第19話 天使との話し合い
なぜ僕の名前を……いや…それはいい…あの天使も僕の名前を呼んでいたからな……。
神は僕の名前や過去とかも知っているのだろう……神なんかと関わったのはこの世界に来てからが初めてだからどうやって僕の情報を知ったか不思議でしかたがないがどうやって僕のことを知ったかなんてことについて考えたところでどうせ答えなんて出るわけでもないし、それを知ったところで今後の対応とかを変えることは別にないだろうから知ったところで……て話ではあるんだが……というか対応を変えないというか……変えようがないという方が表現としては適切か?
まぁいい……今はとにかく……
「あぁ……あぁ……な…なぜ神が……いや……天使が……ここに……?」
僕が慌ててしまうのも仕方がないことだろうと個人的には思う……急に神……いや?……天使が目の前に現れたのだからそれは……狼狽してしまうだろう?
「そんなに慌てなくてもいいでしょうに……私は神の使徒となるあなたの精神状態や周囲の人間に対する態度などを見て、必要に迫られれば止めるそのように主神様から命令を受けあなたの元へ派遣されました(嘘は言っていませんよ?嘘は、ね、)」
これは嘘ではないが本当でもないか?まぁ仮に正確な情報を僕に話されたところでそれに対してどうすることもできないのだろうから知っていようが知っていまいがどちらでもあまり変わらないだろうがねぇ……とにかく今は僕の自己紹介をすべきか……
「あぁ…ああ……そうですか………知っているだろうがこちらの世界での僕の名前はアレス・フォン・ゲオールギアーだ。君の呼び方は天使さん……でいいかな?これからよろしく」
そう自己紹介した。
あとこれは関係ない話だがなぜかフルネームを言ったのは初めてな気がする自分の名前なんてとっくの昔に知っていたはずだが……不思議だ……。
「自己紹介ありがとうございます。私の名前に関しては天使さんなどではなく、クーストーディアというしっかりした名前がありますそのあたり勘違いしないでください。私の………天界での階級は……あなたは別に興味なんてないでしょうから言うのはやめておきます……」
多少こいつの天界での階級には興味があるがまぁいい。聞いたところではぐらかされるだけだろうから。
「あぁ……わかった、クーストーディア、これからよろしく」
とりあえずそう挨拶しておいた。
この話とはあまり関係のない話だと思うが天使と握手するのは怖いので握手はしなかった。
「はい、こちらこそこれからよろしくおねがいします、アレス様」
そんな感じで自己紹介が終わった。
知りたいことや聞きたいこと自体はたくさんあったが結局は聞けずじまいで話は終わった。
「これはあくまでも私、個人が聞きたいことなのですがアレス様?あなたはどういうつもりで人を殺したのですか?そして今は人を殺したことに関して後悔していますか?」
話が一段落してから天使にそんな質問をされた。
「どういうつもりで……か…そうしなければ恩人が死んだかもしれなかったからだよ?次に……今は後悔しているか……か…まったく後悔していないよ……先っきも話したようにそうでもしなければ恩人が死んでいたかもしれないから、まぁそうじゃなくても僕自身の身にも危険があったのだからそんなことをした犯人を殺すのは当たり前だよね?」
あまり愉快な質問ではなかったが、それでも端的にそう答えた。
「そうですか…後悔していませんか………あくまでもたとえば…ですが、たとえば過去に戻れるとしてもあなたは今回と同じ選択をとりますか?それとあなたは敵対する者をたくさん殺しておきながらなぜ同じく敵対しているアテナ殿を殺さなかったのですか?」
こいつは答えのわかりきった質問をしてなにが聞きたいんだ?
そんなの命にも優先順位というものがあるからだよ!……とは…さすがに言えないか……ハァ~……言い訳を考えるの面倒くさいな……まぁ仕方がないからそれっぽい理由を考えてそれっぽく話すけどさ……。
「ふむ…たとえ何十回いや何百回過去に戻れ、そしてやり直せたとしても僕は絶対に今回と同じ行動をとるだろう。なぜなら今回と同じ行動なら間違いなくあの人たちを全員、無傷な状態で助けられるのだから……それなのに大切な人が死んだり怪我をしてしまうリスクを冒してまで何故、僕自身の行動を変える必要がどこにある?それと……アテナ殿を殺さなかった理由は……そうだな……殺すにたる逼迫した理由がなかったから、次にアテナ殿が死ねば母上だけでなく兄上や姉上も悲しむから……あぁ…ならお前は今回殺した人間の家族が悲しむのはどうとも思わないのか?なんてつまらないこと質問しないでよ?僕がなんて答えるかわかりきってるよね?正直な話をするのなら僕が今回にかぎらずだがきっと……いや?間違いなく今後もたくさんの人を殺すだろうそして僕が殺した人間の家族が悲しもうがなにを思おうが正直どうでもいいしなんなら興味もないし、そもそもの話として僕は僕と、僕の家族であり恩人でもあるあの人達が一番大事だからね?今回にかぎらずだが僕は僕や僕の仲間を殺しにくるのなら僕は僕の持ちうる限りの力を使って抵抗するよ?とりあえず話を戻すがそもそも僕もあの兵士たちに殺されかけたし、そうじゃなくとも姉上や母上に死んでほしくない、なんなら傷一つついてほしくないし……まー…だから兵士たちを殺した理由としては逼迫した状況だったからあの兵士たちを殺したんだよ。さっきアテナ殿を家族が悲しむから殺さなかったといったが正確にはさっき話した言葉通り殺す必要があの時、あの状況ではなかったからだよ、殺さなければ僕や僕の大切な人たちが危ない目にあうのなら最悪アテナ殿を殺す選択も選択肢の中にはあったから正直な話、僕個人としてはその状況にならなくて本当によかったとは思っている……」
決まりきった答えを淡々とそして可能な限りわかりやすく説明した。
「そうですか……(やはり私はこいつが好きになれない)………神様と話せる道具を持ってきているので今日の夜に神様と話してください」
……こいつは今…何と言った?神と話せる道具を持ってきたって?
「はっ?」
急にそんなことを言われたので素っ頓狂な声を出してしまった。
「今日の夜にアレス様には私が持ってきた道具で神様と話してもらいます」
理解の遅い僕に苛立ったようにクーストーディアが再度そういった。
「あ…あぁ……いや…わかったが……まぁいい、了解した……。ちゃんと今日の夜に神と話す。ただその時間に起きてるかわからいから神と話す時間になったら教えてくれ」
驚いていて最初こそ返事がしどろもどろになってしまったが最後はなんとかしっかりと返事することができた。
「少し歯切れが悪いようですが……ご理解いただけたようで安心しました、感謝いたします……。神様と話す時間になりましたらお知らせます……」
クーストーディアは僕の返答に対して心底苛立たしげにそう返事した。




