場違いなんてことはない!(1)
***
上王夫妻への挨拶を終え二人を見送った後、リリーナはディードリヒと共に一際賑わいを見せる一団に声をかける。
「私を抜きにして随分と盛り上がっているようですわね」
少し意地悪く笑うリリーナがそう言うと、彼女のすぐ目先にいた侍女二人を初め彼女の経営する香水店の従業員たちが皆一様にリリーナを見た。
しかしなぜかその中の何人かがリリーナの存在に幽霊でも見たかのように驚いている。
「リリーナ様!」
最初に声を上げたのはファリカであった。明るいオレンジの生地を基調としたふわりとした雰囲気のドレスを纏っている。裾や袖口に控えめながらも愛らしいフリルを飾っているのが彼女らしいデザインであった。
しかしなぜだろうか、リリーナから見るとファリカは誰よりもリリーナがこの場にいることに焦っているように見える。
「あ、挨拶回りは終わったの?」
「えぇ、必要な方には済ませて参りましたわ」
「そうなんだ…思ったより早かったね」
「…? 思ったより、とはどういうことですの?」
ファリカの態度に何やら怪しいとは思いつつも、リリーナは敢えて惚けたような態度を取ることでファリカがボロを出すのを誘発しようとした。
しかしファリカは、はっと何かに気づいた様子で己の態度を改めると、今度は何事もなかったかのように笑って誤魔化してくる。
「ほらほら、ハリアー夫人も今日は来てるでしょ?」
「あぁ、そのことでしたか」
リリーナは未だファリカの態度が腑に落ちないものの、彼女の主張もわからないではないと一度引き下がった。
実際、ファリカの言っていたハリアー家の夫人は大層な話好きで、一度捕まってしまうと何十分と拘束されることは多い。
「彼の方の話の切り方は心得ていますから」
だがリリーナには切り札がある。それは「王妃と話すことがある」と一言添えることだ。
如何に自分勝手に相手を自分の話に付き合わせるような人間であっても、ハリアー夫人は国王派であるハリアー伯爵家の人間である。故に頻繁に使うと流石に怪しまれるといえどいざという時の切り札としては何よりも有効であった。
そして今日は、その切り札を使うべき日でもある。
「あの、リリーナ様」
リリーナの返答にますますファリカが言葉に詰まったような様子を見せたその時、視界の端から別の声が聴こえた。かけられた声にリリーナが反応すると、そこには愛らしくめかしこんだソフィアの姿が見える。
新緑のような鮮やかな緑のドレスに身を包んだ彼女は、長い髪を花の飾りと共に編み込み親しみやすくも清廉な姿に着飾っていた。
そんな彼女は同じように着飾ってはいてもその慣れない服装にぎこちない態度を見せる兄を引き連れてリリーナの元に挨拶に来ている。
「リリーナ様、結婚おめでとうございます! ほら、おにいも」
「えっと…今日はおめでとうございます、リリーナ様。でも俺たちまでよかったんでしょうか?」
特段何をされたというわけでもないというのに、周囲にいる貴族たちにやや気圧されているアンムートは気まずいと言いたげに周囲をきょろきょろと見回しながら言う。
彼もまた着飾った妹同様慣れない礼装を見に纏い、いつもは乱雑に縛り上げている髪も整えてこの場にいるのだが、それでも平民が貴族の社交場に顔を出すというのは気が引けるらしい。
「勿論。皆を呼んだのは私なのですから当たり前のように過ごせば良いのです。貴方の思うほど堅苦しい場でもありません」
アンムートの問いにリリーナはさらりと言葉を返す。
結婚式本番は儀式的な側面も強く厳格な空気や対応が求められるが、披露宴は花嫁が主催する気やすい集まりに過ぎない。
式に来た賓客を食事と音楽でもてなす場ではあるが、その場に誰を呼びどういった場にするかは今日の主役であり主催であるリリーナの独壇場だ。
リリーナが『いい』と言えばそれがルールである以上、彼女にとって大切な仕事仲間であるヴァイスリリィの面々をこの場に招待するのは至極当然のことであり、同時に彼らが過ごしやすい空間を提供するのも、主催であるリリーナの役目である。
「くだらないことを言う輩がいたら私に言いなさい。すぐ追い出しますわ」
「それはちょっとやり過ぎなんじゃ…?」
「何を言っていますの? 針が長いだけの蓄音器よりも貴方たちのほうが大切にすべき価値が何倍もありましてよ。当然でしょう」
「リリーナ様…」
「リリーナ様かっこいい…」
