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バリスタと呼ばれた少女  作者: 風早
バリスタさんと傭兵ギルド
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第1話

 十字の街の中でも一際大きい敷地を持つ建物がある。

 訓練場や武器庫を持つ傭兵ギルドだ。

 その傭兵ギルドの執務室で二人の男が額を合わせて唸っていた。

 机の上には書類が散乱している。

 最近の依頼件数とその内容に達成率、そして傭兵の負傷率をまとめた書類だ。

 依頼の件数と達成率は悪くない。悪いものは他にある。

「良くねぇなぁ」

「はい、負傷率が高すぎますね」

 ただ戦闘をこなすだけなら問題ない。そこに違う要素が入った場合の負傷率が跳ね上がっている。

 つまり練度不足だ。

 大戦があり、傭兵ギルドも大きく戦いに貢献した。

 特に十字の街は国の保護を受けていない。その為、傭兵達は主戦力の一つだった。

 そして多くの者が死に、負傷し、引退していった。

 抜けた穴が埋まらなかった訳じゃない。

 大戦の結果、職を失った者や村ごとなくなった者たちが傭兵ギルドの門を叩いた。

 しかし、埋めたものが脆弱では意味がない。

 新兵をフォローするために古参が走り回っているが、休む暇がない。

 このままでは大失敗をやらかして傭兵ギルドの顔に泥を塗るだろう。

「傭兵業は殴り合いができれば問題ないと思ってるやつが多すぎだ」

「まあ、彼らがいなければ穴は埋めれない訳ですし、何より初めは誰もが新兵です」

「新兵が多すぎる」

 訓練しようにも古参の者は依頼で出っぱなしだ。彼らにこれ以上負担はかけられない。

 かといって、新兵を放置するわけにもいかない。

「仕方ない。外注を使うか」

「外注ですか? 依頼を外に回すってことじゃないですよね」

「おう、怪我からの復帰組を森か山に3日ぐらい放り込めばマシになるだろう。監督役を外部に頼るってわけだ」

「ああ、なるほど。でも誰に頼むんですか?」

 何人か心当たりはある。だが長期間頼むのは難しい。彼らも傭兵ギルドの依頼だけで生きていくわけでないのだ。

「次からは引退したやつに紐付けておかねぇとなぁ。短期間で鍛えてくれそうなヤツだと、バリスタの嬢ちゃんに頼むかね」

「は? 大丈夫なんですか?」

 新兵達に欠けているものは危機感だ。バリスタにしごかれたら間違いなくそれは身につく。

 ほとんど辞めてしまうかもしれないが、今のままなら大怪我するか死ぬのは間違いない。

「まあ、やるしかないだろう。合格したやつか、残ったやつが出たらそいつを中心に考えれば良い」

「全滅しなければ良いんですが」

「したらしたときだ」

 立ち上がり、出かける準備をする。

「依頼にいくのであれば、私が」

「俺が絡んでる話で俺が行かなかったら、バリスタの嬢ちゃんに面目立たねぇよ」

 バリスタは俺でも怒らせたら怖いんだ。


 十字の街の南西に森がある。

 北側に広がる暗黒の森と違い、規模こそ大きいが安全な森だ。

 安全と言っても巨人種などの生息が確認されていないだけで、素人が装備無しで入れば野犬に食い殺されるだろう。

 その入り口に12人、4人1組とした3班が集められていた。

 何故こんなところに集められたのかと不満そうだが、口に出して言う者はいない。

 彼らの前にギルド長と副ギルド長が立っているからだ。

「あー、お前達にはこれから森に入り、3日間過ごして貰う。3日経つ前に森から出たら罰則があるから注意するように。あと4日経っても出てこ


なかったら一応捜索してやる」

 仕事中の負傷が多い者への訓練だと聞いている。

 だが訓練ならば一つでも多く仕事していくか、訓練場で剣を振っていた方が良いんじゃないだろうか。

 暗黒の森には多くの魔物と妖魔が住むそうだが、安全と言われている森に籠もったところで何かが得られると思えない。

「何故こんな訓練を行うか疑問に思う方もいるようですが、傭兵ならば少人数での偵察任務を行うこともあります。その為、あなた方にはこれを


渡します」

 それぞれの班に封がされた羊皮紙が配られる。

「その中には各班への指令が書かれています。森の中での滞在中に指令を果たして貰います。指令を果たせなかった場合や他の班と協働した場合


、指令書をなくした場合はペナルティが架されます」

「森の中には監督役がいるから誤魔化そうとか思うなよ。それをしたものは罰金とギルドから追放が待ってる」

 続けて、森に入る場所と時間の指示が入る。伝達事項を全て聞いた各班は散っていく。

「おう、賭ねぇか? 連中の何人が生き残るかよ」

「では、私はこれでお願いします。」

 副ギルド長が手で数を作る。

「賭にならねぇなぁ」

 副ギルド長は拳を作っていた。

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