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時が過ぎ、ついにその日がやってきた。

今日は、リヴェンが婚約者――キタル一族の娘――と会う日だった。


鏡の前に立つリヴェンは、黒いベストを身にまとい、髪をきっちりと後ろに撫でつけていた。

整った顔立ちに、その姿はどこから見ても完璧だった。

あのハダッシュでさえ、思わず感心するほどに。


「お前の方がかっこよく見えるな」とハダッシュが少しむっとして言った。


リヴェンは口の端を上げて笑う。

「お前はベストを着ればかっこよくなるけど……ベストは俺を着て初めてかっこよくなるんだ。」


その言葉に、ハダッシュの顔はみるみる赤くなった。


ちょうどその時、リヴェンの父が部屋の入口に現れた。

「行くぞ、リヴェン。キタル一族の屋敷へ向かう。」

低く、落ち着いた声だった。


彼らは豪華な一角獣ユニコーンの馬車に乗り込み、長く滑らかな道を進んだ。

やがて、壮麗なキタル家の屋敷が姿を現す。まるで城のように大きく、美しい建物だった。


正門では、四人の使用人と一人の執事が並んで立ち、深く頭を下げた。

「ようこそ、アスター様、そしてご父君様。」


すぐにキタル一族の長――アレックス・キタルが現れた。

その声は低くも穏やかで、

「アスター家の皆様、ようこそ。我が家へお越しいただき光栄です。」

と笑みを浮かべて迎えた。


リヴェンは父の後を追い、広い廊下を進んでいく。

金の装飾や輝くシャンデリアに目を奪われながら、*この一族は本当に裕福だな…*と心の中で呟いた。


やがて大広間に通され、アレックスが口を開いた。

「さて、アスター家の方々、本日はどのようなご用件で?」


リヴェンの父は静かに答えた。

「昔の約束を果たしに来た。覚えているだろう、我々の“契約”を。」


アレックスはゆっくりと頷く。

「もちろん覚えている。しかし……まさか今日とは。」


「ああ、今日だ。」とリヴェンの父は頷き、

「リヴェン、こちらへ。」と息子を呼んだ。


リヴェンが一歩前へ出ると、アレックスは驚いたように目を見開いた。

長身で整った顔立ち、鋭い瞳、そしてどこか神秘的な気配――。

「これが……お前の息子か?」

「そうだ。私の息子、リヴェンだ。」父が誇らしげに言う。


リヴェンは顔の半分を隠す黒い帽子をかぶり、その表情はどこか悲しげだった。

何も言わずに彼は部屋を出ていった。


二十分後、再び扉が開き、アレックスが二人の娘を連れて戻ってきた。

二人とも天使のように美しい――白い髪、青い瞳、そして気品のある佇まい。


だがリヴェンには、その瞳の奥に沈んだ悲しみが見えた。

――噂はもう届いているのだ。「愚かな少年」だと。


古い約束によれば、キタル家の長女がリヴェンと婚約するはずだった。

しかし彼女の表情には、明らかな嫌悪が浮かんでいた。

アレックスがいくら説得しても、彼女は頑なに首を振る。


リヴェンの父は不機嫌そうに眉をひそめた。

「どうした、アレックス。約束が違うぞ。」


アレックスは深くため息をつく。

「もしこの婚約を拒めば、我が家は全てを失うだろう。アスター家はかつて我々を救ってくれた。その恩を返すための婚約なのだ。」


その瞬間、静まり返った部屋の中で、

二女がそっと手を挙げた。


「お父様、私が……その方と結婚します。」


その場の全員が息を呑んだ。

アレックスの目が大きく見開かれる。

「だめだ、娘よ。それは姉の役目だ。」


だがその言葉を遮るように、リヴェンが静かに口を開いた。

低く落ち着いた声で――

「構わない。俺は、次女を受け入れる。」

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