種族的に暗視が効くものが多い。夜の森で俺達程度の人間は良い獲物だ。

 日の高さが見えないから時間が測りづらい。今日は余裕を持って探索しよう。

 迷ったり、うっかり森の中で日が暮れました、というのは洒落にならない。

「帰ったら野外活動の技術を習った方がいいかもしれんな」

 森を甘く見ていたわけじゃないが、想像と現実では大違いだ。先を考えると一人ぐらいしっかり学んでも良い。

 それも無事帰れたらの話だ。

 初日は浅いところをゆっくり回った。幸いにも魔物に出会うこともなかった。

 話に聞いていた野草も生えていたはずだが、見つけられなかった。

 見つけたところで上手く採取できる自信がないから良いんだが、未熟さを指摘されているようで悔しい。

 村に帰って装備を外すと思っていた以上に疲れていた。普段使っている筋肉とは別の部分が凝り固まっている。

 軽い夕食を取るとすぐに寝てしまった。村長への報告を思い出したのは朝になってからだ。

 翌朝、村長に謝りながら報告を済ませる。

 体の調子を確かめるが、今日明日で何もなければ休みを挟んだ方が良いだろう。

 2日目は探索範囲を広げてみた。1日で慣れたわけじゃないが、同じところばかり回っても仕方ない。

 正午になっただろうか。そろそろ戻ろうかと考えていたら、仲間が声を上げた。

「あちらの方、森が拓かれてませんか?」

 指された方向を見るが良く判らない。少しだが明るい気がするぐらいだ。

「行ってみよう」

 近づいてみると、木が生えていない広間があるようだった。

 音を殺して近付くが、ここに来るまでにガサガサ草を鳴らしていた。今更だったかもしれない。

 背の高い草に隠れて様子を窺うと、広間には骨が散らばっていた。生き物はいないようだ。

「何だこれは」

 広間に出て骨を拾ってみる。これが人間のものだとしたら子どもの骨だ。数は30人ぐらいだ。

「コボルトの骨だと思います。頭蓋骨が人間のものじゃない」

「確かにそうだ。ここはコボルトの墓場か何かか?」

 コボルトに墓場を作る知能があるのだろうか? 墓場というよりはゴミ捨て場が近い気がする。

 辺りを調べてみると、枝を落とした木の棒が多く見つかった。

「ここにコボルトが住んでいたのか、ここにコボルトを捨てたのかどちらかでしょう」

「骨も昨日今日のものじゃないし、正直判らないな」

 コボルトの群れを倒した何かがいるのは確実だが、それがオーガだろうか。

 俺達の知識では判断がつかない。空を見上げると、ちょうど日が落ち始めた頃だ。一度村に帰って報告してみよう。

 帰り道で何かに出会うこともなく、2日目の探索は終わった。

 今日は忘れずに村長に報告する。村でもオーガが出てこないか見張っていたらしいが、出てこなかったそうだ。

 コボルトの墓場を報告すると、村長は記憶を探りながら言った。

「確か、少し前に近くの村でコボルト退治を依頼したことがあったそうです。ただ、聞いた場所とは離れた村なので関係があるか判りません」

 その時の残党が移動してきていた可能性はある。大穴でコボルトの死体処理に困ってあそこに捨てた可能性もある。

 オーガとの関係は判らないが、仕方ないだろう。

 明日探索してオーガが見つからなかったら1日休むつもりだと告げると、村長は十全を尽くすためにと逆にお願いしてきた。

 この村長は良い人だ。心労の種を除くためにも、早くオーガが見つかると良いのだが。

 寝る前に仲間たちと明日の予定を話し合った。明後日が休みなら明日は長く探索しても良いだろう。

 コボルトの墓場と逆方向を探索してみることにする。

「俺達だけで森の奥へ進むのは危ないからな」

「オーガがいた痕跡だけでも見つかると良いのですが」

 木にオーガの爪痕でも残っていれば、そこを中心に探索すればいい。オーガが爪痕を残すか知らないが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