【番外編】死神のもっと知りたい!人間界の食べ物たち ⑦ ピザ
この度もお読み頂き誠にありがとうございます。
番外編その⑦です。
下半期に仕事もゲームイベントも重なり、頭を抱える毎日です。
もちろん、目標にしている『小説を毎日投稿』も忘れません!全部に全力を注ぎますとも!!
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「あてんしょん!このお話は限りなく本編に近いIFの話だよ。ツッコミどころ、ギャグテイスト、キャラ崩壊があるかもしれないから注意してね。時系列が曖昧だから本編のネタバレがある場合もあるよ」
どこかに向かいお決まりのセリフをい言った後、死神は応接間に座るいつもの面々、具体的に言うと、ネクラ・虚無・柴・カトレアに向かって笑顔で言った。
「いつもの如く。現世の食べ物の味を知ろう!って事で今回のテーマはピザだよ!」
「いきなりッスね。でも俺、ピザ好きッス!」
「柴くんは何でも好きなんだね」
はしゃぐ柴をネクラが尻尾を振る子犬を見る様な視線で見つめると、柴は眩しい笑顔で返答する。
「はいッス!生前から食べる事は好きでした」
「そうだと思った。毎回すごく楽しそうだし」
ネクラが毎度楽しそうに食の話をし、実食の際はどれもおいしそうに残さず食べる姿は食が好きでないとできないものだ。
柴がものを食べる姿は見ていて気持ちがいいし、もう食べる必要がない体とは言え、おいしく食べると言う行動は見習わなければとネクラは思った。
「はあ……最近こんなのばっかりで集められるんだもの。うんざりだわ」
ここ最近、現世の食に興味がある様子のカトレアだったが、それでわざわざ呼び出されるのは未だに納得がいかない様だ。
この度も眉間に皺を寄せて吹きガンオーラ丸出しで座り、不満を口にしている。こんなに毎回眉間に皺を寄せては整った顔にその形が残るのではないのかとネクラは心配した。
「でも、カトレアさんは最近、現世でバイトを始めたんスよ。そのお金でたまにハンバーガーとか買ってくれる様になったッス」
「ちょ、柴くん!?それは言わない約束よ」
柴が気分よく言い、カトレアが動揺し、死神が良い事を聞いたと言う反応を見せ、にやにやと笑っていた。
「へぇ、君もついに現世の食べものに魅了されたか」
「ち、違うわ。毎回あんたにおごられるのが癪だからよ」
死神がにやけながら意地悪な言い方をし、カトレアがそれを明らかな動揺を見せながら否定する。
「はいはい。わかったから、だったら今回は俺と君のふたりでピザの料金を払う事にしようよ。その方がたくさんの種類のピザが買えるし」
「……まあ、いいわ。今までごちそうになったのは事実だから。今回は承諾しましょう」
「よぅし!交渉成立」
死神が気分良くカトレアに手を差し出し、彼女がその手を取る。
死神2人の間で謎の交渉が成立したのを見ながら、ネクラは柴に小声で疑問に思った聞いた。
「ね、柴くん。カトレアさんって何のバイトをしてるの」
「小さいモデル事務所のメイクさんらしいッス。カトレアさんは現世のファッションやメイクに興味があるみたいッスから。センスはあるみたいでそれなりに評価は高いみたいッスよ」
「へぇ……すごいなぁ」
カトレアならモデルでも十分に通用すると思うが、生者ではない存在が現世で目立ったり、深い関りを持ってはいけないと死神が言っていたので、彼女も華やかな表舞台ではなく、裏方の仕事を選んでいるのだろうとネクラは思った。
「はい、色々決まったとこで、本題。まずは好きなピザを教えてね。さっきから黙っている虚無くんから」
死神は完全に気配を消していた虚無を指さして言った。今回もできる事なら気配を消してやり過ごしたかったと思っていたであろう虚無は渋々と口を開く。
「俺は甘い系になるが、ハニーバターが好きだ」
「ピザにはスイーツ系もあるの?すごい!クレープと同じだ」
死神が瞳を丸くしながらも楽しそうに言い、ハニーバターを食べた事があるのか、柴も虚無の言葉に反応する。
「具がのってないのにあんなにおいしいのは卑怯ッスよね。ピザ生地にじわっとバターとはちみつが染みて甘くてとろとろで幸せの味ッス」
「パンケーキやクレープとはまた違った味わいがしそうだね」
ネクラが言うと柴がキョトンとして首を傾げる。
「ん、ネクラ先輩はもしかしてハニーバター、食べた事ないんスか」
そう言われたネクラは気まずそうな顔で苦笑いをした。
「んー。ピザ自体をあんまり食べた事ないかなぁ」
「ああ、友達がいないからそう言うの食べる機会が少なかったんだね」
死神がへらりとしながら横槍を入れて来たため、ネクラは死神をキッと睨みつけて頬を膨らませながら言う。
