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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
番外編 : 死神のもっと知りたい!人間たちの食べものたち
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【番外編】死神のもっと知りたい!人間界の食べ物たち ⑥ ケーキ

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。

番外編その⑥です。番外編も長くなってきましたね……。

あとよく見たら文章も本編と差異がない(汗)これを書いていた時はさぞタイピングが進んだのでしょうね。その時の自分カムバック。

本日もどうぞよろしくお願いいたします。

「あてんしょん!このお話は限りなく本編に近いIFの話だよ。ツッコミどころ、ギャグテイスト、キャラ崩壊があるかもしれないから注意してね。時系列が曖昧だから本編のネタバレがある場合もあるよ」

「自己責任でお願いするッス!」


 死神の注意喚起の後に柴がひょっこりと現れて笑顔で言う。


「柴くん!?なんでいるの」


 ネクラが瞳を丸くして驚くと柴はいたずらっ子の様に楽しげに笑って言った。


「えへへ。最近先輩たち何かおいしそうなもの食べてる事が多いので、仕事がない時や早めに片付いた時には遊びに来るようにしたんスよ」

「な、なるほど……。でも、カトレアさんに頼めば現世の食べ物ぐらいもらえるんじゃないの」


 納得しつつも疑問を覚えたネクラが首を傾げるも、柴は溜息をついて肩をすくめ、首を左右に振って残念そうに言った。


「カトレアさんは現世の食べ物に興味が出て来たみたいッスけど、現世でものを買うにはお金が必要でしょう。そっちの死神さんと違ってカトレアさんは現世で働いて稼いでいるワケじゃないッスから。残念ながら今のところは叶わぬ夢ッス」


 また溜息をつく柴に死神は不満そうな表情で言った。


「でも、君は俺の部下じゃないしなぁ。おごるのは気が引けるよ。鍋の時は無料券があったからごちそうしたけど」

「そんなこと言わずにお願いしますよ。あ、そうだ!今回のテーマはケーキとかどうッスか。それならいい店を紹介できるッスよ」


 柴が子犬の様に死神に縋りついて懇願をする。


「ケーキねぇ……」


 死神に柴の子犬攻撃が効いたとは到底思えないが、テーマには興味を持ったのだろう。暫く考える素振りを見せた死神はうん。と頷いて柴に向き直る。


「それなら種類も多そうだし、面白そうだね。今回のテーマはそれにしよう。俺が君の紹介するケーキに興味が持てたら、今回もおごってあげる」

「本当ッスか!?やった。はりきって紹介しちゃうッスよっ」


 柴が両手を挙げて喜び、3人は恐らく柴が待っているであろう応接間へと向かった。

 そこにはやはり既に虚無が座っており、無表情且つ不機嫌なオーラを放って座っていた。その正面には何故かカトレアも座っている。


「カトレアさん、なにやってるんスか」


 柴はカトレアがいる事を知らなかったらしく、驚いて彼女を見つめていた。その言葉を聞いたカトレアの眉間にギュッと皺が寄る。


「柴くんを探しに来たに決まっているでしょう。仕事が終わったと思ったら『ネクラ先輩のところに行って来るッス~』とか言って走って行っちゃったから驚いたわ」


 カトレアの姿をみた死神が心底嫌な表情で言う。


「うわ。このパターンはまた君にもおごらないとダメなやつじゃん」

「なんの話よ」


 死神の迷惑そうな声にカトレアが言葉を尖らせながら睨む。

 そして、お決まり通りの席に座り、死神が先ほど決まったばかりのテーマを発表する。


「今回は柴くんの発案。ケーキについて語ってもらうよ」

「ケーキ……」


 先ほどまで微動だにしなかった虚無が反応を見せる。どうやら甘いものが好きな彼にとってはとても興味深いテーマである様だった。


「柴くん発案だよ。まずはいつもの通り、皆が好きなケーキを教えて欲しいな」


 死神が言うやいなや、柴がぴょんぴょんと跳ねながら元気よく手を挙げた。


「はいはーい!俺から行くッス!」

「はい、じゃあ柴くん。よろしくね」


 死神が柴を指名し、柴は咳ばらいをしてから言った。


「俺は『うざぎしゃんのしっぽ』っていうケーキ屋の白いシュークリームが好きッス!」

「……そんな店、聞いた事がないが」


 興味があるのか虚無が食い気味且つ前のめりで柴に言うと、柴はにっこりと笑う。


「生前の俺の家の近所にあった個人が開いてる小さなケーキ屋なんスよ。当時30代ぐらいの綺麗なお姉さんが作っていたッス」

「白いシュークリームってなぁに?」


 自分が聞いた事のない単語にネクラが瞳を輝かせて柴を見る。隣に座る虚無も珍しく瞳を開けてそわそわとしている。

 2人の期待に満ちた視線を受け、柴は得意げに言った。


「その名通り、生地が真っ白なシュークリームッス。お店の名前にもなってる『うさぎのしっぽ』をイメージしたとか。多分、生地にクリームチーズが練り込まれていたはずッス」

