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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
第八章 少女は悩み、苦しみ、そして決断する
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第八章 最終話 これが本当のエピローグ

この度もお読み頂きまして誠にありがとうございます。


やっとここまで来られました。このお話の行く末を最後まで見届けて頂ければ幸いです。


本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 とある町のとある病院で、小さな魂が生まれた。

 

 小さくてふくふくしているその魂は、母親の腕に抱かれて嬉しそうに、幸せそうに笑っていた。


「こんなところにいたのか。死神サン」

「お、虚無くん。仕事は終わったの?お疲れー」


 ここはその病院に立つ中庭の木の上。俺が覗いているその病室は中庭に面しているのだ。姿が見えるわけではないから、別に身を隠す必要はないけど、病室まで行くほどの事じゃないしね。最初からここで見守るつもりだった。


「何を見ているんだ」

「ん。アレだよ」


 虚無くんが訝しげな顔をして聞いてきたから、俺はとある病室を指さした。虚無くんの視線がそちらへと向けられる。


 そして、俺が指し示す先にいる赤ん坊の姿を見た時、普段はあまり感情を動かさない虚無くんの瞳が大きく見開かれた。


「あれは……」


 察しの良い虚無くんは、その姿を見ただけですぐに気が付いた様だった。どんな思いなのかはわからなかったが、凝視して赤ん坊を見つめる。


「そ、ネクラちゃんだよ。仕事の近くでネクラちゃんが生まれるって聞いたから、寄ってみたんだ。ああ、もうネクラちゃんじゃないけど」


 そう言ってみたけど、たぶん虚無くんは俺の話を半分くらいしか聞いてないだろうなぁ。彼の興味は全部あの子に行ってるもん。


 まあ、別にいいけど。虚無くんはネクラちゃんの事を妹みたいに可愛がっていたからね。気にする気持ちもわからないでもない。

「これから最低でも17年はこうして様子を見に来ないといけないんだもん。面倒だよねぇ」


 死神は自分が担当し、送り出したを最低でも前世の享年に到達するまで監視する必要がある。

 

