【番外編】死神のもっと知りたい!人間界の食べ物たち ➁クレープ
この度もお読み頂き誠にありがとうございます。
番外編その②です!
頑張って私生活のごたごたを片付けて早く本編に戻れるように頑張ります。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
「あてんしょん!このお話は限りなく本編に近いIFの話だよ。ツッコミどころや、ギャグテイスト、キャラ崩壊があるかもしれないからご了承下さいねっ」
「それ、毎回やるんですか。死神さん」
ネクラが呆れた口調で言うと、死神はネクラに向き直って当然の事の様に言った。
「当たり前だよ。解釈違いを起こさないためにも、注意書きは大事だからね」
「はあ……」
何故か気分よく話す死神をネクラはよくわからないと言った相槌を打った。
「どうでもいいから、今日の要件は何だ」
不機嫌な口調で言ったのはネクラの隣で眉間に皺を寄せて座る虚無だった。
ネクラ、虚無、死神の3人は本日もそれぞれが応接間の椅子に腰かけていた。
「前にさ、お好み焼きの味教えてくれたじゃん。あれでさ、他の食べ物の味も知りたくなって!」
死神が瞳を輝かせて言った。これはまた断れないやつだと察したネクラは否定をやめて疑問を返した。
「他の食べ物ってなんですか」
「クレープとかどうかな」
ウキウキとしながら、おしゃれな食べ物の名前を口にした死神にネクラは困惑した。
「クレープって、あの薄い生地に色々入れて巻くアレですか」
一応、ネクラが確認すると死神は笑顔をキープしたまま首を縦に振る。
「うんそうだよ。食べた事ある?」
死神がネクラと柴を交互に見ながら聞くと、ネクラが目を逸らし、虚無は相変わらず無反応で座っていた。
その様子を見て何かを悟った死神は目を丸くし、信じられないと言った様子で大げさに言った。
「あれぇ。まさか、君たちクレープ食べた事ないの」
「な、ないわけじゃないですけど……。私はお店のやつは食べた事ないです」
ネクラが否定しながらもゴニョゴニョと答えた。否定と肯定の言葉を同時に口にしたネクラに死神が不思議そうに尋ねる。
「お店以外でも食べられるもんなの?」
「私、友達がいなかったので外で買い食いの経験がないんです。かと言って1人でお店に並ぶ精神なんて持ち合わせていないので、必然的に家で作る事になってましたね」
ネクラはどこか遠いと事を眺めながら言った。しかし、死神は興味深そうにネクラに詰め寄る。
「へえ!家庭でもできるもんなんだね」
「私の家ではホットケーキミックスを使うので、プロの味が良ければお店のものが良いとは思いますが、家で作れば比較的低コストで好きな味が何枚でも食べられるのでお得だと思います」
ネクラが家庭でもクレープが作れると言うと死神はとても興味深そうに前尾めりでネクラに詰め寄った。
「安くてたくさんの味が食べられるのは興味深いね。自分で作るってのもいいな……虚無くんは?スイーツ好きでしょ」
死神は先ほどから微動だにしていない虚無に笑顔で話しかける。虚無の体が必要以上にビクリと厳密にはぎくりと体を揺らし、めずらしく動揺を見せた。
虚無がスイーツ好きと知らなかったネクラは死神の言葉を聞いて目を丸くして虚無を見た。
「え、そうなの」
スイーツ好きと言う事をあまり知られたくなかったのか、虚無は黙り込んでしまったが、その気持ちを察したネクラが言う。
「虚無くんが甘いもの好きだとお話できる事が増えて嬉しいな。虚無はクレープを食べに言った事はある?」
ネクラに微笑まれた虚無はその顔をちらりと見た後、ポツリと言った。
「……何度か並んだ事はあるが」
「虚無くんは並ぶ派なんだねぇ。かわいいー」
死神が茶化す様に言ったので、虚無は死神を無言で睨みつけたが、ネクラがそんな彼に素直で前のめりに質問する。
「いいなぁ。お店のは何だかキラキラしてて、おしゃれでおいしそうだもん。どんなのが好きだったの?」
「クリームがたくさん入っているのもいいが、ナイフとフォークで食べるタイプのものも中々うまいぞ」
「ナイフとフォーク……。虚無くんどこでクレープ食べたの……」
スイーツの話をする事は嫌いではないのか、虚無は饒舌にネクラに返した。そんな話をきいたネクラはうらやましそうに言った。
「でもクリームかぁ……。そうだよね。クリームのふわふわ感は中々家では出せないよね。ウチで作る時は市販のホイップクリームを使ってたからちょっと固めだし、味に雑味があったんだよねぇ」
ネクラがしょんぼりとしていると虚無が言った。
「家で作ると言う発想は悪くはないが、今はコンビニでもそれなりに低コストでクレープが売っていたぞ。クリームも固くないし脂っこさもない」
「コンビニ!そうだね。食べ歩くタイプのやつとは違うけど、チョコバナナクレープとか見たことあるよ」
