春よけぇ
「はよう春がこんかなぁ」
ばあちゃんは、冬将軍さんにお願いしょうと思うて庭にでた。
ぴゅーぴゅー冷てぇ風の中、ちょんまげ頭の冬将軍が、
「もっと吹けぇ、もっと吹けぇ」
ゆうて、はっぱをかきょうる。
ばあちゃんは、冬将軍さんに声をかけた。
「冬将軍さん、冬は、でぇこんがおいしかったし、みかんもおいしゅういただきました。しっかり冬は楽しませてもろうたんで、もうそろそろ春さんにかわってもらえんじゃろうか。おねげぇします」
冬将軍さんは、
「ほうか。ほんなら、わしはこの辺で、いぬるで」
ゆうて、さぁーっと、消えてしもうたんじゃ。
次の日、ばあちゃんの庭にメジロがとんできて、
「春がきたで」
ゆうたんじゃって。
※岡山弁の訳
はよう はやく
こんかな こないかな
でぇこん 大根
いぬるで 帰るよ