【番外編】死神のもっと知りたい!人間界の食べ物たち ④ インスタント麺
この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。
番外編その④です。
12月は忙しいから嫌いです(泣)なんでこんなに祭事が連続しているのでしょうか。体がいくつあってもたりません。
でも私はあきらめない。仕事も家事も小説を書く事もゲームも!(強欲)
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「あてんしょん!このお話は限りなく本編に近いIFの話だよ。ツッコミどころや、ギャグテイスト、キャラ崩壊があるかもしれないからご了承下さい。時系列が曖昧だから本編のネタバレがあるかもだよ。その場合自己責任でよろしくねっ」
「もうそれ言わなくていいんじゃないですか」
毎度お馴染み、どこかへ向かって妙な事を言う死神にネクラが言うと死神は人差し指を左右に振りながら言う。
「チッチッチッ。わかってないな。どこから読まれるかわからないから注意書きは必要なんだよ」
「はあ……。そうですか」
ネクラはとりあえず納得しておいた。どうせいつものアレだろうと死神に促されるよりも前に応接間へと向かうとやはり虚無が先に腰かけていた。
やっぱりそうだなとネクラが虚無の隣に腰を掛けると、死神も1人用の椅子に腰かけて上機嫌に言った。
「早速だけど、今回俺が知りたい食べ物を発表するよ」
「本当に早速ですね」
ネクラのツッコミなど無視をして死神は口でドラムロールを鳴らしていた。今日の死神はどこかテンションがおかしいとネクラは思った。
「ジャン!本日のテーマはインスタント麺だよー」
「あっ、それ私あんまり食べた事ないからわからないかもです」
テーマの発表と同時にネクラがやや食い気味で話の腰を折る。死神は突如テンションを下げてネクラにジトリとした視線を送る。
「俺が機嫌よく話しているのになぁーんでそんな事いうかなぁ。生前に1回ぐらいは食べた事あるでしょ」
「ま、まあ……そうですね。数回は」
死神の圧に押されネクラは顔を引きつらせながら答える。
「じゃあそれを言えばいいでしょ。経験がゼロじゃないクセに話の腰を折らない」
「うう、すみません」
謝るべきか悩んだが、後々面倒な事になるよりはマシだとネクラは死神に謝罪の言葉を述べた。
「わかればいいんだよ」
死神の機嫌が戻ったところでネクラは死神に聞く。
「それにしても、今までと傾向が違いますね。インスタント麺なんてどこで知ったんですか」
今まではお好み焼きやクレープと言ったインスタントの商品はあれど「作る食べ物」傾向が多かったが今回はもとより「インスタント」である事が不思議だった。
「インスタント麺の存在は職場で知ったんだよ。老若男女、お昼はそれで賄う人が多いから、前々から気になってはいたんだよね」
「生麺じゃなくてインスタントで良いんですね」
一応ネクラが確認すると死神は大きく頷いた。
「もちろんだとも。どこにでも売っているし、今までも仕事の合間に買おうと思えば買えたんだけど、種類が多くてわかんなくなってさ。だから教えて」
死神が笑顔で詰め寄って来たが、インスタント麺を食べた経験が少ないネクラは即座に思いつかず、回答に悩む。
しかし、死神が期待の視線を向ける事をやめてくれないので考えに考えた結果、何とか1つの選択肢を絞り出した。
「マグカップに入れて食べるラーメンは好きでしたね。キャラクターの形の薄いかまぼこ?みたいなのがある商品が特に好きでした」
「へぇ。俺の周りは使い捨てのカップの人間が多いど、そう言うのもあるんだ」
死神はマグカップに入れるタイプのものしか見た事がなかったのか、意外そうに瞳を丸くした。
「マグカップだけじゃなく、普通にどんぶりで作るものもありますよ。死神さんの周りはお忙しい方が多いので、カップ麵の方が多かったんでしょう。食べてさっと行動がしたんだと思います。洗い物も出ないですし」
