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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
ぞれぞれの物語
88/155

【番外編】死神と柴の雑談~好きの理由~

この度もお読みただ来まして誠にありがとうございます。

番外編では登場人物を色んな組み合わせで絡ませたくなってしまいますね。あと、本編とは異なり、番外編は思い付きで書いておりますので、文章が話によって長かったり短かったりします(汗)

本日もどうぞよろしくお願いいたします。


「ねぇ、柴くんてマジでネクラちゃんの事が好きなの?」

「マジで好きッスよ」


 ネクラと虚無の担当である死神と柴は真っ白な空間で隣り合って地べたに座っていた。

 と言うのも、本日はカトレアが他の補佐の指導があるからと柴の定期的な戦闘訓練を死神に託したのだ。


 柴は仇であるこっくりさんを倒す為に補佐でありながら死神見習いと同じ訓練を受けて来たのだが、その悲願が達成された後も補佐の仕事に役立てたいと訓練を続けていた。


 そんな真面目な彼に応えたいと思っていたカトレアは、始終もの凄く不本意そうに死神に柴を託して他の補佐と共に仕事へ向かった。死神は新たな貸しが作れてラッキーだと喜んでいた。


 なお、虚無も練習に誘ったが丁重に断られた。見習いとしての仕事があるらしい。それに死神の訓練は先だって受けたのでもういいと言っていた。


 そんなこんなで、死神はしっかりと戦闘訓練を柴に施した。やるからには本気でやると徹底的にしごかれた。柴は虚無が死神の訓練はもういいと言った理由が分かった気がした。


 霊体である柴に体力の限界はないが、死神の気迫とスパルタな訓練メニューに精神的に疲れてしまい、休憩を申し出たのだ。

 死神は「なんで疲れるかなぁ」とぼやきながらもそれを許可し、緊張感から解放され柴が大きく息を吐きながら座り込むと、何故か死神も隣に座すわり、現在に至る。


「えっ!マジなんだ。なんで!?」


 デリケートな問いかけにあっさりと答えた柴に死神は、瞳を見開いて驚きの声を上げる。

 そして信じがたい内容だったのか、続けて踏み入った質問を投げかける。柴は照れる様子もなく答えた。


「なんでって言われても……しいて言うなら一目惚れッスかねぇ」


 柴が顎に手を当て小首を傾げながら答えると、死神は更に驚いて瞳を見開いた。


「まさかの一目惚れ!?うっそ。どこに惹かれたの。具体的に教えてよ」


 驚いてい割には言葉の後半はどこかワクワクした様子で前のめりに聞いて来る死神を、少しだけしつこいと思いながらも、柴はそれに答えた。


「初めて会った時は単純で面白そうな人だなぁ。程度だったんスけど、一緒に仕事をして、あの人の表情や声、性格を知るうちに気が付いたら好きになりました」

「それでけ?理由になってないと思うけど。恋愛ってもっとドラマチックなものなんじゃないの。現世の漫画やドラマは大体そうじゃん」


 柴の理由を聞いてつまらなさそうにした死神に柴はきっぱりとした態度で言った。


「ドラマチックな恋愛なんて現実にはほとんどないッスよ。好きに理由も大きなきっかけもいらないと思うッス。ああ、この人が好きだなぁって思ったらそれはもう恋ッスよ」

「うわ、かゆっ。すごくかゆいね。君」


 恥ずかしげもなく言ってのけた柴を見ながら死神は体を掻き始める。流石にその行動は目に余ったのか、柴が少しムッとした表情で言った。


「そっちから聞いておいてなんスかその態度。死神さんには、誰かを好きになった事はないんスか」

「んー。ないかな」


 死神は不真面目な様子で一瞬考えた後、否定の言葉を口にした。今度は柴の方がつまらなさそうな表情になる。


「えー。人に聞いておいてそれはないッス。あ、カトレアさんとか」


 カトレアの名前を出した瞬間、死神の体が固まる。そして口元に手を当てて吐き気を押さえながら柴を睨む。


