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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
番外編 : 死神のもっと知りたい!人間たちの食べものたち
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【番外編】死神のもっと知りたい!人間界の食べ物たち ➂鍋もの

この度もお読み頂いてありがとうございます。

番外編その➂です。いやぁ、番外編を書き溜めていてよかったと思います。

目標にしている毎日投稿ができているのですから……。ただ、書き溜めたものをそのまま投稿しているので、文章が本編以上に拙い気がしますが、どうかご了承下さい……。

あと、食の表現って難しいですね。どうか、ふわっと読んで下さい。

本日もどうぞよろしくお願いいたします。

※本編(六章)を作成する時間が確保できそうなので、もう少し番外編にお付き合い下さい。

「あてんしょん!このお話は限りなく本編に近いIFの話だよ。ツッコミどころや、ギャグテイスト、キャラ崩壊があるかもしれないからご了承下さい。時系列が曖昧だから本編を読んでいない場合はネタバレになる可能性もあるから自己責任でよろしく!」

「注意事項が増えましたね」


 どこかに向かって独り言を言った死神にネクラがツッコむと死神は笑顔で振り向いた。


「今後の為にね。それに意見は多い方が良いしね。登場人物的な問題だよ」

「意見は多い方がいい?登場人物?」


 ネクラが眉をひそめると、探偵事務所風の部屋の扉が勢いよく開け放たれた。


「大事な用事って何かしら」

「お邪魔しまーっす」


 唐突な呼び出しをされたのか不機嫌そうなスタイル抜群の女性の死神、カトレアとその下で死神補佐として行動を共にしている柴が元気よく笑顔で入って来た。


「虚無くんはいた?」

「え、虚無くん?」


 ネクラが目を丸くするとカトレアが開いたままの扉を見ながら言った。


「いたわよ。来るついでに拾ってこいとか言うから、その通りにしたわよ」


 カトレアの言葉の後に虚無がのっそりと現れる。その姿を見た死神は圧のある笑みを浮かべながら言った。


「ふふ。せっかく招集をかけたのに、自主トレを理由に断るなんてひどいよ。俺の言葉は絶対なの。ね、わかった?逃がさないから」


 通りで先ほどから姿が見えないと思った。恐らく、ここ最近の死神の食に関するウザ絡みが嫌で自主トレを言い訳に逃げていたのだろう。とネクラは思った。


 ずるい。ずるすぎる。とネクラが虚無に圧のある視線を送るも虚無は無表情のままだった。しかし、目線を逸らしたのでネクラの予想はだいたい当たっていると察した。


「さあ、皆。椅子に座って!皆に聞きたい事があってさ」


 死神が意気揚々と言い、応接間にてそれぞれが席に着く。ネクラと虚無はここ最近のパターンを察して少しうんざりとしながら隣り合って座り、カトレアと柴は何が始まるか見当がつかないため少し困惑しながらネクラたちの正面に座る。


 死神は自分用のデスクにある1人用の革製の椅子にどかりと勢いよく座り、さらりと話し始めた。


「君たちにも説明するね。俺、最近人間の食べ物の味を調べる事にハマってて、毎回テーマを決めてネクラちゃんと虚無くんに色々聞いてるんだ。皆で実際に食べに行ったりしてるんだよ」


 何故呼び出されたかまるで理解していないカトレアと柴に死神が意気揚々と饒舌に説明をする。

 ネクラと虚無はやっぱりその話かと内心で頭を抱えたいたが、しかし唐突妙な話を切りだされたカトレアと柴は理解できていない様で、柴はキョトンとしながら瞳を瞬かせ、カトレアは眉間の皺を一層と深くした。


