表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

002

私のブックマーク

リヴェンはベッドから飛び起きた。

「少なくとも今日は、この世界のことを調べるところから始めよう。」

そう呟くと、毛布をはねのけ、勢いよく階段を駆け下りた。

「図書館はどこだ? こんなに大きな屋敷なら、きっと本も山ほどあるに違いない!」

彼が暮らすこの屋敷は、ほんの数分歩くだけで迷子になりそうなほど広大だった。

白い大理石の壁、高すぎる天井、果てしなく続く回廊、そして並ぶ無数の古い絵画。

すれ違う使用人たちは一様に頭を下げたが、その目にはどこか冷たい距離があった。

リヴェンは小さく笑い、心の中でつぶやく。

(やっぱり、まだ見下されてるのか……でも、今回は違う。)

二階へ上がると、彼はひときわ目立つ扉の前で足を止めた。

豪華な彫刻が施され、重厚な気配が漂っている。

好奇心に駆られたリヴェンは、そのままドアノブに手をかけた。

――ドアの向こうには、鋭い眼差しの中年の男が座っていた。

「……リヴェン。」

「えっ、父上?」

リヴェンは反射的にドアを閉め、心臓が跳ね上がる。

だが低く威厳のある声が響いた。

「入れ。話がある。」

唾を飲み込み、彼はゆっくりと部屋に足を踏み入れる。

男は大きな机の向こうから、厳しい目で息子を見据えていた。

「今日はいつもと違うな。目の色が変わった。」

「ち、違うって……どういう意味ですか?」

「自信があるように見える。……まさか、生き残る術を見つけたのか?」

「生き残る」という言葉に、リヴェンは思わず息を呑んだ。

この家の中で、“生き残る”とはどういう意味なのか。

前の“リヴェン”がどんな人生を送っていたのか、彼にはまだ分からない。

だが、正体がばれるわけにはいかない。

彼は軽く頷いた。

「ええ……たぶん、そうです。」

父は口元にわずかに笑みを浮かべ、煙草をくわえる。

「よし。少なくとも、やる気はあるようだな。……それで、どこへ行くつもりだ?」

「えっと……本を読みたいんです。図書館はどこですか?」

「図書館だと?」

男はくすっと笑う。

「この屋敷に、まだお前が読んでいない本などあるのか? 前はすべて読破しただろう。」

「えっ……ぜ、全部?」

リヴェンは思わず手に持っていたグラスを落としそうになった。

(嘘だろ……前の俺って“馬鹿な貴族”だったんじゃないのか!?)

父は少し穏やかな声で続けた。

「もし読みたいなら、最近私が集めた新しい本を読むといい。お前にはちょうどいいだろう。」

「……ありがとうございます、父上。」

リヴェンは頭を下げ、急いで部屋を出た。

父はその背中を見送りながら、静かに煙を吐き出す。

「……あいつ、今日は本当に違うな。まるで別人だ。」

――

数冊の本を抱えて図書館を出たリヴェンは、心の中で考え込んでいた。

(前の俺が本当に優秀だったのなら、なぜ“愚か者”として侮られていた? 何かがおかしい……)

窓辺に立つと、眩しい光が顔に差し込んだ。

見渡す限りの広大な世界。輝く城、澄み渡る青空、そして空中を漂う魔力の光。

「この世界は……大きくて、美しい。」

「でも俺は、ここで生き延びる。――俺のやり方で。」


私のブックマーク

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