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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
ぞれぞれの物語
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【番外編】虚無と柴の男性トーク

この度もお読み頂いて誠にありがとうございます。

恐れ入りますが本日も番外編の投稿となります。と言うもの時間が取れたり、取れなかったりしますのでどうしても本編が投稿できず……。

投稿しても途中で止まりそうなので、そうなるぐらいならと番外編(書き溜め分)を投稿しております。

年末か来年には本編再開予定です。どうかそれまでお付き合いくださいませ。

本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「虚無先輩って、ぶっちゃけネクラ先輩の事どう思ってるんスか」

「……は?」


 ここは現世でも黄泉の国でもない空間。死神が自ら命を絶った者たちの魂を留め置く曖昧な空間だ。虚無の上司にあたる死神はここを『死神空間』と呼んでいた。

 

 真っ白で何もない空間はどこまでも続いている。基本的には死神補佐は一か所に拠点を作られ、拠点から離れる際は担当死神の許可と同行が必要なのだが、死神見習いである虚無や、立場としては補佐であっても見習いと同じ訓練を受けている柴は自由に行き来する事が許可されている。


 2人は訓練帰りでたまたま出会い、柴がネクラのところに行きたいと言うので、目的地が同じだった虚無も同行する事になったのだ。


 真っ白な空間で時たま柴が虚無に質問を投げかけたが、そんな柴が鬱陶しかった虚無は全て「ああ」と「そうか」と「しらん」でしのいでいたが、聞き捨てならない言葉につい足を止めて妙な声で反応してしまった。突然歩みを止めた虚無に合わせて柴も止まる。


「ネクラ先輩から聞きましたよ。虚無先輩はある仕事のバディとして紹介されたのが出会いだって」

「それについては間違っていないが……」


 素っ気ないない態度を崩さない虚無を柴がぐいっと覗き込んで言った。


「第一印象はどうでしたか」

「何故、そんな事を聞く」


 くだらない事を聞くなと言う視線と短く冷たい声色の虚無に負ける事なく柴は笑顔のまま明るく、さらりと言った。


「俺が知りたいからッス」

「……理由になっていないな」


 答えるつもりがないのか、虚無がこのまま強制的に会話を終了させようとしたが、それをさせまいと柴が強引に話を進める。


「因みに、俺はおもしろい人だと思います」

「なんだ。そう言う話でいいのか」


 柴の言葉を聞いて拍子抜けした態度をとる虚無を柴がにまにまと見つめる。


「あれぇ。どう言う話と思ってました?まさか恋愛系とか?」


 勘違いさせるためにわざわざ回りくどい言い方をしたのだろうにと虚無は思いながらも反論するとまんまと話に引き込まれそうなため、虚無はあえて返答しなかった。


 そのままにやにやとしている柴を無視して止めていた歩みを進める。無視をされた柴は慌ててその後を追いかけて、また隣に並んで歩き出した。


 誘いに乗らなかった虚無をつまらなそうに横目で見ながら、柴は唇を尖らせて言った。


「ちぇー。虚無先輩おもしろくないッスねぇ。ちょっとぐらい答えてくれてもいいじゃないッスかぁ」


 そのままブツブツと隣で文句を垂れる柴を鬱陶しく思ったのか、虚無が大きく溜息をついて口を開く。


「お前と同じだ」

「え、何スか?」


 突然の返答に不満を紡ぐ事に夢中になっていた柴が瞳を瞬かせて聞き返す。虚無は無表情のまま、柴の方を見る事もなく同じ言葉を繰り返した。


「お前と同じだと言った」

「あー、ネクラ先輩の第一印象の話?」


 脈絡のない言葉を柴が何とか理解して聞くと虚無は首を縦に振った。


「俺と同じって事は……第一印象はおもしろいって事ッスね」


 にかっと笑って柴が言うと虚無の首が僅かに縦に動いた。それを見逃さなかった柴が嬉しそうに言った。


「そうッスよね。ネクラ先輩っておもしろいッスよね。性格って言うかぞんざいが正直って感じで。反応が面白いから、からかいたくなるッスよね」

「……」


 虚無はやはり無言だった。柴はそんな虚無を見ながら以前ネクラから聞いた言葉を思い出す。


『虚無くんはね。無口だけど質問にはちゃんと答えてくれるんだよ』


(それはそうかもしれねぇッスけど、この手の質問に果たしてどこまでこたえてくれるかどうか……)


 会話はせずとも歩幅を自分に合わせてくれている虚無に気が付いていた柴はタイミングを計りながら話を切り出す。


「面白いけど放っておけないところもあるッスよね。霊感も霊力もないし怖がりなのに、お人好しで突然勇気を出すから、肝が冷えるッス」

「それは、わからなくもないな」


 虚無が反応を見せたので、これならいけると柴は思った。柴は歩きながら虚無を覗き込むようにしてウキウキとして言った。


「そうッスよね!でも、そのお人好しのおかげでこっくりさんと対峙した時には救われたッス。あの時、ネクラ先輩に止められてなければ俺、あのまま戦って消滅していたかもしれないッス」


 柴が苦笑いを浮かべていると虚無もそれに答える。


「ああ。だが、誰かに親身になれると言うのは大切な事だろう。それで救われる魂もあるんだからな」

「……。そうッスね」


 簡潔にまとめた虚無に柴がにっこり笑って返した。

 そもそも、柴がこの話をしようと思ったのは本当にたまたまだった。しかし、一時の付き合いであったとしても、知り合ったからには交流がしたいと思っていたのは事実である。


 自分と同じ境遇を持つ者との交流は、好奇心が旺盛な柴には魅力的なものだったのだ。故にネクラにも絡むし、今回こうして訓練帰りに出会った時も虚無と交流を深めるチャンスだと思った。だからこそ、共通の知り合いあるネクラを話題に出したのだ。


 虚無の上司である「死神さん」や自分の上司であるカトレアの事を話題に出しても良かったが、それはでは虚無の関心を引けないと思ったし、ネクラの話題が一番話しやすいのではないかと考えたのだ。


 虚無は無口で無表情のため、その心情は読み取りづらかったが、少なくともネクラに対しては興味がないわけではなく、寧ろ関心を向けているのではないと言う事は分かった。


 自分にとってはそれだけでも大きな報酬だ。交流が深められたかは別だが……。それにしても素っ気ないな。虚無を見ながら柴はそう思った。


 もうすぐネクラたちが拠点にしている場所につく。会話が強制的に終了するのであれば、最後にからかっておくか。そんな柴に悪戯心が生まれ、人懐っこい微笑みで虚無に質問をする。


「じゃあ、最後にこれだけ。ネクラ先輩を恋愛的に好きかどうかって聞かれるとなんてこたえます?」

「好きかどうか……」


 また無視されるかと思っていたが、今度は答えようとしている虚無に柴は驚いた。まさか、答えがきけるのか。そう思った柴に緊張が走る。


 一方、虚無はもう一度柴の言葉を思い出し、そして考えた。くるくると表情が変わり、思っている事が全て態度に出るネクラの姿を思い浮かべ、そして結論に辿り着く。


「ないな。あいつを見ると小動物を愛でている気分になる。そう言う意味の愛はあるかもな」

「先輩、ロマンのかけらもねぇッスね」


 柴が脱力した後呆れた様に言い、この話題は幕を下ろしたのだった。



                                           終わり


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