表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

可愛い嫁さんが持たせてくれた愛妻弁当を食わせて今日も俺はボスを倒す!

作者: 佐倉佑里

「はい、あなた♡ 今日のお弁当よ♪」

「美味しそうな匂いだ。これがあれば今日も勝てるよ。毎日ありがとな!」


「もう、何言ってるのよ♪ 今日も怪我しないで帰って来てね♪」

「ああ、行って来る!」


 俺は可愛い嫁さんが持たせてくれた5段重ねの弁当箱2セットを魔法の袋に収納してダンジョンへと出掛けた。


「ふぅ……なんとかボス部屋の前までやって来れたな。地下90階まで来ると流石に道中の魔物が強過ぎて困る。転移魔法も使える回数に限りがあるからな」


 転移魔法が使えるなんて凄いと思うだろ?


 だけど、残念なことに俺は転移魔法しか使えない。


 しかも、転移できるのは自分だけだから、どこのパーティーも入れてくれなくて、こうしてひとり寂しく頑張ってるという訳である。


 大量の荷物を転移で運べるなら重宝されるんだが、俺自身が運べる重さじゃないと一緒に転移させることが出来ないというポンコツ仕様。


 なのに、魔法の袋に収納してある荷物の重さはしっかりと把握してくれるんだぜ?


 おかげでせっかく手に入れた魔法の袋も宝の持ち腐れになっちまってマジ泣けて来る。


 まあ、ダンジョンボス倒せば1階の入り口にまで戻れる転移魔法陣がボス部屋に出現するから、ボスを倒した時に出て来るお宝の山を持ち帰る時には、ちゃんと役に立つんだけどな?


 はあ……。


「まっ、そんなこと嘆いていても、しゃーないから行くとするか」


 俺は魔法の袋から俺の可愛い嫁さんが作ってくれた弁当箱を取り出し、蓋を開けた。


「あー、今日も旨そうな匂いだ。これで味も良かったら最高なんだけどなあ……」


 俺は蓋を開けた弁当箱を片手にボス部屋の中へと入っていく。


「キシャー!!!」


 中には巨大な蛇の魔物がいた。


「滅茶苦茶でけえ蛇だな、おい!? しかも、その図体で素早いのかよ!?」


 パクリ。


 俺は逃げる間もなく巨大な蛇の魔物にあっという間に丸呑みされてしまった。


 もちろん、俺の可愛い嫁さんが作ってくれた、蓋の開いた弁当箱と一緒に……。


「キシャ!? キシャアアアアアアア!?」


 そして、蛇はのたうち回ったあと、バタンと地面に倒れ、死亡した。


 死因はいつものごとく毒死である。南無南無。


「あー気持ち悪。揺らされまくったせいでまだ目が回って……おえー」


 あん?


『なんで巨大な蛇の魔物が弁当食べただけで死ぬんだよ?』だって?


 そんなの俺の可愛い嫁さんが作った弁当が即死級の激マズだからに決まってんだろ?


 当たり前のこと聞くなよ?


 匂いはめっちゃ旨そうな匂いするし、見た目もマジで旨そうなんだけどな?


 でも、味だけはおかしいんだよ。


 あとは味さえ良ければ完璧なんだけど、人間誰しも欠点はあるもんだし、俺の嫁さんの欠点ってそこだけだから、それぐらい笑って許してやらないと駄目だろ?


 俺の嫁さん可愛いし?


 胸もでっかいし?


 俺のことめっちゃ大好きだし?


 あん?


『ダンジョンボスが食べて即死するような食事を毎日食べてるのか?』だって?


 食べてるけど、それがどうかしたのか?


 あん?


『なんでダンジョンボスが食べて即死するような食事を毎日食べてて、お前は死んでないんだよ!?』だって?


 そりゃあ、俺の可愛い嫁さんが子どもの頃から色々と俺に「食べて♪」って言って渡して来たのを全部食べてたからなあ?


 ままごとで渡された泥団子とか、薬草と間違えて毒草をすり潰して作った汁物とか?


 まあとにかく子どもの頃から色んな毒物食べて死にそうになりながら頑張って耐えて来たからバッチリ耐性がついたんだよ。


 きっと俺の、嫁さんへの愛が毒に打ち勝ったんだな!


 俺はボス討伐報酬のお宝の山を魔法の袋に収納してから出現した転移魔法陣に乗ってダンジョンの入り口へと帰り、そのまま帰宅した。


 ◇◆◇


「はい、あなた♡ 今日のお弁当よ♪」

「今日も美味しそうな匂いだな! これを食べれば、どんな敵もいちころだぜ!」


「もう、何言ってるのよ♪ 今日も怪我しないで帰って来てね♪」

「ああ、行って来る!」


 そして、俺は地下百階のボス部屋の前へとやって来た。


「地下百階のボスか……。いったいどんな魔物が出て来るんだろうな?」


 俺は可愛い嫁さんが作ってくれた5段重ねの弁当を片手にボス部屋へと突入した。


「フハハハハハ! よく地下百階まで来たな! 褒めてやろう!」


 ボスで喋る人型の魔物って確か魔王じゃなかったっけ?


 転移魔法しか使えない俺に勝てるわけねーじゃん。


 よし、帰ろう!


「すみません。来る場所間違えたんで帰りまーす!」


 俺はクルリと踵を返し、ダッシュで逃げた。


「は? 何故逃げる!? 敵前逃亡は許さん! 我と戦え!」


 魔王のそんな声が後ろから聞こえたと思ったら、何故か目の前に魔王の姿があった。


 と言うか俺が転移させられたのか?


 魔王の後ろに魔王が座ってた豪華な椅子が見えるし……。


 よし、転移で逃げよう!


