表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

012

この場所は美しさで有名だった。

通りは清潔で、

建物は高く、どこか不思議で、彼の故郷とはまるで違う。

すべてが完璧に感じられた。


リヴェンは自信に満ちた足取りで歩いていた。

彼は、もう以前の彼ではなかった。


かつての彼は、謙虚で物静かだった。

いつも頭を下げ、すべてを耐え忍んでいた。

だが今日は違う。

鋭い眼差し。誇りに満ちた笑み。

自分の力を知る者のような、傲慢ささえ漂わせていた。


彼はハダッシュの前で足を止めた。


「よう」

リヴェンは落ち着いた声で言った。

「一緒に遊ばないか?」


ハダッシュは凍りついた。


「……は?」

信じられないという表情で、リヴェンを見つめる。


ハダッシュはこれまで、ずっとリヴェンをいじめてきた。

嘲笑い、傷つけてきた。

それでも、リヴェンは彼を憎まなかった。

怒りを見せることもなかった。


だからこそ、ハダッシュは混乱した。


「俺を……誘ってるのか?」

「今までのことを知ってて?」


リヴェンは肩をすくめた。

「過去のことだ。気にしてない。」


ハダッシュはしばらく迷った。


もう、リヴェンが分からない。

だが――心の奥で、奇妙な興味が湧いていた。


「……分かった」

ついに、ハダッシュはそう言った。

「行く。」


リヴェンは、わずかに微笑んだ。


出発する前、リヴェンは屋敷へ戻った。

迷うことなく、父の財庫から大量の金を持ち出す。


「問題ないだろ」


そう呟き、二人の一日は始まった。


二人は街を歩いた。


不思議なものでもたくさん遊んだ。

ひとりで動く魔法のおもちゃ。

子どものように笑う、飛ぶ紙の鳥。

触れると色が変わる水晶玉。


笑って、

走って、

どうでもいいことで言い合いをした。


そのとき、ハダッシュは初めて胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。


――温かい。


まるで、兄弟のようだった。

貴族でもなく、

敵でもなく、

ただの少年として。


同行していたクロは、周囲を見渡しながら目を輝かせていた。


「……これが、別の文化か」


そう、小さく呟く。


空へと伸びる巨大な建物。

多くの国から来た人々で溢れる通り。

食べ物の香りが、空気を満たしていた。


三人は一緒に食事をした。


味の濃い肉料理。

温かいスープ。

甘いパン。


クロの目が輝く。


「すごい……」

「こんなの、初めて食べた」


少し冷たい空気。

優しい風が頬をなでる。

心地よかった。


美しい服を着た少女たちが通り過ぎる。

その笑顔は眩しいほどだった。


ハダッシュは、慌てて視線を逸らす。

それを見て、クロが笑った。


リヴェンは、ただ静かに見ていた。


太陽が傾き始めた頃、

ハダッシュはようやく気づいた。


リヴェンは、変わったのだ。


もう、かつての弱い少年ではない。

乞わず、

黙って耐えることもない。


彼は、自由に前へ進んでいる。


「……お前、変わったな」


ハダッシュが静かに言った。


リヴェンは答えなかった。

ただ、微笑むだけだった。


午後、彼らはヒタル一族の城へ戻った。


明日には、故郷へ帰る。


その夜、ハダッシュは天井を見つめながら、ベッドに横になっていた。


初めて、彼は考えた。


――今のリヴェンは、何者なのか。


そして、初めて――


その変化を、嫌だとは思わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