005
私のブックマーク
訓練場の空気は、息をするだけで爆発しそうなほど張り詰めていた。
アーサーとリヴェンは向かい合い、互いの目が鋭い刃のようにぶつかり合う。
拳を握りしめ、熱い息を吐きながら、二人の間には沈黙だけが流れていた。
そのとき――
低い声が張り詰めた空気を切り裂いた。
「おいおい、二人とも何をしてるんだ?」
ジョンが背後から現れ、瞬く間に二人の間に割って入る。
何も言わず、大きな手でリヴェンとアーサーの頭を同時に押さえつけ、地面に叩きつけた。
「ここを戦場にするつもりか?」
リヴェンは慌ててアーサーが自分の訓練場に侵入したと説明する。
だがアーサーも負けずに、「こいつがアスター家の人間で、こっちを挑発しに来たんだ」と言い返した。
ジョンは眉をひそめ、二人の言い争いをしばらく聞いてから、ため息をついた。
「……いい加減にしろ。話はこうだ。」
彼は誤解を一つずつ丁寧に解き、やがて二人は渋々頭を下げた。
ジョンの厳しい視線のもと、リヴェンとアーサーはしぶしぶ握手を交わし、和解することになった。
アーサーは小さく鼻を鳴らし、背を向けて去っていく。
リヴェンはその背中を見送りながら、かすかに笑みを浮かべた。
――そして夕方。
太陽が遠くの山々の向こうへ沈む頃、リヴェンは一人で訓練場に残っていた。
剣を振るうたびに、汗が頬を流れ落ちる。
「まだ足りない……もっと強くならないと。」
息を荒げながらも、彼は剣を止めなかった。
そのとき、茂みの中から小さな物音が聞こえた。
リヴェンは素早く振り向き、剣の柄を強く握る。
暗がりの中から現れたのは――アーサーだった。
しかし、朝のような険しい表情はなく、どこか照れくさそうな目をしていた。
「お前の訓練を……ちょっと見たくて。すごいな、お前、本当に強い。」
リヴェンは一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべる。
「気が向いたら、いつでも来いよ。一緒に鍛えようぜ。」
アーサーは少し戸惑いながらも、やがて小さく頷き、
滅多に見せない笑顔を浮かべた。
二人はそれ以上言葉を交わさず、ただ静かに夕暮れの空を眺めていた。
――その日、二人の間には小さな友情の芽が確かに生まれていた。
そしてその夕方、二人は長い時間をかけて、
互いのこと、そしてこの世界での生活について語り合い、
笑い合う声が静かな訓練場に響いていた。
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