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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
少女は転生を強く願う新たな補佐と出会う
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第六章 第一話 新たな仕事と訪れたトラブル

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。

そして、新年あけましておめでとうございます。

本年も私の作品を楽しんで頂ける様に勤めて参りますので本年もどうぞよろしくお願いいたします。

本再開大変お待たせ打たしました。

 ネクラは死神と共にとある場所に訪れていた。もちろん、死神補佐としての仕事の為だ。

 なお、虚無は別の仕事で今回は別行動となる。仕事が早く終われば合流の可能性もあるらしいが、今は死神とネクラのふたりきりだ。


 今回の依頼は悪霊退治だった。死神からの連絡によるとある女性が男に騙されてそれを苦に自ら命を絶ち、男にとんでもない恨みの感情を残したまま亡くなったその女性は悪霊となり、男性を今も呪い続けているとの事だった。


「男の人に騙されたって、具体的には?」


 端末を見ながら詳細を語る死神にネクラが聞くと死神はさらりと言った。


「独身だって言われて付き合っていたんだけど、実は妻子ある身だったんだって。結婚も約束してくれていたから期待していたのに、奥さんにバレたらしくてね」

「それは大変な修羅場ですね」


 ネクラが顔をしかめると、死神はその通りと端末をいじりながら肩をすくめて言った。


「亡くなった女性の方は知らなかった事とはいえ、男の家庭を壊す様な行為をしてしまった事を悔いてきちんと謝罪して男とはきっぱり別れたみたいだね」

「その女性はきっちりしている方だったんですね。縁を切るどころか謝罪もできるなんて、滅多にない事ではないでしょうか」


 知らずに浮気相手になってしまったとしても、通常であれば奥さんに会うのさえ怖くなってしまうのではないか。

 過ちを認め、自分の意志でしっかり頭を下げられる人間は少ない。でも、その女性はそれができたほど意志が強い人間だ。


 どうしてそんな人間が悪霊になってしまったのか。やはり、騙された事を恨んでいたのだろうか。


「その女性は何故、自ら命を絶ったのですか。きっちり自分で自分の過ちを清算しているのに……」


 ネクラが言うと死神は首を振る。


「それは表向きな解決だよ。実際は彼女が潔い姿を見せても、世間は彼女を責めた。『本当は家庭を持っていた事を知っていたんじゃないか』『長い間付き合っていたら普通は家族の存在に勘付くだろう』そんな批判を近所や職場、SNSで受け続けたんだ」

「そんな……」


 ネクラは言葉を失った。やはり、人間と言うものは一度でも「悪」だと思った人間をとことん追い詰めてしまう生き物なのだろうか。


 今回の場合は知らずに浮気相手になってしまった女性はある意味被害者と言える。どんな思いでその事実を受け止め、奥さんに謝罪したかは誰も知る由もないし、女性の気持ちは誰にもわからない。


 浮気をされた奥さんには同情しても「騙された」女性には誰も同情しない。どんなに潔さを見せても、真摯な態度を取っても、世間が悪と判断すれば女性は悪なのだ。それはとても悲しい事だとネクラは思った。


 しかしそう思えるのも自分が死神補佐になり、人の心と言う世間には出ない情報を知る事が出来る様になったためだとは思う。

きっと自分も生前ならば、よくある痴情のもつれだと思い適当に流すだろう。


そう思うと、人の心を知ると言う事は大切だし、同時に難しい事だとも思った。


「人の目が気になり、会社にもいられなくなって退職。その後も、人の目線がどうしても気になり、自暴自棄になって自ら命を絶ったみたいだ」

「人の言葉と視線は、とても怖いですから」


 ネクラは悲しげに瞳を伏せた。自分も似たような経験をしたからだ。クラス中にいじめられ、まったく関係のない他のクラスの視線さえ気になり、誰かが内緒話をすれば自分の事を言われているのではないかと思い気分が悪くなり、毎日が憂鬱だった。