はっきりと己の価値観を示すリリーナに兄妹は感動の表情を見せるが、リリーナとしては“かっこいい”と言われたことに内心でやや疑問が浮かんだ。
少なくともリリーナにとって当たり前な意見を持ち上げられても何がそこに当て嵌っているのかがわからない。
そもそもにおいてなぜ招待客に向かって嫌味を言うような輩を自分のための場に残しておかなくてはいけないのだろうか。そのような人間が同じ場にいるというのは自分も含め皆不快だろうに。
「リリーナ様に二言はございません。もしリリーナ様にお伝えになることに抵抗があるようでしたら私にお願いします」
言いながら、するりと気配もなく現れたのはミソラ。その気配のなさに兄妹が驚いた表情を見せるも、リリーナとミソラ本人がそれを気にした様子はない。
今日のミソラはいつもの落ち着いた暗い色のドレスではなく、品がありながらも明るい薄紫の生地を基調としたストレートラインのドレスであった。彼女のスレンダーな体型に合ったそのドレスはスカート部分に花の装飾が付いていたりと彼女にしてはやや珍しく、首元には大粒のパールネックレスが輝き彼女の白い肌を引き立てている。
「いや言いづらいですって…逆恨みでもされたら…」
「そのような愚かな行いはさせません。私の部下は雑魚ではありませんので」
「それってどういうことですか!? 誰か死んだりしませんよね!?」
「さぁ…」
「そこぼかさないでくださいよ!」
ミソラの発言にすっかりアンムートは振り回されている上、ソフィアも若干戦慄したような表情を見せるが真実が語られることはないだろう。
なぜなら不敬な輩の顛末を決めるのは、他でもないリリーナである故に。
「さて、真実はさておきまして」
「さておかないでください…」
「リリーナ様、他の皆様へのご挨拶はよろしいのでしょうか? ディードリヒ様が珍しく自らご交流をとられているようですが」
「そうですわね…」
ミソラの言葉に、リリーナはふと左奥の壁方向へと視線を向けた。そこにはグラツィアと会話をしているディードリヒの姿があり、その姿をリリーナがやや物珍しげに眺めていると彼女の視線に気づいたディードリヒがリリーナへ視線を返し、二人がこちらに向かってやってくる。
「あら、お話は終わったのかしら」
「お話っていうか、おにいが遊ばれてただけですよ」
「あら〜、アンムートくん良い子だから仕方ないわね」
「仕方ないとは…?」
グラツィアの言葉に思わずファリカが言葉をこぼす。実際にアンムートは真面目で揶揄い甲斐のある人物故に他人を振り回して遊ぶミソラの恰好のおもちゃにされている上、時折グラツィアにも弄られているが、ファリカから見るとつい不憫でならないと本当に仕方ないのだろうかと思ってしまう。
これに関しては僅かに不憫なのも事実だが、彼が周囲から程よく愛されている証拠なのも事実なのだろう。
「そういえば遅れちゃったわね、今日はおめでとうリリーナ様」
「ありがとう、グラツィア。貴方もそのスーツがよく似合っていますわ」
「さすがリリーナ様ね、今日はとっても大切な晴れの日だから勇気を出してよかったわ」
誇らしげにグラツィアは着ているスーツの襟元を正す。今彼が身に纏っているのは、彼が長く愛している『シュプリンガー』というブランドのオーダーメイド限定スーツだ。
艶のあるシルクは品のあるグレーに染められ、ジャケットもシャツもスラックスも、ネクタイに至るまでオーダーメイドであるが故に彼に合わせられたシルエットと色味を完成させている。
正しくグラツィアのために仕立てられたスーツとして、その服は完成していた。
「貴方の見る目は変わりませんわね、素晴らしい一着ですわ」
「そう? ありがと。リリーナ様のドレスも素敵よ」
「ありがとう。デザイナーと話し合いを重ねた甲斐がありましたわ」
リリーナは誇らしげに微笑む。彼女としてはウェディングドレスは勿論そうだが、披露宴でのドレスにも強いこだわりを持ってデザイナーであるマチルダと何度も話し合っている。そのドレスを褒められるというのはやはり嬉しいもの。
「そして同時に嬉しくもあります。貴方が、そのスーツに袖を通していることが」
グラツィアがここまでシュプリンガーというブランドを愛しながらも、オーダーメイドという至高の品には敢えて手を出していなかったということに対して常々リリーナは彼のこだわりを感じていた。
貴族にとってオーダーメイドというのはごく当たり前で、上位の貴族であればそれだけその風潮は強くなっていく。
