表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

Fall(1)

 ガタガタと荷馬車が揺れる。

 何十両にも及ぶ荷馬車の群れが、宵闇の中を寂しく進んでいく。

 すし詰め状態の荷台の上で、リックは膝を抱えたまま死んだように動かなくなっていた。

 何が起きたのか?それを考える余裕はリックには無かった。

 もうミーアには会えない。彼の頭の中はそれだけでいっぱいだった。


 スラムに騎士団がやって来たのはミーアと別れてから数十分後の事だった。その時リックは、いつミーアが帰ってくるのかと部屋の中をグルグル回っていた。ただその時が待ち遠しくて、落ち着いて椅子に座っていることなどできなかった。

 だが扉を叩く音と共にやって来たのはミーアではなかった。剣で脅され、他のスラムの人間と共に強引に荷馬車に載せられる。

「喜べ。お前たちは今から、大神レイグナールの御威光を世に知らしめるための、尊き犠牲となるのだ」

「お前たち不法占拠者どもを一掃し、このゲルトラントに新たな風を吹かせる。これはそのための措置なのだ」

「これはお前たち穀潰しが、お国のお役にたつことのできる最大の機会でもあるのだ。胸を張って行くが良い」

 拒否権など無かった。


 そして今、その穀潰しを載せた荷馬車の群れが、ゆっくりと道を進んでいく。これから自分たちはどうなるのか、気づかない者は居なかった。

 だがその最期が人間によって迎えられるのかそれ以外の存在によって迎えられるのかについては、彼らの中でも考えが分かれていた。どうでもよかった。

 いずれにしろ、自分たちは死ぬのだ。

「ミィちゃん」

 リックが想い人の名前を呟く。そこに怒りや恨みの念は込められてはいなかった。

 結局、約束を破ってしまった。

「ごめんね」

 それは心からの謝辞であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