 そしてそれが自分のなかでひどいストレスとなり、自分で命を絶った。それ故にこの度の女性の気持ちには共感ができる。


「そんなわけで、今回の君の仕事はその悪霊化した女性がどこで何をしているのかを調査する事だよ」

「死神さんはその情報を既に掴んでいるのでは?」


 ざっくり過ぎる仕事内容にネクラが疑いの目を向ける。

例によって『輪廻ポイント』とやらを貯めさせるためにわざわざ遠回りをさせようとしているのではないか。そんな視線を送ったが。死神はその視線を物ともせず、にこりと笑って言った。


「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。そこは想像に任せるよ。でも、どちらにせよ君が苦労すればするほどポイントは加算されるから、そんなのどうでもいいでしょ」

「むぅ……まあ、そんなんですけど」


 遠回りと言っても、死神は割と真剣にネクラの輪廻転生の為の徳(通称、輪廻ポイント)を貯めるために指示をしてくれるのだ。

 元々は死神が1人でこなせる様な仕事を補佐であるネクラのためにわざわざ仕事を分担して役割を与えてくれているのだ。


 苦労したり、危険な目に遭うのはためらわれるが、状況を考えれば断る権利も理由もネクラにはない。何か納得がいかない気がするが、ネクラは死神からの仕事を受ける事にした。


 そんなこんなでいつもの如く、ネクラが死神の指示で必死で情報集めに奔走した。噂話を集め、裏取りをし、徹底的に穴がない様に調べ上げた。

 

 こう言った情報収集力をつける事が出来た事が、死神補佐として頑張ってきた中での一番の成果だと思った。


 結果その女性の悪霊は自分が務めていた会社に地縛霊となって居座っている事がわかった。


「ふんふん。なるほど、ちゃんと自分で調べたみたいだね。俺のとこに来た情報と大体合ってる」


 詳細を死神に報告し、すると死神は感心した様に言った。ネクラは褒められたことを少し喜んだが、死神の言葉を聞き逃さなかった。


「今、俺のとこに来た情報、とか言いませんでしたか。やっぱり知ってましたね!?」


 ネクラが問いただすと死神は笑顔を崩すことなくしれっとして言った。


「ネクラちゃんも仕事に慣れて来たねぇ。関心関心」

「話を逸らさないで下さい!!」


 そんな文句を言いつつ、後はその悪霊化した魂を折檻するだけとなり、ネクラは死神共にその会社へと訪れていた。

 次なるネクラの仕事は、悪霊を探し出す事。見つけ次第報告、死神が悪霊を折檻すると言う流れだ。 

 ネクラがいざ、その場所へと踏み出そうとしたその時、背後で涼やかで可愛らしい女性の声がした。


「ちょっと、そこのどんくさそうな子。止まりなさい」


 声は可愛らしいが声色に敵意を感じ、ネクラは声がした方を振り向く。

 そこには20代前半ぐらいの茶色の髪色でショートヘアの紺色のスーツを身に纏った女性が立っていた。


 スカートではなくパンツを着用し、細く長い脚にピタリとフィットしており、カッコよさすら感じる。

 細身で身長はおおよそ160cmは超えていると判断でき、紺色のパンプスが5cmほどあるので、更に身長が高くスマートに見える。


 パンプスのヒールの部分が細く、履き慣れていないネクラでは不安定で転倒の恐れがあるそれを、その女性は平然と履きこなしており、背筋を伸ばして大地を踏みしめている姿は彼女の体感の良さを物語る。


スーツをばっちりと着こなすその姿は、まさにキャリアウーマンと言う言葉が似合う人物だと思った。

「えっと、あなたは?」


 ネクラは戸惑いながら言葉を紡ぎ、死神は顔をしかめて女性を見つめた。

 名前を聞かれた女性は強気な口調で堂々として言った。


「私はあなたと同じ死神補佐よ。今は華って名乗っているわ」

「華さんと言うんですか。あの、私に何か御用でしょうか」


 ネクラは自分の記憶の中では華と言う女性とは初対面のはずだった。しかし何故かものすごい敵意を向けられており、身に覚えのないネクラはオドオドしながら質問をした。


 すると彼女は切れ長の瞳をキッと釣り上げて、腕組みをし、高圧的な態度で明確に敵意を持ったままの口調でネクラを睨みながら言う。


「あなたの仕事を私によこしなさい」

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