しかしそれは当然金があるからできることである。オーダーメイドというのは、採寸から始まりデザインの話し合い、場合によっては素材選び一つに至るまで職人に注文をつける特注品。手間も金も当然かかり、下級貴族の家では既製品のドレスを纏ったり、家によっては金銭面の問題から手作りをしている場合も少なくない。
だがそれは、逆に考えれば金さえあれば平民でもやれないわけではない、ということも意味さしている。
グラツィアが貴族の人間の立ち居振る舞いを学びにヴァイスリリィで働いていることや、彼が愛するブランドは本来中流貴族向けのやや高価な品であること、そして彼は自前で営業する店をもち決してヴァイスリリィで働かずとも食べていけることをリリーナは全て知っているからこそ、グラツィアの中で記念となる大切な日が今日であることがとても誇らしい。
一年も働いていればどの従業員とも世間話や浅い身の上話を聞くこともある。その中で知ったグラツィアという人間のこだわりの強さや志の高さはリリーナから見ても一目置くほどであった。
金はあっただろう。話に聞く限りバーの経営に困っている様子もなく、ヴァイスリリィは平均的な貴族向け商店の従業員よりも高い給料を払っているのだから。
勿論高い給料は経営者であるリリーナから従業員たちへの信頼の証であり、特に担っている仕事の幅の広いグラツィアにはその分の手当ても出している。
それでも彼が憧れたその一着に手を出さなかったのは、彼なりの強いこだわりがあったからに違いない。そう思うとリリーナは今日をまた一つ誇らしく思えた。
「勿論よ、だって他でもないリリーナ様の晴れ舞台ですもの。ワタシもとびきりの格好で迎えなくちゃいけないわ」
「それは、とても嬉しいことを聞きましたわ。ありがとう、グラツィア」
「ワタシがやりたかったことだからいいのよ。リリーナ様には他のみんなのドレスを用意してもらっちゃったもの」
「それは私の全うすべき責任ですわ。とはいえ、親交の深いデザイナーに紹介してもらった店で仕立ててもらったのですが」
リリーナと親交の深いデザイナーといえば、もはやリリーナの専属デザイナーとなりつつあるマチルダを指す。
マチルダは元より予約の取れない人気のデザイナーだが、リリーナとは個人的な親交もあり彼女は優先的にリリーナのドレスをデザインしている。かといって他の仕事を放棄しているわけでもないのでその多忙さは苛烈を極めているようだが。
故に多忙なマチルダに代わってヴァイスリリィの面々のドレスを用意できる洋裁店をリリーナが探していたところ、マチルダの所属するイェーガー洋裁店に勤めていた彼女の弟子の店を紹介された。なのでリリーナはその弟子たちの協力を得てグラツィア以外の従業員たちのドレスを用意したのである。
「みんなとっても似合っていて素敵だわ。殿下ともその話をしていたのよ」
嬉しげに話すグラツィアは、さりげなくリリーナの隣に立つディードリヒに軽く視線を向けた。そしてディードリヒは珍しくその視線に僅かに反応し、そこからリリーナへと視線を向ける。
「彼の言う通りだよ。でも驚いた、彼から話しかけてきてくれるとは思ってなかったから」
「そうでしょうか? グラツィアは社交的な人間ですのであまり不思議なようには思いませんが…」
「僕がリリーナの店に行く頻度の問題じゃないかな、いつも顔を出すと驚かれるし」
「確かに言われてみれば…そうですわね」
ふとした疑問に対して得た回答に対して『確かに』と静かに納得するリリーナ。
実際ディードリヒがヴァイスリリィに顔を出す頻度は月に一か、多くても二度程度。さらに言えば要件がない限りディードリヒが店に顔を出すこともないので全く来ない月も存在する。
その程度の頻度でしか見かけることもなく、さらに相手が王族とくれば如何に社交的な性格のグラツィアと言えど易々と声をかけるところは想像し難い。
「今日は無礼講って聞いていたから、お話を聞いてみたくてお声をかけさせてもらったの。とても気さくな方で安心したわ」
「僕も話してみたらとても話しやすい方で安心したよ。リリーナが頼りにするくらいだからしっかりした人なんだろうとは思ってたけど」
「えぇ、グラツィアは店で一番頼りになる存在ですわ。日々感謝しています」
「やだ、二人に褒めてもらえるなんて今日はいいことがありすぎるわ」
ふふふ、とグラツィアは珍しく照れた様子で表情を緩ませた。普段の彼よりも素直な感情が露わになり、喜んでもらえたようだとリリーナもまた内心が温かくなる。
