初めてのダンジョン探索の成果
レベルアップしたということで早速初級回復魔法を取得する。HPが若干減っていたので荒木に回復魔法を使っていいか確認してから使ってみる。報連相大事。
「ヒール」
ありきたりな回復呪文だなと思って唱えてみたら、体が淡い光に包まれてダメージが回復していく。ダメージは回復するが体力や精神に関しては少ししか回復しないようだ。魔法を見ると本当にダンジョンに来たんだなという実感が湧く。あんだけゴブリン倒してなんだと思うかもしれんが、幼き頃から憧れがあった魔法を自分が使えるとなると流石にテンションが上がる。
「中田さん楽しそうですね。」
「悪いか。魔法は憧れなんだよ。でも、やっぱり攻撃魔法が一番やってみたいな。MPとかの影響もあるだろうから、そんなに使えないかもしれんが。」
「そうですね。やっぱり魔法使いのみで戦い続ける人は稀ですね。MP回復のスキルがあるとか元々のMPが異常に高いとかじゃないとレベル上げも出来ないですから。最初は武器で戦うより強いですけど。レベルの上昇率を考えると武器スキルの方が優れてますね。パーティ前提で強い敵が出てきた時に魔法ぶっ放して経験値もらうみたいな感じですかね。」
そうなると、俺や荒木みたいな社会不適合者は合わんな。よかった槍スキルあって。そういえば剣買ったけど使わなかったな。今度また剣少し使ってみるかな。
「レベルも上がったことだし、いい時間だ。今日のところは終わりでいいか。」
「そうですね、キリもいいですし今日はこれくらいで帰りましょうか。魔石とかドロップ品の換金にいきましょう。」
ここまできた道を戻りながら出てきたゴブリンを倒していく。ゴブリン狩りはかなり慣れたな。そう思いながら受付まで探索者協会の買取カウンターに行った。
時間としては18時ごろで混み合う時間に当たってしまった。こんなに探索者がいたんだなと思う。初心者ダンジョンとは言われているが、ダンジョン探索は初心者が一番多い。そこで、心を折られたり数は少ないが命を落としたことにより断念していく人、副業として小遣い稼ぎとしてやっていく人は初心者にとどまっている。中級者以上のダンジョンとなると危険度もグッと上がるからだ。
だが、国としてはこの中級者以上を非常に欲している。そのため初心者の母数を広げる試みが多くあるのだ。正直探索者会員証なんて5万円の入会料では賄えないほどの技術と金がかかっているが、魔力資源と今後の研究開発のことを考えると魔石なんていくらあっても足りないのだ。
さらにダンジョン産のドロップアイテムは現状地上では作り出せない貴重品となっている。日本の中級者ダンジョンはまだ全部攻略できていないので、そこでしか取れないドロップアイテムなどが残っている可能性が高い。3年前まで取り残されつつあった日本の技術を巻き返すのはダンジョンしかないのだ。
他国はそれまでの技術競争を優先的に行なったため、今日本はダンジョン面では先進国となっている。まあこれも国主導でやったわけではなく一部の上級探索者が国から規制される前に根回しを行い、政治的なコンセンサスをとっていたからだという噂ではある。こういうことは詳しいんですねと荒木に呆れられながら待っていると俺たちの受付の順番が回ってきた。
荒木のマジックバッグから魔石やドロップ品を出す。
「魔石が121個で12100円、ゴブリンの牙が30個で1500円、初級ポーションが1個で3000円となります。全て買取でよろしいですか?一部お客様で使用されますか?」
ポーション以外は今のところ使い道はないので、それ以外は買い取ってもらう。
「でしたら、13600円のお渡しです。お二人で等分で会員証への振り込みでよろしいですか?」
ダンジョン系のお金の流れは会員証で管理した方が色々な面で楽ということなので会員証へ振り込んでもらうことにする。
「等分でいいのか?確かに俺が結構倒したが、今日これだけの数倒せたのほぼ荒木のおかげだぞ。3分の2とかにしようぜ。」
荒木に聞くと
「いいんです。これはあくまで先行投資です。そのうち十分回収できます。それに私はお金には困ってませんよ。」
悔しいが荒木の強さだとダンジョン探索でかなり稼げるだろう。
「わかった。ありがたく受け取っておく。正直俺の方が今日装備買ったり、入会したりで厳しいし。ただポーションはとっておけ、経緯はどうあれ俺が使ったんだ。先輩としての意地もある。」
「素直でよろしい。まあ、それくらいなら受け取っておきましょう。」
「お待たせして申し訳ありません。等分で振り込みお願いします。」
「かしこまりました。では会員証の提示を。」
専用の端末に会員証をタッチするだけで振り込みが終わった。ダンジョン系の施設の方が地上の施設より進んでいるな。と感心する。
今日の収入は6800円だ。初期費用として大体15万円くらい使用しているが、そこは今後十分取り返していけるだろう。
そこで荒木が話しかけてくる。
「ということで、このポーションを3000円で買いませんか?普通に買うと5000円ですし、私はマジックバッグに結構予備入れているんでそんなにいらないんですよ。」
「わかった、買おう。」
変なプライドよりお得さだろう。先輩の意地とか言ったけど、ここはビジネス的には買わないと損だ。MPが切れた時の回復手段は必要だ。
「明日は探索どうしますか?まだ体は大丈夫そうですか?」
「明日も潜ろうかな。というか普段より体が軽い。ステータスってすごくね?あとゴブリン倒しまくったことでなんかスカッとしてる。まだ大丈夫そうだ。」
「体力上昇のスキルとっても普通そんなに変わらないんですよ。中田さんどんだけボロボロだったんですか。あとストレス溜めすぎですよ。」
「逆にストレスで何もする気になれなかったんだよ。常に重力10倍みたいな感じだったのに。」
「どこの星の修行ですか。そんなんなら早めに相談してくださいよ。」
「すみません。これからは相談することにする。まあ、今はおかげさまで大丈夫そうだ。」
しばらくはダンジョンでストレス発散して健康的に暮らせそうだ。
「じゃあ、また明日。」
と俺がいうと
「晩御飯くらいいきましょうよ。」
とお誘いを受けた。ダンジョン探索に満足しすぎていた。普通そうだよな飯くらい行くよな。
そんなわけで、適当な店によって晩飯を食べて今日は解散した。