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エピローグ

 

 

 ********

 

 

 寒さの厳しい季節にしては珍しく、本日は日差しも暖かく過ごしやすい日和である。少しずつ春が垣間見えるような日差しが貸切のテラスに光を差していた。


 テラスの最奥に備え付けられた二メートルほどの大きな窓から取り込まれた日差しは、その光を浴びようと窓の近くに配置された円卓に優しい熱を与えている。


 大きな円卓には五つの椅子が囲むように置かれ、四つのカップに紅茶がゆらめき中央には今日のためにパティシエが腕を鳴らしたスイーツや一口大のサンドイッチが並べられていた。

 円卓に華を添える為に置かれた編み籠は、この季節では咲かない花々の造花で彩られている。


 暖かなテラスにはすでに紅茶と同じ数の…四人の女性が席に着いており、彼女たちは何気ない会話に華を咲かせながら最後の一人を待っていた。


「ご歓談中失礼致します、最後のお客様が参りました」


 ノックから入室した使用人がこちらにそう声をかける。主催であるリリーナが最後の客人に入室してもらうよう伝えると、そのすぐ後で一人の令嬢がテラスに足を踏み入れた。


 芦毛の馬のような白い髪に、ライトグレーの瞳。落ち着いた雰囲気の水色をベースにした広がりのあるドレスは、フリルとリボンで甘い印象に仕立てられている。ドレスと揃えて作られたボンネットも派手すぎることはなく、彼女の特徴的な髪色に彩りを添えていた。


「ようこそいらっしゃいました、シュピーゲル伯爵令嬢。お時間通りですわ」


 最後の客人である彼女を迎えるため、リリーナは席を立ち少し戸惑う彼女に近づく。だが相手は少し慌てた様子の言葉を返した。


「私が一番遅かったようですわ…申し訳ございません、失礼いたしました」

「いいえ、このお時間に来ていただくようこちらで指定させていただいたのですわ。皆さんがイドナ様にご挨拶できますようにと思いましたの」

「そうだったのですね…お気遣い痛み入りますわ。では、お言葉に甘えて私から皆様にご挨拶をさせていただきたく思います」


 少しばかり声が震えていたほど慌てていたイドナは、リリーナの諭すような言葉で落ち着きを取り戻す。それから流れるようにカーテシーのポーズをとると、彼女の特徴的な鳥の囀るような美しい声で自らを名乗った。


「皆様、改めましてお初にお目にかかります。シュピーゲル伯爵が娘、イドナ・シュピーゲルと申しますわ。以後お見知りおきを」


 静かな挨拶の後にリリーナが頭を上げるよう彼女に声をかけると、イドナは静かに顔を上げる。その様子を確認したリリーナは、新しい温かな紅茶が淹れられたばかりの席に彼女を導いた。


「さぁイドナ様、私の侍女も友人も今日を待ち望んでおりました。今日は楽しいお茶会にいたしましょう」


 リリーナの優しい声音に、イドナは明るい笑顔を見せる。温かな紅茶の湯気が揺れる席についた彼女は、期待に胸を膨らませもう一度明るい笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 続


ということで五巻前編、後編が終了しました

とうとう一冊が前後編になりましたね、なんで?

総文字数は確か五巻前後半合わせて16万文字とか…使ってるアプリには書いてありました。縦式くん便利です


内容としてはなんというか、久しぶりに湿度の高い巻だったように思います

一巻から発生していたフラグや何かを時間をかけて回収しているのでちょっと発生から回収までが遠くなっている部分もあるかと思いますが、やりたいことにまた一つ区切りをつけられた印象でした


リリーナが闇に落ちかけて葛藤するシーンは、連載開始当初からやりたいシーンでした

というか、この話は自分の好きな要素をベースにキャラをどれだけ深められるか、が書く側としての課題なので大筋は書く前から決まってるともいう

相手が好きだから、相手の闇に何かを見出してしまう…ヤンデレ監禁ものによくあるストックホルム症候群とはまた少しだけ違った部分のある病み愛の受け入れ方ですね。何が違うと訊かれると、リリーナ様の自主性と覚悟があまりにも極まってるとこじゃないでしょうか。そういう闇も光もひっくるめて奪い去っていく女はかっこいいと思います


かといってリリーナもまだ18歳ですし、人間であることに変わりはないのでもちろん迷いや葛藤はあります

リリーナからしたら自分の虚しさを埋めてくれる人間なんて初めてだったので相手の思いを叶えてあげたい気持ちは殊更強かったんだろうなぁと、いまこれを書いている作者は思っております。早く結婚しろ


一方ディードリヒくんは安定のヘタレ具合というか、ヘタレ悪化してそうですが大丈夫か?

変態具合はあんまり変わってないんですけどね。ストーキング終わってないし、彼女の櫛をくすねる上セクハラは絶えず、妄言を振り撒いておりますが本当にヒーローとして大丈夫なんか?

顔がいいから存在が許されてるとしか思えない。そう、顔はいい男なんで。はよ結婚して落ち着いてくれ


結婚して夫婦になる、という新たなステージに向けて課題まみれの二人ですが、作家としてはなるべく丁寧に描いてあげたいので頑張ります

もう揺るがないのあいつらの愛だけじゃないかな、リリーナの過労死とかディードリヒくんの暗殺とかないって言えないけど大丈夫そ?


…まぁなんつか、頑張ります

強いていうなら暗殺は多分ないんじゃないかな、そういう話じゃないんで


ではまた次は六巻にてお会いしましょう

ここまでお疲れ様でございました

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