「なるほど。生地はサクサク系と言うよりはしっとり系か」


 虚無が積極的に話題に入り、柴が頷く。


「はいッス。多分、チーズを使っている分、生地がしっとりしていて、どちらかと言えばパンに近いかもしれません」


 白いシュークリームの話を聞いた死神が興味深そうに言う。


「シュークリームいいねぇ。前に職場で食べた時に興味を持ったんだ。おいしそうだね」

「じゃ、今回もおごって頂けるッスか!?」


 死神が自分の話に興味を持ってくれたことに喜びと期待を感じた柴が死神に詰め寄る。そのあまりの距離の近さに、死神が珍しく一瞬たじろいだが、直ぐに笑顔になり快く返答した。


「うん。君の話、すごく興味を持てた。約束通り、今回もおごってあげる」

「やった!ありがとうございます」


 柴が飛び跳ねて喜び、そして丁寧に頭を下げた。

 と言うか、もうテーマのものを皆で食べると言う事が前提になりつつあった。


「カトレアは期待できないし、ネクラちゃんと虚無くんは何かある?おすすめの店のものでも、単純に好きなケーキの種類でもいいよ」

「はぁ!?」


 期待できないと言われたカトレアが眉間に皺を寄せ、言い返そうと身構えた彼女を柴が宥める。


「まあまあ。カトレアさん、ネクラ先輩たちの話を聞きましょうよ。先輩は何のケーキが好きッスか」


 死神と柴に話を振られたネクラは少しの間考えて、そして生前自分が好んで食べていたものを言う事にした。


「私はタルト系が好きだから、いちごタルトかな。近くのカフェにあるものが一番おいしかった。いちごとタルト生地の間にカスタードクリームが塗ってあるの」

「タルト、俺も好きッス!サクサクした食感とスポンジケーキにはない香ばしさが魅力っすよね」


 柴が同意し、ネクラは嬉しそうにそれに答える。


「そうなの。でも、食べるときバラバラになるから家族以外の前では食べにくいんだよね」

「ああ、なんか皿の上でぐちゃってなりますよね」


 タルトがバラバラになり汚らしく見えるため、人前では食べにくい思いをしたもの同士で頭を悩ませていると、虚無が淡々と言った。


「フォークの差し方が下手なんだよ。タルトは一度縦にフォークを刺してから横に倒して切る様にするとバラバラになりにくいぞ」

「そうなの!?そう言えば私、最初から横にフォークを刺してたような気がする」

「俺もッス。そんでソッコーでバラバラの大惨事に……」


 虚無のアドバイスにネクラと柴は瞳を丸くして驚き、過去の自分の食べ方を思い出して自己嫌悪の様な感覚に陥っていた。


 柴は尊敬の眼差しで虚無を見る。


「詳しいんスね。虚無先輩……。さすがスイーツ死神(見習い)」

「……なんだそのふざけた称号は」


 柴が勝手に作りあげた称号に柴が冷静にツッコミを入れる。そんな2人のやり取りをネクラが眺めていると、死神はまたメモをしていた。


「死神さん、またメモですか。ってかまた買い出しに行くおつもりで?」


 死神は働いているとは言えど、本人曰く『お遊び程度』だ。普通のサラリーマンと比較すれば給料は圧倒的に少ないはずだ。

 ここ最近毎回死神のおごりで皆で外食に行ったり、食べ物を買ってきたりする事が多いが、そんなお金がどこにあるのか。貯金でもしているのだろうか。


 まさか、あの芸能事務所でのバイト以外でも何か働き口があるのか。そんな疑問がネクラに沸き起こり、悶々としていると色々と察した死神はチケットを差し出した。

 ネクラはそのチケットに書かれている事を口にする。


「ケーキバイキングクーポン券?」

「そう。それを持って行けばお金はいらないんだよね。鍋の時と同じ。バイト先でもらったの。芸能関係でバイトしてると、こう言うのが貰えるんだもん。お得だよねぇ」

「全ての芸能界で貰えるわけではないと思いますよ。あの芸能事務所の系列とかじゃないですか」


 そう言ってネクラはチケットの裏を確認する。そこには制限時間1時間30分・5名様までと書かれており、死神は最初から皆で行くつもりだったのだなと思った。

 そんなネクラの心情を知ってか死神はしれっと補足した。


「バイキングって、色んな種類のものが食べられるわけでしょ。メモをしているのは自分用。どんなものがあるか、あらかじめ把握したくて」


 そして小声で『柴くんの紹介してくれたシュークリームは後日、買いに行こうかな』と呟いていた。


「この前の鍋の時もそうだけど、人間って儲けたいわりには食べ放題とか言って安く提供したり、こんな券配ったりしているわよね。矛盾してない?」


 ネクラが手に持つ券を見ながらカトレアが呆れた様に言ったので、現世で生きていたネクラは念のためフォローを入れた。


「一応、企業側がきちんと努力をした上での提供価格やサービスですから。儲けたいと言う気持ちもあるかとは思いますが、お客様により良いサービスを提供したいと言うお店の方が多いのではないでしょうか」