 そう思ったけど転移できなかった。


 うわ、これ詰んだんじゃね?


 ………………。


 よし、死ぬ前に俺の可愛い嫁さんが俺のために作ってくれた愛妻弁当を最期にちゃんと食べておこう!


 今までみんな魔物に食わせてたからちょっと、いやかなり? 罪悪感あったし?


 俺はその場でしゃがんであぐらをかき、愛妻弁当を箸で喉にかき込むようにガツガツと食べ始めた。


「は? 貴様は何をして……待て? クンクン、クンクン。この食欲を誘う旨そうな匂い……。おい貴様、先程の敵前逃亡などという無礼なおこないを許して苦しめることなく殺してやるから、その旨そうな料理を我に献上しろ!」

「はあ!? これは俺の可愛い嫁さんが俺のために作ってくれた愛妻弁当だぞ!? 殺されると分かってんのにお前にくれてやるわけないだろ!? これは全部俺が食うんだー! ガツガツガツ!」


「献上しろと言ってるだろうが!」


 魔王がそう叫ぶと俺が持っていた弁当と箸がシュンと消えた。


「おま、ふざけんな!? 返せ俺の愛妻弁当ー!」

「誰が返すか、こんな旨そうな料理! ガツガツガツ、うぐっ!? ぐぁああああ!? ま、まさか、即死、ど、く」


 バタリ。


 魔王は倒れた。


 死因はいつもの毒死である。


「うそーん……」


 魔王が俺の可愛い嫁さんが作った愛妻弁当を食って死んじまうとか嘘だろう?


 俺はしばらく待ってみた。


 けれど、魔王が起き上がることはなかった。


 代わりに、お宝の山と転移魔法陣が出現した。


「魔王までいちころとか俺の可愛い嫁さんが作った愛妻弁当すげえな。帰ったらいっぱい感謝しなきゃだな!」


 俺はお宝の山に向かって歩いていく。


 すると後ろから、


『ま、待ってくれー! 帰る前に慈悲を! 慈悲を頼むー! こんな、こんな形で死ぬのは嫌だー!』


 と声を掛けられたので振り向くと、魔王のゴーストがふよふよと浮いていた。


「うわっ!? 復活した!?」

『復活などしておらぬ! 頼む! 後生だからそこの宝の山の中にある蘇生薬を使って助けてくれ! あんな死に方、魔王として恥ずかし過ぎるのだー!』


「えー? 助けたとたん殺されそうだからなー?」

『殺さないと魔王の名にかけて誓うから! それに貴様はダンジョンで入手するお宝で生計を立てている冒険者であろう!? ダンジョンがこの世から消えたら困るのではないか!?』


「まー確かに? えっ、お前助けないとダンジョンって消えちまうのか?」

『当たり前だ! 我がせっせと魔物と宝を作っていたんだ! 我が死んでしまえば新しい魔物も宝も当然出現しなくなる! そうなればダンジョンがダンジョンとして機能しなくなるのも当然のことだと分かるだろう!?』


「そっかー、そいつは困るなあ。俺、馬鹿だから普通の仕事できないし」

『だろ!? 絶対貴様を殺さないと約束するから頼む! 凄い魔剣もプレゼントするから!』


「若返りの薬とかはないの? 美肌になる薬とかでもいいけど?」

『あるある! それもプレゼントしちゃうから!』


「あるのか!? それならいいぞ! 俺の可愛い嫁さんが喜ぶからな!」

『本当か!? では交渉成立だな!』


 その後、俺は魔王に蘇生薬を掛けて生き返らせてやったお返しに、凄い魔剣と若返りの薬と美肌になる薬と金銀財宝をもらってから帰宅した。


「ただいまー」

「お帰りなさい、あなた♪」


「今日は凄いもの、いっぱい手に入れて来たぞ! 全部、君の愛妻弁当のおかげだ!」

「もー、大袈裟ね! ただのお弁当なのに♪」


 全然ただのお弁当じゃないけどな!


「パパおかえりー!」

「ただいま、マイ・スウィーティー!」


「パパ聞いて聞いてー!」

「パパ、なんでも聞いちゃうぞ! 今日はどんな楽しいことがあったんだい?」


「今日の晩ごはんね! ママに教えてもらって、あたちが作ったのー♪」


 なん、だと?


「そ、それは凄いな! パパびっくりだよ!」


 色んな意味でな!


「それでね、それでね! 味もバッチリだってママが言ってたのー♪」


 マジかぁ……。


「そうなのかい、マイハニー?」

「ええ、本当よ♪ 今日作った料理だけに限定すれば、初日にしてもう免許皆伝の腕前ね♪ お料理スキルでも持ってるんじゃないかしら?」


 料理スキルじゃなくて毒殺スキルの間違いじゃないかなぁ……(遠い目)


「どうパパ? すごいー? あたち、すごいー?」

「お、おう、凄いぞ! パパびっくりだ!」


 俺の可愛い嫁さんに続いて俺の可愛い娘まで魔王殺しの料理を作れるようになったなんて聞かされたらな!


 まだ見ぬ未来の義理の息子よ、強く生きてくれ。


 俺は心の中でそうエールを送ったのであった。


 おしまい♪



⁺˳✧༚〜〜〜˚✧₊〜〜⁺˳✧༚〜〜〜˚✧₊〜〜⁺˳✧༚〜〜〜˚✧₊〜〜⁺˳✧༚〜〜〜˚✧₊


 お読み頂き、どうもありがとうございました♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪


 ちなみに主人公の真似をすると普通は死にますので、毒を食べて耐性をゲットしようとするのはおやめください(・ω・)ノ


 あと、楽しんで頂けたらブックマークと評価をしてもらえると嬉しいです。ではでは(*゜▽゜)ノ〜♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