「うぇ、気持ち悪い事言わないでよ。俺があいつを好きになるわけないだろ。と言うか、そう言う感情は生者特有のものだから、俺にはよくわからないな」

「そう言うもんなんスか?」


 柴が首を傾げると死神は頷いた。


「そうだよ。誰かを愛するなんて、死神にとっては無価値で無意味な事だからね。それについてはあいつ、カトレアも同じ価値観だと思うな」

「カトレアさん、恋愛トーク超好きみたいッスけど」


 柴は日ごろからカトレアが自分のところに女性の死神補佐が来たら、恋愛の話をしてみたいと言っていたのを知っていた。どう考えても恋愛を無価値だと思っている様には見えない。


 しかし、死神は鼻で笑いながら柴の考えを否定する。自分の膝に肘を置き、頬杖をつきながら、薄ら笑いを浮かべて言った。


「それは他人の恋心に関心があるだけだよ。聞いて手楽しいって思うのは別に変な事じゃないだろう?俺が現世の文化や文明に興味があるのと同じ。自分が恋愛をしたいとは思っていないよ」


 死神の態度や口調があまりにも静かで真面目なものだったため、全て本気で言っている事だと理解した。


「じゃあ、俺に突然ネクラ先輩への想いを聞いたのも、あなたの興味本位だったって事ッスか」

「そうだよ。君が頻繁にネクラちゃんを訪ねてくるし、やたら彼女に絡むからもしかしてそうなのかなって思って聞いて見ただけ」


 正直に、そして悪びれる事無く死神は笑顔で言った。あっさり肯定されてしまった柴は何故だか妙な脱力感に襲われ、座ったままの姿勢でがっくりと肩を落とした


「でもさ。君たちはどうせ転生するんだよ。そんな感情は持つだけ無駄だと思わないの?まさか、その気持ちを本人に伝えるつもりとか」


 死神は脱力感に沈む柴に鼻で笑いながら、少しだけ見下した言い方でそう問いかける。それを受けた柴は、すっと背筋を伸ばして死神に向き直り真剣な表情で言った。


「きちんと伝えるかどうかはまだ決めてないッス。でも、生者でも死者でも誰かを好きになる気持ちがあってもいいと思うッス。もちろん、相手に執着するのは良くないと思うッスけどね。ネクラ先輩と共にいられる時間は短いかもしれないからこそ、大事にして言って思っています」

「ふーん。そうんなもんかねぇ」

「そんなもんッスよ」


 柴の言葉に興味がなさそうに死神が相槌を打ち、柴がそれを無理納得させた。


「それにしては、わざわざ後輩キャラ作って親しみやすさをアピールするとか必死だよね」

「なんの話ッスか。俺、生前からこういう感じでしたよ」


 満面の笑みで柴が言ったが、その表情はどこか張り付いている様にも見えた。そんな彼をみて死神が面白そうに言う。


「君の生前の口癖が『~ッス』って言うのは知ってる。でも後輩キャラだと指摘したのは中身の話なんだけどな」

「死者は年を取らないから問題ないッスよね」


 お互いに雰囲気が冷たく恐ろしい表情で笑い合ってから数秒。その空気を破ったのは死神だった。


「さ、無駄話は終わり。そろそろ訓練の続きをしようか」


 よっこらせと立ち上がり、死神は柴を誘う。それを聞いた柴は顔を青ざめた。


「ま、まだやるんスか!?あれだけ暴れたのに!?」


 動揺する柴を見ながら死神はけらけらと笑いながら意地悪く言った。


「暴れた、じゃなくて訓練ね。当たり前でしょ。せっかくカトレアに頼まれたんだ。あいつが悔しがるぐらいの英才教育をしてあげるよ。終わったら、虚無くんレベルになっているかもよ。だから、頑張ろうね。柴くん」


 整った顔でウィンクをされたが、柴にとってそれは絶望の合図でしかなかった。


「うう、そんなーーっ!カトレアさぁん。早く帰って来てぇ!!」


 柴が涙目で絶叫し、死神との地獄の訓練が再開された。



                                           終わり

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