「何を言っているの」


 不機嫌な感情を丸出しにしてカトレアが死神を睨むも彼は笑顔で言った。


「君のとこの柴くんにも意見が聞きたかったんだよね。だから呼び出したの」

「意見って、なんの?」


 なんとなく話の先を予測したのか、カトレアの眉間がヒクヒクと動き始め、湧き上がる怒りに耐えている子事が見て取れた。

 カトレアの不機嫌ボルテージは死神も矢っしているはずだが、彼女の心情などお構いなしに死神はキッパリと言った。


「現世の食べ物についての意見」

「しょうもない事で呼び出してんじゃないわよっ」


 カトレアの怒りが頂点に達し、立ち上がって死神に向かって叫ぶ。死神が耳を抑えてその怒鳴り声に耐える。


「まあまあ。カトレアさん。いいじゃないッスか。なんか楽しそうだし、俺は全然いいッスよ」


 柴がカトレアをなだめ、彼女は柴の方へと視線を戻し、怒りで興奮した状態で言う。


「柴くんはいいかもしれないけど、私の心情的に許せないのよ。何でそんな事で呼び出すのかしら。もっと他に呼び出す用事あるでしょう!」

「いいじゃん。この前の借りを返すと思って協力してよ」

「……!」


 死神にそう言われたカトレアの体が固まる。痛いところを突かれたと言う様に左右に視線を動かし、そして納得のいかない表情を滲ませながらもゆっくりと椅子に座り直す。


「か、仮を返すにしたって内容が稚拙すぎるわ。何よ、現世の食べ物についての意見って。もっと死神らしい仕事持って来なさいよ」


 カトレアは乱れてもいない髪の毛を何度も直すと言う若干の動揺を見せながらも、死神に対する抗議を続けていた。

 因みに、仮とは以前とある仕事で死神がカトレアの仕事を手伝った事を差している。ネクラが柴とカトレアに出会うきっかけでもあった。


「俺が君に頼る必要がある様な難しい仕事なんてそうそう来ないよ。でも、君だって長い期間借りを作っているなんて嫌だろ。これでチャラにしてあげるから黙って参加しなよ」

「うっ、そ、そう言う事なら、仕方ないわね……不本意だけど」


 死神が面倒くさそうにカトレアを諭し、カトレアは死神に借りを作っていた事が余程気がかりだったのか、渋々納得した。


「毎回テーマを決めてるんスよね。今回のテーマは何なんスか」


 カトレアが納得した事を確認し、柴が死神に話題を振る。


「ああ。まだ言ってなかったね。今回のテーマはねぇ、鍋物ものでいこうと思う。君たちの好きな鍋を教えて」

「鍋もの……」


 ネクラが呟くと正面にいる柴が瞳を輝かせ、はしゃぐ様に言った。


「鍋もの!良いッスね。生前の俺の家では寒い日は鍋って決まってましたから。懐かしいなぁ」

「現世の食べ物になんて興味を持った事がないから、私はあんたと一緒に聞き手に回るわ」


 カトレアが溜息交じりに死神に言い、死神は笑顔で頷いた。


「うん。一緒に現世の文化を学ぼう」

「あー……やっぱ納得するんじゃなかったかしら」


 飄々とする死神にカトレアは頭を抱えて呟いた。


「俺のでは石狩鍋が定番でしたね」

「ああ、北海道の郷土料理だね」


 ネクラが言うと柴が愛らしい八重歯を見せ、ニカッと笑って言った。


「はいッス!北海道出身とかじゃないんスけど、家族全員が鮭が好物だったんで。牛乳と豆乳を割って入れたり、牛乳の代りにクリームチーズとかも代用してました」

「クリームチーズ?珍しいね」

「クリームチーズだと、よりコクが出てうまいんスよ」


 石狩鍋の話でキャッキャと盛り上がるネクラと柴を見ながらカトレアが聞く。


「キョウド料理ってなぁに」

「各地域の産物を使った料理ッス、風土に合った食べ物として作られる事が多いんスね」

「ふーん。そうなの。面白いわね」


 柴が簡潔に且つわかりやすく説明し、カトレアは興味がある様でないあっさりとした相槌を返した。


「虚無先輩はどうですか。さっきから黙ってますけど」


 席について以降、無言で瞳を閉じてその場に石の様に座り続ける虚無に柴が眩しい笑顔で話しかける。

 柴の声でその場の全員の視線が虚無に集中した。 

 話を振られ、人数も多い事から黙ったままこの場をやり過ごそうとしていたのか、余計な事をと言いたげに柴を睨み、わざとらしい大きな溜息をついてから言った。


「おでんだな」

「おでん!いいよねっ。家ですると手間がかかるけど、コンビニとかで売ってるしお手軽に買えるもんね」


 シンプルに答えた虚無をフォローする様にネクラが反応する。柴もそれに乗っかる形で答える。


「俺もおでん好きッス!たまごが特に」

「私はもち巾着かな」

「……牛スジ」


 おでんの具論争に虚無がボソリと参加する。突如会話に割って入って来た虚無に驚いたネクラと柴が瞳を合わせつつも虚無の発言に同じ感想を持ち、同時に言った。


「「めっちゃ渋っ」」


 しかし虚無は反論する事無くふいっと視線を反らし、また黙り込んだ。


「ネクラ先輩はどんな鍋が好きなんスか」

「え、私は……パッと思いつくのはすき焼きかなぁ」