「俺も袋麺は家庭で食べるイメージだな」
珍しく虚無がスイーツ以外で自分から話に入って来たため、ネクラは驚いた。
「虚無くんはインスタント麺はよく食べたの?」
「ああ。中学になるまでは料理の経験はそんなになかったからな。親が仕事で遅い日はほぼインスタント麺だ」
死神も興味深そうに虚無に質問をする・
「へぇ。その時はどんなものを作ったの?」
「少しでも腹を膨らませたからな。常備してあるカット野菜ともやし、あとはハムを乗せて食べていた。味は醤油だな」
「インスタント麺の定番は醤油ベースのイメージがあるよねぇ」
うんうん。とネクラが頷く。ふとと死神の方を見ると、何やら腑に落ちないと言った表情の死神の姿が見えた。
「どうしたんですか。死神さん。なにかご不明な点でも」
不思議そうに自分を覗き込むネクラに死神が何か考える様に言った。
「ああ、うん。興味を2人が言っているものと、俺が持ったものが違う様な気がして。醤油の匂いではなかった様な気がするんだよね」
「そうなんですね。匂いが特徴的なんですか」
ネクラが聞くと死神はそのにおいを思い出しながらうっとりとして言った。
「そう。その人がフタを開けた瞬間、とてもいい匂いがそこら中にあふれるんだよ。俺の他にもその匂いを嗅いでうらやましそうに見てる人とかもいるもん。繊細なにおいと言うよりも、もっとこう……ジャンキーなやつ」
いい匂いでジャンキー、その言葉を聞いたネクラと虚無は同時にひらめいた。そして頷いた後、ネクラが言う。
「それ焼きそばですよ。あの鼻孔くすぐって空腹を呼び起こすソースの匂いは多くの人の心をくすぐります」
「粉末ソースを入れて混ぜた途端のあの匂いだからな。食べている事がバレバレだ」
「ああ、焼きそばかぁ。確かにソースの匂いだね。でも普通の焼きそばのソースとは違った匂いだよね」
2人の意見を聞いた死神が納得すると2人は突如テンションを下げて言った。
「あ、なんか食べたくなってきちゃった」
「俺も……」
死神ネクラと虚無は食べられない事にしょんぼりしながらも、その匂いと味を思い出し、うっとりとしていると、死神がにんまりと笑って黒マントから大量のビニール袋を取り出した。
「……って事で、じゃーん!大量のカップ麺!これ、皆で食べよう!片っ端から買って来たから、多分焼きそばもあるよ」
「わ、すごい。袋の中が全部インスタント麺だ」
「こんなに大量なインスタント麺、いつの間に買ったんですか」
死神から渡された袋を覗き込みながらネクラと虚無が言うと死神はどこからかポットを出しながら楽しそうに言った。
「いつかったかは気にしなくていいの。たくさん買っても独り占めは良くないと思うし、なにより皆で食べた方が楽しいでしょ。さ、好きなの取っていいよ。お湯はわかしてあるから」
手にシュンシュンと音を鳴らすポットを掲げながら死神が微笑み、ネクラは両手を挙げて喜び、虚無は丁寧に頭を下げた。
「わーい!ありがとうございます」
「ありがとうございます」
それぞれが好きな麺を選び、出来上がりまで待っていた時、部屋の扉が開かれた。
「ちわーッス!遊びに来……なんスか、この懐かしくていい匂いは。ハッ!なんか食ってる!インスタント麺じゃないスか!」
「柴くんがどうしても来たいって言うから仕事終わりに来たみたら……何をしているの」
柴が羨望の眼差しでインスタント麺を待つネクラたちを眺め、カトレアが呆れた眼差しを送る。
「何ってインスタント麺祭り」
死神が怪訝な顔を続けるカトレアに微笑んで言うと、カトレアは眉間の皺を深くした。対して隣に立つ柴は今にもよだれが出そうな表情でこちらを見つめ続けている。
その姿をみたネクラがインスタント麺が入っていた袋を掲げながら言った。
「柴くんも食べる?あ、良ければカトレアさんも」
「え!いいんスかっ!」
柴が嬉しそうに瞳を輝かせる。元々犬っぽいところがあるせいなのか、犬の尾が彼の尻辺りで嬉しさを表しながら、ちぎれんばかりに振られている幻覚が見えた。