 ネクラちゃんは17歳の時に自ら命を絶ったから、俺は新しい人生を送る彼女を17年間こうして陰から監視する必要がある。


 監視って言っても、四六時中じゃないからそんなに面倒でもないけど。


 ただなぁ……彼女の身に何があっても、彼女がどんな人生の選択をしても手も口も出す権利がないなら、こうして監視する意味はないと思うけど、決まりだから仕方がない。


「ああ、そう言えばそうだったな」


 虚無くんが赤ん坊を見ながら俺の言葉に反応した。なんだ。聞こえてるじゃない。なら、ちょっとからかってやろう。


「これから暫くネクラちゃんの傍にいられる俺がうらやましい?」

「は!?」

「ぶはっ」


 分かりやすく動揺する虚無くんが面白くて俺はつい噴き出してしまった。からかわれたと瞬時に気が付いた虚無くんの眉間に皺が寄る。


「ごめんごめん。でも、ネクラちゃんのことは気になるよね」


 質問の仕方を変えれば、虚無くんは無表情で視線を泳がせた後、ぎこちなく首を縦に振った。


 うん、素直でよろしい。虚無くんって割と素直だよねぇ。面白いわー。


「だよね!いいよ。君もネクラちゃんの元先輩として、彼女の人生を監視する事を許可してあげる」


 俺が言えば虚無くんが一瞬だけ表情を明るくさせて、そしてすぐに顔を引き締めた。どうしたんだと思っていると。虚無くんがポツリと言った。


「いいのか。俺はまだ死神見習いだ。そんな事が許されるのか」


 もう、虚無くんって変に真面目なんだから。素直に喜びなよ。


「俺がいいって言ってるからいいの。君もいつか死神になった時、自分が転生まで導いた魂を監視する時が来るんだから。そのための研修だよ」


 俺がそう言ってやれば虚無くんは暫く黙り込んだ後、小さく頷いた。


「わかった。ありがとう、死神サン」

「いや、お礼言われても。研修だっての。あ、でも彼女に何があっても君は動いちゃダメだよ。約束」

「ああ、努力する」


 努力じゃだめなんだよなぁ。そこは動きませんって断言してもらわないと困るなぁ。

 まあ、いいけど。余計な行動したら俺が止めればいいんだし。


「いやあ、でもこうして補佐を送り出す度に感慨深くなるねぇ。あ。補佐と言えば、柴くん!あの子はどうなったの」


 ネクラちゃんの事を思い返していると芋づる式に別の補佐の存在も思いだす。後輩わんこキャラのおチビちゃん。柴くん。


 俺の腹が立つ同期のカトレアの下で死神補佐として頑張るあの子は、誰から見てもネクラちゃんが好きだった。


 だからしょっちゅうネクラちゃんの拠点に遊びに来ていたけど、彼女が転生した事によってその拠点は消滅。


 そこから接点もなくなって柴くんと会う事もなくなったからちょっとだけ気になったんだよね。虚無くんとはよく戦闘訓練してるみたいだけど。


「柴は一刻も早く転生できる様に頑張ってるみたいだ。なるべくネクラと近い時期に転生したいんだって、しつこく言ってる。そうえばもうすぐ転生できるって喜んでいたな」

「ふぅん。そっか、それはまた……俺たちの周りも静かになるねぇ」


 まあ、騒がしいのはそんなに好きじゃないからいいけど。それに死神としては死神補佐が減ってくれた方が助かるし。


 でも、環境が変わると時間の制約がない死神空間でも時の流れを実感しちゃうから不思議なものだよねぇ。


「よっし!今日の監視はここまで。仕事にもどろっか」


 まだ死神の仕事は山ほどある。いつまでもここにいる意味もないと立ち上がった時、俺は驚いた。


 病室の窓の向こう、つまり母親に抱かれた赤ん坊がこちらを見て笑った気がした。見たところ霊感もない様だし、俺や虚無くんの姿が見えるはずはないと思うけど……。


 まあ、いいか。見えていようがいまいが、俺にはどうでもいい事だ。


「死神サン、なんで笑ってるんだ。気持ち悪いぞ」


 虚無くんが怪訝な表情で俺を見つめて来る。ってか何気にひどい事いわれてない?気持ち悪いってなにさ。


「なんでもないよ。行こう」


 そう言って病院に背を向け、でもやっぱり少しだけ気になったので俺は最後にもう一度だけ振り向いた。


「じゃあね、ネクラちゃん。もう俺のところに来る様な行いをしちゃだめだよ」


 君との別れは本当に永遠の別れであるべきだから。

 俺は柄にもなくそんな事を思いながら、その場から姿を消した。

初めての世の中に出した作品で不慣れな事もありましたが、ネクラたちをこうして最後まで導けてよかったです。

終わった……。何とかまとめる事が出来ました!

もっと続けても良かったかな。と思いつつも似たような話しか書けなそうな気がして、ぐだぐだするぐらいなら終わらせようと思い、この度お話を締めくくりました。



どうせ誰も見ないだろうな。と思っていましたが、ブクマや評価がついていて、とてもうれしかったです。ユニークユーザー様がいて下さったのも驚きでした。


私の作品に興味を持ってくれた方々に一番感謝しています。本当にありがとうございました。


皆様が見てくれていると言う事が私の投稿意欲に繋がり、こうしてラストを迎える事ができました。


他に素晴らしい作品が投稿されている中、私の作品を見つけて頂いてありがとうございます。


番外編も考えてはいるのですが、いずれ短編で出そうかなぁ。と思ってみたり。


現在は2作目を投稿中ですので、よろしければそちらも見て頂ければ幸いです。異世界転生ものなのですが、何番煎じだよって感じですよねぇ。もうほぼ水になっていそう……。


 お暇つぶしに見て頂ければ幸いです。


 このお話はひとまず完結。読んでくれた方々、本当にありがとうございました。

 そして、よろしければ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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