「ああ。定番の味がコンビニで買えるのはありがたいよな」
コンビニクレープで盛り上がる2人を交互に見ながら死神がウキウキとしながら楽しそうに言った。
「うんうん。虚無くんもノッて来たみたいだねぇ。じゃあ本題に戻って、クレープにはどんな味があるのかな。さっきのチョコバナナクレープとか魅力的だねぇ」
チョコバナナクレープを想像しながら死神がうっとりとして言い、やはりスイーツの話となるとそうとう興味が湧くのか、普段は率先して話す事のない虚無が淡々としながらもいつもよりも早口で語り出した。
「クレープの組み合わせと可能性は無限に近いからな。俺としてはいちごと生クリームの組み合わせは外せないが、以前に食べた生クリームとプリンと言う組み合わせも中々だったからな、語り出したらキリがない」
人は好きなものを語る時は皆こうなるのか。ネクラはそんな事を思いながら、淡々と熱く語る虚無を眺めていた。
普段は表情を崩さず、多くを語らない虚無がこうもはしゃいでしまうなんて、スイーツとは否、好物とは偉大だなぁ。とネクラは思った。
「虚無に水を差す様で悪いけど、甘い味の他におかずクレープって呼ばれているものもあるよね。死神さん、ご存じですか」
虚無の話が途切れたのを見計らい、ネクラが死神にクレープは甘い味だけではないと言う事を伝えると、死神はまた瞳を輝かせた。
「へぇ!てっきりスイーツかと思ったよ。おかずクレープって面白そうだね。それはどんなものがあるの」
「うう、実はこれも甘い味と同じぐらい種類があって……。お店のメニューで見かけたのだと、ハムチーズとか、ツナマヨとかだった覚えがあります。虚無くんはおかず系でどんな味があったか覚えてる?」
ネクラが虚無に話を振ると彼は眉間にぎゅっと皺を寄せて言った。
「悪い……。スイーツ系しか見た覚えがない」
「あらら」
虚無は生前、甘い味に一直線だった様で本当におかず系を視界に入れていなかったらしい。それでも、何か1つでも思い出そうと頭をひねっている彼を見て、相変わらず真面目だなと思うネクラだった。
「うむむ。やっぱり人間の思考って奥が深いねぇ……現世で遊んでた時に見かけたクレープ屋では割と女性が並んでいたから、てっきり甘いものとばかり思っていたけどまさかのおかず系なるものがあるなんて、考えもしなかったよ」
死神が真面目な表情とトーンで感心している。こちらも自分の興味がある事に関しては真面目で真剣になるのだなと思う同時に仕事でもこれぐらい真面目な姿勢を見せてくれれば少しは尊敬するのにとネクラは心の奥底で思った。
「やっぱりさ、食べてみるのが一番なんだよ」
死神がクレープのメニューに思考を巡らせる虚無と、普段とは違う表情を見せる虚無と死神にしんみりとしているネクラに死神が唐突に言った。
「え、まさか」
前回のパターンを思い出しネクラの胸が期待に踊る。虚無も同じ事を予想しているのか、何かを期待する様に少しそわそわとしている。
「食べながら味を教えてよ。クレープ、食べに行こう!」
「わーい!本当ですか」
「……」
ネクラは両手をあげて飛び跳ねて喜びを表現したが、虚無は椅子に座ったまま無表情だった。
しかし、彼は見えないところで小さくガッツポーズをしており、実は死神にはそれがバレバレだったりする。
その後、現世の話題の人気クレープ店で甘い系とおかず系のクレープが高身長な男性2人と小さな少女1人によって全種類食べつくされると言う謎の事件が起こり、話題になったとか、ならなかったとか。
~おまけ~ それぞれの食レポ~
ネクラ
食べた総枚数 : 20枚(甘い系10:おかず系10)
選ぶ傾向 : 甘い系・おかず系の中から気になったものをバランスよく
ベストワン : いちごクリーム(期間限定マシュマロひよこ付き)
「甘いクリームに対して少し酸味のあるいちごが良いバランス!クリームは注文が入ってから泡立てているから甘い香りはもちろんの事、ふわふわ感もキープされてて幸せ。期間限定で乗っているマシュマロでできたひよこが食べるのがもったいないぐらいかわいい。」
虚無
食べた総枚数 : 甘い系の全メニュー制覇×2周
選ぶ傾向 : 甘いものは全部食べる(売り切れ必至のものから先に注文)
ベストワン : 選べなかった
「どれもうまくて1番が決まらない……。寧ろ全て1位でいい。あとマシュマロで動物を作ると言う器用さには感服した。俺はネコの形が気に入った」
死神
食べた総枚数 : 甘い系・おかず系の全メニュー制覇
選ぶ傾向 : 興味があるもの全て片っ端から
ベストワン : ハニーシュガー
「クレープって薄いからどんどん食べられるね!特にハニーシュガーは中にはちみつと砂糖を塗っているだけなのに、甘さが生地にじんわりしみ込んでおいしいね。満足感があるよ」
※総枚数は同じ味を何度食べてもカウントしております。