食べていいのかと聞かれたネクラは、念のためこのインスタント麺たちを買って来た死神に視線で確認する。
その視線を受けた死神は一瞬なんの視線かとキョトンとして、それからその意味に気が付いて、にっこりと笑った。
「いいよ。皆で食べよう。好きなのを取りなよ」
快い返事を貰った柴は即座にインスタント麺を囲むネクラたちのところへと飛んで行き、嬉しそうに袋の中を覗き込む。
「君はいらないのか」
不機嫌に佇むカトレアに死神が袋からい1つ取り出して進める様に聞くと、カトレアはソッポを向いた。
「いらない。興味もないわ」
「そ、あっ。俺のやつ時間来た!」
死神がいつの間にか勝手に増設したシンクで水を切り、フタを開け、粉末ソースを入れる。どうやら死神は焼きそばにした様だった。
辺り一面にソースの匂いが立ち込めた時、カトレアが反応を示す。インスタント焼きそばの独特の匂いの魔力はカトレアにも効果的な様だ。
一瞬だがこちらに視線を向けたカトレアに死神がもう一度言う。
「一緒に食べてもいいんだよ?」
「そうッスよ。カトレアさん。食べましょう」
柴が容器にお湯を注ぎながら笑顔で言い、虚無や死神の麺をすする音と匂いに負けたカトレアはヤケクソ気味に言った。
「もう、負けよ負け!せっかくだし、いただくわ。おすすめを教えて」
そうしてカトレアも席に着き、現世で生きていた3人を中心におすすめインスタント麺の発表会とプチパーティーが始まった。
後に残ったのは大量のインスタント麺のカップや袋たち。もちろん、皆が責任を持って
捨てましたとさ。
~おまけ~ それぞれの食レポ~
ネクラ
麺の待ち時間 : 全ての麺はやわらかめが好み。指定時間より若干長く待つ。
好きな麺の種類 : うどん
ベストワン : カップきつねうどん(大判おあげ入り)
「インスタントのおあげは市販のものより甘味が少ないけど、最近のものはインスタントとは思えないぐらいにふっくらしているし、箸で押すとじゅわっとおあげが汁を吸っておいしんだよね。うどんもつるつる。個人的には生麵とあんまり変わらないと思う」
虚無
麺の待ち時間 : 指定時間きっかり
好きな麺の種類 : ラーメン
ベストワン : カップ麺のカレー味
「カレーはソースと同じぐらい匂いにつられてしまう気がする。もう空腹など感じないはずだが、やはりカレーの匂いはいいな。少し味が濃くてスパイシーなのもカップならではでだな。あと、柴の牛乳を入れるとうまいと言う言葉に耳を疑ったが、確かにクリーミーさがプラスされていいな……見た目は人を選びそうだが」
死神
麺の待ち時間 : 麺の種類によって待ち時間が変わる(例 : うどんなら長め・ラーメンは短め)
好きな麺の種類 : 焼きそば一択!
ベストワン : やっぱり焼きそば(スタンダードが一番好きだが、冒険してチョコ味を食べたら以外にイケて驚いた)
「匂いも味も焼きそばが一番だよ。ピロピロした麺に味が濃いソースが絡んでとってもジャンクでおいしい。水切りがあまくてちょっと水っぽくなったのはご愛敬だよねぇ」
カトレア
麺の待ち時間 : インスタント麺は初体験のため記載通りの時間で待つ
好きな麺の種類 : 現世の食べ物に興味がないので特になし
ベストワン : たらこパスタ
「少し味が濃くて麺が固い気がするけど、とてもおいしいわ。このたらこパスタとか言うやつ。見た目もピンクでかわいいし。味も見た目も魅力的ね」
柴
麺の待ち時間 : 早く食べたいので1~2分
好きな麺の種類 : 麺類全般が好き
ベストワン : ビックサイズの焼きそば(ソース味とカレー味)
「どデカサイズ、夢の一気食い!生前はやってみたくても残しちゃ悪いと思ってできなかった事がついに叶って満足ッス!満腹にならないからどんなに食べてもおいしく食べられるなんて最高ッス。この背徳的な匂いと味はインスタントだからこそ出せる味ッスよねぇ。マヨネーズを足してもうまかったし、カロリーを気にしなくてもいいなんて幸せッス」