「そうなんですけど、わざわざそんな事言わなくていいです!でも、クリスマスとかには家族で頼んでいましたよ。その時は定番のマルゲリータにしてました」
「マルゲリータって、イタリア王妃の?」
皆の話を黙って聞いていたカトレアが反応する。その言葉にネクラは驚いて瞳を丸くする。
「カトレアさん、マルゲリータ王妃をご存じなんですか」
「ええ、まあね。死神なんてやってると人間の歴史には割と詳しくなるものよ。でも、どうして食べ物に王妃の名前が付いているの」
カトレアが小首を傾げて質問したので、ネクラは自分知っている知識をカトレアに説明する。
「確か、そのマルゲリータ王妃をお迎えるために作られた料理だって聞いた事があります。イタリアの国旗に似ている事から、王妃様が大層に気に入って自分の名前を付けたとかなんとか」
「へぇ。気に入っただけで自分の名前を付けるなんて、人間って変な趣味をしているのね」
「諸説あるとは思いますが、一般的にはそう言われているのだと思います」
カトレアはふーん。と頷いた後、それなりにピザに興味があるのか柴に視線を移して聞いた。
「柴くんはどんな味のピザが好きなの?」
「俺、焼き鳥がのってるピザが好きッス!炭火で焼いた鶏肉と醤油とマヨとチーズのハーモニーがたまらないッス。焼き鳥がボロボロ落ちてちょっと食べにくいッスけど」
焼き鳥ピザを想像しながらしばらくうっとりとしていた柴だったが、ふと思ったのか死神に質問を投げかける。
「俺たち、ピザってどうやって注文するんスか。デリバリーは無理っスよね場所的に」
「あ、それは私も思いました」
安易な考えかもしれないが、ピザと言えばデリバリーの今イメージが強い。
しかし、現世ではないこの場所でそれを利用する事は出来ない。どうやってピザを注文するのか、ネクラが疑問に思っていると死神が意気揚々と言った。
「やっぱり行くならお店が良いでしょ。この前、現世でピザが安くておいしく食べられる店を見つけたんだ」
「死神さんの情報収集能力ってえげつないですね」
「その前にどうやって現世で遊ぶ時間を設けているんだ」
ネクラと死神が疑惑の視線を送るが、そんな2人にはお構いなしに死神は元気よく言った。
「しかも今回はカトレアも半分出してくれるんだし、いっぱい食べようね」
「あなたの中に遠慮と言う言葉が存在しないのかしら」
「いいじゃん。現世の財産なんてこう言う時にしか使い道ないし」
「そうだけど、そうい意味で言ってるんじゃないのだけれど、はあ……もう、好きにすれば」
カトレアが諦めた様に溜息をつき、皆で死神が見つけた現世のピザ屋へと赴く事になった。
お店は突如来店した細身の5人組によって、開店以来の大盛況で職人もピザ窯もフル稼働。
あまりの注文量に、5人が帰る際に次回来店の際は予約をしてくれと頼んだのだとか。
~おまけ~ それぞれの食レポ~
ネクラ
好みのピザ生地 : ナポリ風( 柔らかくて生地のふちが厚いもの)
ベストワン : マルゲリータ
「やっぱり食べなれた味が一番いいな。チーズにトマトはもちろんだけど、バジルの爽やかさが好き。モッツァレラチーズも濃厚でもちもちで大好き。シンプルな材料でこれだけおいしいんだもん。イタリア王妃様が気に入る理由が凄くわかるよ」
虚無
好みのピザ生地 : ローマ風(生地が薄くてパリパリしたもの)
ベストワン : チョコマシュマロピザ
「プラックチョコとミルクチョコを半分づつ使った上にマシュマロをピザ生地全体に敷き詰めた姿は見た目も美しいし、甘い匂いも食欲をそそる。熱で溶けたマシュマロがチーズの様に伸びる姿は圧巻だ。新たなデザートピザと出会えたぞ」
死神
好みのピザ生地 : ローマ風(生地が薄くてパリパリしたもの)
ベストワン : ビスマルク
「半熟卵やばーい。うまーい!卵とチーズ、生ハムと良い相性だ。黒コショウのアクセントもいいね。とっても濃厚!でも、人間はどうして食べ物に人間の名前を付けたがるのかな。ビスマルクってあの鉄血宰相の事でしょ?」
カトレア
好みのピザ生地 : シチリア風(表面がカリカリで中がふわふわのもの)
ベストワン : ペスカトーレ
「魚介類っておいしいわね。ちょっと見た目がおぞましいのもあるけど、食感がしっかりとしていて魚介自体にもうまみがある。このムール貝って言うのが気に入ったわ。ブラックオリーブと言うのも香が良くておいしさを引き立てているわね」
柴
好みのピザ生地 : ピザの耳まで具が入っているもの
ベストワン : 焼肉ピザ
「俺のお気に入りはやっぱ肉っすねぇ。サラミやソーセージも好きッスけど、ガツンと肉を食べたい俺はピザ好きに邪道と言われようがこの焼肉ピザを推すッス。甘辛いタレとチーズが混ざって柔らかい肉を包み込む……はぁ。最高ッス。白飯と一緒に肉を食べるよりもハマりそう……」