第10話 新たな生活
ガチャ
「アレス、今日も遊ぶ?」
そう言って扉を開けて入ってきたのは兄と姉だ。
兄と姉と今日は屋敷の中を探索する約束をしていた。
これは転生して知ったことだがどうやらこの屋敷、というよりこの都市自体が防御施設の拠点として使えるようにできているらしい。
この世界に魔物がいる関係上、敵国に攻め込まれる危険が事実上無くとも常に村や都市を攻撃される警戒をしなければならない。
ゆえにこそある程度以上の規模の領地を持つ貴族は領都を防衛拠点の軸として考えて領地開発することが多い。
話は少し変わるが防衛都市を作るのは、いや?作れるのはっと言ったほうが正しいか?は主に伯爵家以上の領地を持つ貴族だ。
その理由は2つ程ある。
まず第1に現実的な問題として防衛都市を作れるだけの金銭などを用意できるだけの貴族家が少ない。
たとえ防衛都市を作るだけの金銭を用意できたとして管理維持費を常に負担できるだけの貴族家となればさらに少なくなる。
その上、最後に、相応の士気と練度のある常備兵を用意しようと思えばこれまた相応の金銭がかかる。
その上、士気維持には相応の金銭だけではなく相応の名誉を与えなければならない。
これはただ相手に名誉を与えるれば名誉を与えられた人間が満足するわけではない。
与える人間にも相応の名誉や名声があってこそ名誉を与えられた相手が自分の与えられた名誉を誇り、喜べるのだ。
ゆえにこそ家臣などが主君から与えられた名誉を周囲に誇るには、主君が相応以上の家格の貴族である必要があるのだ。
そうなってくれば防衛都市を作れるのは伯爵家の中でも真ん中以上に位置する伯爵家か、子爵家の中でも最上位の家が防衛都市を作れる最低ラインになってくる。
ゆえにこそ一定以上の規模の貴族家には金銭が集まる。
ただし出ていく金銭も膨大だ。
なぜそうなるかの理由としてはまず領地の軍(まー、長くとも呼ぶのが面倒くさいから領軍と呼ぶ)が移動をしやすくするため街と街、町や村あるいは村の村などの間に道を作りその道を維持し整備する。
ここで皆さんに想像してほしい。例えば凸凹の道を通って3000円かまともな道を通って6000円、その上、同じ距離の移動で倍かそれ以上移動時間が変わってくる場合。皆さんはどちらを使うでしょうか?
もちろん高い方を使わない人もいるでしょうがしかし前者か後者であれば後者を選ぶ人の方が多いと思う。
まー、さっきの質問への答えはどちらでもいい。
ただ安全な街に質の良い人や物が集まる可能性は高いですし、だからこそ結果的に街や村、領地が富それ目当てで来る人が増える。
それに魔物をある程度、倒してもらうためにも自領からだけでなく王国自体からも魔物討伐のためのお金が出て。
安全的にも産業的にも大きな領地はお金が回る。
そしてそんな高位の貴族には雑多な貴族家が支援や後ろ盾欲しさに近づき結果として権力も強くなる。
話が脱線してしまったから話を戻そう。
この家の領地というよりこの街は先ほど話した防衛都市だその防衛都市を囲んでいる監視塔の真ん中にこの屋敷がある。
要はこの屋敷は領主の居住地兼領地防衛の主要拠点なのだ。
さっきも話したが、この領地は、なにかきな臭いのだ。
ゆえにこそ僕は最悪、いざという時にタプファーとヴァイゼを守ってこの防衛都市ないしこの領地から脱出するためにこの家の構造を把握する必要がある。
まー、あの2人を守る為にも僕は冒険者として1人でやっていけるように強くなる必要があるのだ。
もし2人が望むのなら内乱を起こした者に報復するためにも貴族になれる可能性のある騎士や一流冒険者になるためにも僕は強くなる必要があるのだ。
「あい、にいに」
「あ〜!タプファーだけずるいー!アレス!アレス!私は?」
「ねぇね」
「わぁ〜〜」
そう言って姉が頭をなでてくる。
「えへへっ」
とりあえずそう喜んでおく。
誰にも話していないし、だからこそ当然ではあるのだが誰も僕の実年齢を知らないが、しかし僕からすれば自分の実年齢を自覚しているだけに自分自身の態度に薄ら寒くなるが我慢して幼子を演じた。
「かわいい〜ナデナデ」
「僕も〜ナデナデ」
そう言ってヴァイゼ、姉に続いて兄も頭をなでてきた。
「えへへっ」
さっきからずっと僕、えへへっとしか言ってないな……。
ロボットかよ。
「あっ!、そうだった…。2人とも!探索に行こう!」
本来の用事を思い出したのかそう、兄が言った。
「あっ…!そうだった!探索に行くんだった!アレス、はやくはやく!」
その言葉で姉も本来の用事を思い出したようで、そう言った。
「うん!」
そう返事しながら僕は、やっとこの屋敷の全体図を調べられるかも。そう、思った。




