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004

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その日の午後。

リヴェンは珍しく早く訓練を切り上げた。


自分専用の小さな家の屋根の上に寝転び、夏の日差しを浴びながらぼんやりと空を見上げる。

瓦の熱が背中に伝わってくるが、動く気にはなれなかった。


「はぁ……今日は何も身につかなかったな。」

リヴェンは腕で目を隠し、ため息をつく。


「エレナ先生の今日の魔法、なんだったっけ……もう忘れた。」

彼は眉をひそめ、苦笑した。


すると、朝の光景がふと脳裏をよぎる。

あの薄暗い部屋、誰かと話すような声、そして――。

リヴェンは首を振った。


「どうして……どうしてあんなことを……。」


彼はしばらく黙り込み、ただ青空を見つめていた。

だがその時、近くの茂みから「ガサッ」と小さな音が聞こえた。


リヴェンは即座に身を起こし、腰に差していた短剣に手をかけた。


「誰だ!? 出てこい! 攻撃するぞ!」

その声にはわずかに震えが混じっていたが、鋭い警戒心がこもっていた。


すると、茂みの中から一人の少年が姿を現した。

リヴェンと同じくらいの年齢。

古びたノースリーブを着て、汗を光らせながら鋭い目でこちらを睨んでいる。


「……アーサー?」

「そうだよ。」少年――アーサーが低い声で返す。

「お前こそ誰だ? なんで俺の家の近くにいるんだ?」


リヴェンは立ち上がり、指を突きつけた。

「俺はリヴェン・アスター! この領地を治めるアスター家の長男だ!」


アーサーは鼻で笑い、あざけるように言った。

「はっ! バカ言え! アスター家の長男って、あの有名な“愚か者”だろ?

お前がそいつなわけない。見た目、普通すぎるじゃねぇか。」


リヴェンの顔が一瞬で紅潮した。

「今……なんて言った!?」


「聞こえなかったのか? 偽物の貴族め!」


次の瞬間、リヴェンは屋根から飛び降り、地面に着地した。

草が舞い上がり、二人の少年は真っ向から向かい合う。


一方は侮辱された貴族の少年。

もう一方は誇り高い平民の少年。


「うるせぇ!」

アーサーが拳を振り上げる。

リヴェンはすばやく身をかわし、反撃の蹴りを放つ。


拳と足がぶつかり合い、乾いた音が響く。

汗と土、そして二人の荒い息が混ざり合う。


「もうやめだ!」アーサーが叫び、数歩後ろに下がる。

その手のひらに、赤い光が灯った。


「――火球かきゅう!」

掌の上に小さな火の玉が現れ、ゆらめきながら空気を焦がす。


リヴェンは驚いたように目を見開き、すぐに落ち着きを取り戻した。

「魔法……か。」


彼はゆっくりと手を上げる。

空気中の水分が集まり、細い糸のように絡み合って青白く光り始めた。


水と火。

二つの相反する力が、夏の陽光の中で輝きを放つ。


風が吹き抜け、木々の葉がざわめく。

二人の少年は互いを睨みつけ、次の瞬間を待っていた。


――こうして、リヴェンとアーサーの最初の衝突が幕を開けた。

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