 あと、一般の人間はそんなに量を食べないのでバイキングをしても割かし店側は損をしない様になっている場合が多いと聞く。

 たまに大食いの方たちもいるが、その存在以上に自分たちが食べ過ぎなのだと心の中で思った。


 そんなやり取りをしていると死神がふと気がついた様に言う。


「あ。一番肝心な人の意見を聞いてなかった。虚無のおすすめは何?」


 未だスイーツ死神(見習い)がどうのだと柴とやり取りをしている虚無に死神が声をかける。

 すると虚無の動きがピタリと止まり、突然黙り込む。阿賀に手を当て、眉間に皺を寄せてとても真剣に、そして迷いながら一所懸命に考えていた。


 虚無が黙り込んでから数十分。あまりに長い静寂だっため、ネクラと柴があやとりを始め、死神がメモの内容ををまとめだし、カトレアが自分の爪をいじり始めた時、ようやく虚無の口から言葉が紡がれた。


「一番と言うわけではないが、ガトーショコラだな」

「私も食べたことあるよ。しっとりしてておいしいよね」


 ネクラが同意すると虚無は激しく首を縦に振る。

 

「そうなんだ。チョコが割とずっしりなはずなのに、しつこい甘さがなく口当たりも良いからチョコを満足に味わえると俺は思っている」

「確かに、スポンジケーキとは違う食感ッスよね。甘いけどしつこくないから、チョコが苦手って人以外は食べやすそうなイメージがあるッス」


 柴が言い、虚無はまた首を縦に振った。

 死神がそれをメモに取り、そして書き終えてメモをしまいながら言った。


「よし!ある程度ケーキの種類を知れたし、ケーキバイキングにレッツゴー」

「おー!!」


 笑顔で拳を突き上げる死神にネクラと柴が同じく笑顔で拳を上げて、虚無とカトレアは何もしなかった。が、虚無は少しそわそわしていた。


 そして、とあるケーキバイキングで新たなケーキがストックされる度に取り、数百種類は並べてあるケーキを全種制覇する細身の男女4人組の姿が見かけられたとか。

 おかげでその日無駄になった(残って廃棄された)ケーキは1つもなかったそうな。


 さらに後日、死神が柴が紹介した白いシュークリームをいつの間にか買ってきて皆に配り、さらに幸せ気分が持続しましたとさ。


~おまけ~ それぞれの食レポ~


ネクラ


 好きなケーキの種類 : タルト系

 ベストワン : フルーツタルト 


「やっぱりタルトが一番かな。サクサクだし、たくさんの果物が味わえるし、シロップで味付けしてある果物は酸味と甘さが良いバランスだよ。ここのタルトもカスタードクリームが入っていて、私好みで嬉しかった」


虚無


 好きなケーキの種類 : ケーキ全般

 ベストワン : 全てオンリーワン


「甘いものもそうでないものも、それぞれのケーキとしての役割を果たしている。特にゼリーケーキと言うものは初めて食べたが中々の作品だった。食べる前は普通のゼリーと変わらないと思っていたが、そんな事はなかった。フルーツの味を最大限に活かした満足で贅沢なものだった」



死神


 好きなケーキの種類 : 以前職場で食べてからはシュークリームがお気に入り

 ベストワン : ダブルクリームのシュークリーム


「しっとり生地のシューもおいしいけど、俺はカリカリしてるシューが好きかな。だって食感も楽しいし、香ばしさがいいんだよねぇ。しかもこれはカスタードと生クリームが両方入っているボリューミーなものだし大満足。上にかかってる白い砂糖も、クリームがない部分を上手にカバーしているね」


カトレア


 好きなケーキの種類 : 現世の食べ物を知らないので特になし

 ベストワン : レアチーズケーキ(ブルーベリーソース付き)


「ここ最近、現世の食べ物を食べて分かったのだけど、私は甘い味は好みではないかもしれないわ。もちろん、まずいとは思わないけど。でも、このレアチーズケーキって言うのは好きよ。口当たりもいいし、しっとりしていて甘すぎず私好みね。ブリーベリーの紫がとても優雅で美しいわ」



 好きなケーキの種類 : パイ生地を使っているもの

 ベストワン : アップルパイ


「ここのアップルパイはリンゴをはちみつとシナモンシュガーで味付けしてるみたいッス。シナモンの味が強めでパンチがあるからこれは大人向けの味かもしれねぇッスね。でも俺は好き!焼きリンゴはの甘味が独特で最高ッス。あと、パイ生地独特のサクサク食感はハズせないッス」

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