「グラツィアさんだけず〜る〜い〜。私も頑張ってますよね? リリーナ様〜」
和やかな空気の中、突然妬ましいと言わんばかりの声がリリーナたちの元に割り入ってきた。そこにはシャンパングラス持ったまま顔を赤くする不機嫌そうなエマの姿があり、彼女の不安定な手つきで持たれたグラスの中ではゆらゆらと飲みかけのシャンパンが波を立てている。
淡いクリーム色の生地を基調とした、すっきりとシンプルな印象のドレスの袖は短くなっており、その下は長い手袋で覆われたデザインとなっていた。そこにセットアップされた美しい髪と普段から化粧の上手い彼女らしい場にあった少し華やかなメイクは確かに魅力的だというのに、酒に酔いだらしなく赤くなった頬と弛んだ態度がその魅力を崩壊させてしまっている。
しかし本人はとても幸せそうというのが、その場にいた全員の言葉を詰まらせた。
「…そうですわね、場を弁えたお酒の飲み方をしていればもっと素晴らしかったですわ」
「いや〜、お酒美味しいんですもん〜。めでたい日はたくさん飲んでなんぼですよね!」
「なんか酔っ払ってる風に見えるけど、エマちゃん貴女ザルじゃなかった?」
「あ、バレました?」
珍しくエマが顔を赤くしだらけた態度をとっていることに違和感を感じたグラツィアがそれを指摘すると、エマはけろりといつもの様子に戻る。
まるで何事もなかったかのように素面に戻るエマを見たディードリヒは、顔にこそ出さないものの内心で引いているがそれを察することができるのはリリーナに他ならない。おかげで彼女は軽く皺の寄った眉間を押さえることとなった。どこからどう見てもタチの悪い冗談である。
「今日のお酒強いからバレないと思ったんですけどね〜」
「貴女ねぇ…それじゃあバートンも呆れるわけだわ。聞いてるわよ、エマちゃんウィスキーがぶ飲みするんですって?」
呆れ顔でグラツィアは言う。
バートンは時折グラツィアに話を聞いてもらいにグラツィアの経営しているバーを訪れている。しかしその中でグラツィアが聞く話は多様な意味で呆れるような話が多い。
バートンもバートンなりに様々な感情を抱えているので彼の愚痴に対して強く言うつもりはないが、グラツィアとしてはたまに喝を入れたいこともしばしば。
「やだ! バートンさんそんなこと言ってたんですか!? 私がぶ飲みなんてしてません、絡んできたやつとショットでやりあって勝っただけです!」
「それはがぶ飲みと何が違うんですの?」
「僕も同感」
「少なくとも、若い女の子のやることじゃないわね…」
心外な、とエマはグラツィアの言葉を否定するが、彼女の言葉を聞いた三人は呆れるばかりである。
相手が誰だかは知らないが、基本的にどれもアルコール度数の高いウィスキーでショットの飲み合い勝負をし、あまつさえ勝ってしまうとは漢気がありすぎるのではないだろうか。
「エマちゃん、ワタシ貴女のそういう気の強いところとっても好きだけど…もう少し自分を大切になさいね」
「やだなぁグラツィアさん、肝臓の自己管理はしてますよ〜。今日のために一週間は禁酒しましたからね!」
「エマにしては珍しいですわね、一週間も飲まないというのは」
「そりゃあ、人生のなかで飲めるかどうかもわからないお酒が飲めるときたら…! 安酒なんて目じゃないですよ」
エマの溌剌とした笑顔に三人は最早言葉を無くす。何度何を言おうが、彼女は飲酒に人生を捧げているらしい。
そしてリリーナとグラツィアは思わず頭を抱えた。グラツィアの言う「自分を大切にしてほしい」というのは決して健康面だけのことではない。しかしそれが伝わりそうな気配もなく、一方で彼の言葉の真意に気づいていたリリーナもまた、親の心子知らずと言わんばかりの二人のやりとりにどうしたものかと頭を抱える。
「本当にほどほどになさい…確かに今日出しているシャンパンや酒類は市井では出回らないと聞きますが…」
「えっそうなんですか!? じゃあまだまだ飲みますね!」
「…」
しまった、とリリーナは自らの痛恨のミスを嘆く。呆れてつい出てしまった言葉が大酒飲みを掻き立てることなどわかりきっていたことだというのに。
このままでは増長したエマを止める人間がいない…そうリリーナが次の一手について考え始めた時、エマの背後に大きな影が現れた。
「エマお前な…いい加減水でも飲んでこいと言ったじゃないか」