 柴に聞かれ、ネクラは迷いながら答える。その言葉を聞いた柴がテンションが上がった様子で答える。


「あー!すき焼きがありましたね。先輩って豪勢なものがお好きなんですね」

「え!いやいや。お店のとかじゃなくてお安いお肉で具もシンプルに作る家庭用のやつだから」


 変な勘違いをされていると感じたネクラは手を勢いよく左右に振って柴の想像を否定した。

 慌てるネクラを見た柴が悪戯っぽく笑う。


「わかってるッスよ。俺もすき焼きはおうち派です。肉がナンバーワンッスけど、甘い味が染みたしらたきも好きッス」

「じ、冗談だったの!?柴くんも時々私で遊ぶよね」


 遊ばれていた事に気が付いたネクラは頬を膨らませながら柴を見つつも自分も好きな具を答える。


「私はお肉よりも野菜かなぁ。ネギが特に好き。シャキシャキなのもいいけど、煮込まれたトロッとしてるのもおいしいよね。虚無くんは?」

「シイタケだな。甘辛いたれを卵につけるあの感じが普通に食べるのよりいい」


 虚無は素直に答えた。相変わらず聞けば答えてくれるのだなとネクラは思った。


「へえ。私は人間の食べものは食べた事がないけど、その鍋?って言うのはそんなに種類があるのね。しかも具の好みまで変わるなんて面白い食べ物なのね」


 現世で生きていた3人の話を聞いて興味が出て来たのか、カトレアは先ほどの相槌を打った時とは違い、関心を持った様子で言った。


「おっ、君も興味が出て来た?よし、じゃあみんなでここに行こう」


 カトレアが鍋の話に興味を持ったタイミングで死神は黒マントから何かを取り出した。


「なんですか。それ……鍋タワー食べ放題券?」


 ネクラが死神が手に持っている紙に書かれている内容を読む。その場の全員にはてなマークが浮かんでいたが、死神は意気揚々と言った。


「仕事先でもらったんだよねぇ。最近できた全部の階が鍋の専門店の建物。建築記念で期間中にこれを持って行けば5名様まで無料と言う出血大サービスぶり!1日中全部の階で使えるよ」

「現世に行くって事?嫌よ面倒くさい」


 鍋に興味を持っていたカトレアだが実際に食べたみたいとまでは思っていなかったらしく、断ろうとしていたが柴がそれを引き止める。


「いいじゃないッスか。俺、久々に鍋が食べたいッス。ってか霊体でも食べられるってどうして教えてくれなかったんスかぁ」

「別に食べなくたっていい体なんだから、言わなくてもいいかなって」


 柴の抗議にカトレアがけろりと答え、そして死神が言う。


「いいじゃん。部下のお願いを聞いてあげるのも上司の務めだろ。それに、鍋は大人数で食べた方がうまいんだよ」


 その言葉を聞いたカトレア自分を捨てられた子犬の様な瞳で見つめて来る柴を見た後、脱力し、観念した様に言った。


「わかったわよ。付き合ってあげる。でも、これで本当に貸し借りなしよ」

「じゃ、決まりだね」


 渋々と言った態度のカトレアに死神は笑顔で言った。


「やった!久々の鍋ッス!」


 仕事以外で現世行きが決定し、柴は飛び跳ねて喜んだ。



 その後、現世にて細身の5人組が鍋タワーに無料券を持って訪れ、全階数全店舗の鍋を全種平らげ、タワー中がパニックになったとか。



ネクラ

 ベストワン : やっぱりすき焼き


「いいお肉で食べるすき焼きは本当においしい。と言うか高いお肉のすき焼きは人生初でした!野菜も全て新鮮で臭みもなく最高です。甘辛い出汁も濃すぎず、胸焼けしない優しい甘さでとろみが合って濃厚な卵との相性は抜群」


虚無

 ベストワン : 海鮮鍋


「やはり海鮮は鍋にすると出汁が出てうまいな。牡蠣にタラ、魚のすり身で作ったつみれどれもいい味をしている。たくさんの海鮮からでた出汁は味も濃く、雑味もないからうどんや雑炊にせずとも出汁だけでも飲めるな」



死神

 ベストワン : キムチゲ


「キムチって辛いし、鍋にしたら辛い汁が出て喉を攻撃するかもって思っていたけど、そんな事ないね。味が染みにくい豆腐にもしっかりと味が付いてるし、意外と喉も痛くならない。寧ろ絡みこそうま味!おいしい!しかも普通の鍋よりも温まる気がするよ。この店はキムチゲの中にチーズも入れる事が出来て、辛いのが苦手な人でも気軽に食べられるんじゃないかな。〆のリゾットが本当においしかった」



カトレア

 ベストワン : 水炊き


「昆布だしで煮て、ポン酢やゴマダレに具材をつけて食べるのっていいわね。自分の好み味で食べられるもの。シンプルな味で煮込んでも十分に野菜のうまみも感じられるし、いいものを使っているのね。全てが丁寧でおいしいわ」




 ベストワン : カニしゃぶ


「肉も好きッスけど、カニは滅多にお目にかかれない代物ッスからね!こう言う時じゃないと食べる機会がないから嬉しいッス!お店秘伝の出汁にカニをくぐらせて食べるのって贅沢だなぁ。そんでカニうめぇ」

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