第8話 閑話
その場を言葉で例えるのならば荘厳な場所だった、平時であればきっとその場は楽園という言葉が霞むほどとても厳かな場所だっただろう、しかし今は……戦場……いや、地獄という言葉すら生ぬるく思えるほどひりついた、そんな空間だった。とてもではないが人がいれるような空間ではないだろう。
そんな場で今、神たちが会議をおこなっていた。
「あの神官の人間……名は何だったか?」
会議に参加する神がそう発言した。
「今、人間の、しかも己の役割すら私欲のために放り出した者の名なぞ、知ってどうする?そんなことより暁とかいう小僧をどうするかについて話し合おう」
別の神が苛立ちながら自分たちの期待を裏切った神官の名前を聞いた神に対してそう発言した。
「あ…あの……その暁とかいう人間を見捨てるという選択肢は無いのでしょうか……?」
そう会議に出席している神が自信無さげにおずおず意見した。
「ふざけるな!!主神様の名を使っての決定事項である暁とかいう少年を助けるという決定を反故にするというのか!?それは我々の神の無能を証明することも同義だぞ!!」
その発言に対してそのように偉そうにしている神がブチギレた。
そう、神が、しかも主神が決めたことを反故するのというのはそれほど重大なことなのだ。
主神が宣言を反故にするのと、そこらの木端の神が宣言を反故とでは意味あいも影響も全く変わってくる。
「で…ではどうするのです!?これを解決しようとすればそれこそ……」
慌てたように、同時に焦ったように神がそう発言する。
「だまりなさい」
どこまでも冷たく、そして冷静な声が、会話を途中で遮った。
「このままでは暁という少年は死ぬと思いますが今後どう行動するつもりですか?姉様?少なくとも私は姉様がどのような決断を下そうとそれに賛同し、従いますが……」
そう先ほど話を遮った神が自らの姉に意見を求めた。
「私もフレイの意見に賛成です。こういう話は主神である貴女の方が得意だしね」
そう芯の強そうな女神が言った。
「まー、儂もその意見に賛成じゃ、そもそも今回の件は主神様だけの問題ではなく儂らの名誉の問題でもあるしな」
そう言って頑固そうな男神も賛同した。
「そうですね…皆さん、申し訳ありません、そしてありがとうございます。………それでは私の意見を言わせていただきます。伯爵家の方には申し訳ないかぎりですが……テミスさん、おねがいします」
悲痛な顔をした後、そう、主神が決断し自分の意見を皆の前で表明した。
「っ………反対です!そもそもそれは………その手段は…………!!」
優しそうな女神が絶叫するようにそう発言した。
「黙れ!!では他にどうしろというのだ?」
その発言に対して気の強そうな女神がそう反論した。
「そっ…それは……!…し…しかし……」
気の優しそうな女神は皆に賛成されるだけの反対する理由は内容だがしかしどうしても主神の決定に賛同できないようだった。
「他に代案もないのに反対しているのか!?貴様は!!」
そう気の強そうな女神は気の優しそうな女神に怒鳴った。
「落ち着きなさい、2人とも……」
困ったように、そう主神の妹が割って入った。割って入ったことにより一時は喧嘩が止まった。
しかしすぐに喧々諤々の議論が始まりそして最後に。
「このままでは話が纏まりません。仕方がありませんから多数決で決めます」
主神の妹がそう発言し、そして周りの神もそれ以外にこの話の解決方法がないと理解し最終的に多数決による決定で今回の話を決めることで話が落ち着いた。
「それでは主神様の意見に賛同の者………はい、9柱ですね」
「それでは主神様の意見に反対の者………はい、っ……は〜………え…と…反対5っと……こういう反応になると思ってはいましたが無回答1」
「全、15柱の内、9柱が賛成、5柱が反対、そして1柱が無回答で多数決の結果、賛成多数で主神様の意見が総意ということになりました」
「そういうことですのでそれでは宣誓します。我がアイテールの名において宣言します。我々、神は暁という名の人間を助けることをここに宣言します。」
最終的には多数決の結果を受け、そう主神が皆の前で宣言することで今回の話は解決した。
そんなこんなで暁君が司祭に見捨てられている間にあった神同士の話し合いはこれで終わりました。