大きな影はエマに向かって苦言を呈する。そちらに向かってリリーナが顔を向けると、エマのすぐ後ろに呆れ果てたバートンの姿があった。
「えー、まだ飲めますよバートンさん」
「バートン。どこに行っていたんですの?」
「すみません、少し用を足しに。遅ればせながら今日はおめでとうございます、リリーナ様」
不服を隠さずむくれるエマとバートンの登場に驚きと安堵を得るリリーナ。
彼の登場によりこの場にはヴァイスリリィの全員が揃ったことになり、リリーナとしてはやはり安堵が隠せない。式場である教会で全員の姿は見ていたものの、こうして近くで接することができると今が現実なのだと安堵できる。
バートンやアンムートは華やかな場所を得意としていない、むしろ避けていく性格の人間だ。だというのにこうして顔を出してくれるというのは、無理をさせていないかと心配しつつもやはり嬉しいと思ってしまう。
「バートンさん今日世話焼きすぎません? 私の肝臓はそんなにヤワじゃないって知ってるじゃないですか」
「いい加減二日酔い起こすぞ…明日は仕事なんだ、もうやめとけ」
「あ、ひどい。私が二日酔い起こすと思ってるんですか!?」
「いつも飲んでる安酒とはモノが違うんだ、慎重にするべきだろうが」
「う…」
バートンに叱られ、『それを言われてしまうと』と言いたげにエマは押し黙った。どうやら大酒飲みの彼女でも慣れない酒に痛い目を見たことはあるらしい。それでもリリーナから見て、エマの表情はやや不服げに映る。
「ほら、水を飲め。こんなことだと思って帰ってくる時ついでに持ってきておいた」
「はーい…」
渋々ながらバートンの差し出した水の入ったグラスを受け取るエマ。その様子にバートンはまた一つ呆れと怒りを覚える。
しかしそんな二人を微笑ましげに眺めている人間が一人、ここにはいた。
「すっかり二人ったら仲良しよねぇ」
グラツィアは言いながら、揶揄うような含みのある笑みをバートンとエマに向ける。エマは至って普通に「そうですか?」と呑気な返事を返すばかりだが、バートンは返答に困るといった様子で言葉を返した。
「揶揄わないでくださいよ、グラツィアさん。面白いもんじゃないんですから」
「あら? 何かが面白いなんてワタシ思ってないわ。とっても素直な感想よ」
「そういうのを揶揄うって言うんですよ…」
「なんのことかしら。ワタシには少し難しいわね〜」
グラツィアは調子良くそう言うと、リリーナたちに料理を取りに行くという旨を伝えその場を去ってく。リリーナはグラツィアとバートンの間には何やら含みのあるものがあるようだと、そう感じながら去っていくグラツィアの背中をさりげなく目で追っていた。すると、
「イドナ様!」
前後編で焦点を当てる人が変わるのでここでも後書き書きますね
ヴァイスリリィのメンツが集まってくれましたね
最初にアンムートくんの件が楽しかったです、口の相変わらず悪いリリーナ様とか。アンムートくんは良い子だからね、いじられても仕方ないね
ソフィアちゃんのドレス考えるの楽しかったです。そして相変わらず兄にドライなところが好き
グラツィアさんまさかの()フラグ回収でしたね。彼自身がブランドを愛していることについてリリーナはきちんと覚えていますから、彼が着ているスーツを見た瞬間の感慨もひとしおだったのではないでしょうか
それにしてもコミュ力高いよなグラツィアさん…庶民が貴族の集まる場で堂々と王族に話しかけにいく…字面だけならいくら無礼講って言っても空気悪くなりそう。人多い場なので案外誰も気にしてなさそうですが
それにしてもこのエピローグ「あ、バレました?」のノリ多くない?(作家が好きなだけ)
けろりと笑えないことを満面の笑みで言う確信犯が好きなのですが、一応話の中身は違うのでお許しください…エマちゃんのは体調が絡んでくるので真面目に笑えませんが
どうでも良いですがエマちゃんがショットで戦ったのはガタイのいいツルツル坊主の如何にもガラの悪そうな男です。エマちゃんをお持ち帰りしようと目をつけた男はエマに難癖をつけてショット勝負に持ち込みますが(エマが勝気すぎて本気の喧嘩になっただけ)、あえなく36杯目のショットで男が撃沈しました。そしてその勝利の瞬間を、エマさんとの待ち合わせに遅れたバートンさんは目撃したわけです。バートン可哀想すぎる
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