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死神補佐になりました : 来世のための少女の奮闘記  作者: 水無月 都
少女は来世を願って奮闘する
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【小噺】死神散歩 : エピローグ代りの死神の呟き

 俺は死神。名前なんてないから好きに呼んでくれ。


 俺の趣味は人間界で遊ぶこと事。


 人間界に来ている時はアイデンティティでトレードマークの黒マントは脱いでいる。だって、プライベートだもん。仕事の事とか忘れたいじゃない。


 だから人間界に来るときはわざわざ現界している。人間姿が見える様にしているのだ。

 せっかく遊びに来ているわけだし、コソコソしたくないしね。


 死神の仕事は楽じゃない。むしろ超ハードだ。まあ、俺ぐらいになれば戦闘でも何でもお手の物だし、どんな仕事でもなにが相手でも秒速で片付けるんだけど。


 死神の仕事は端的に言うと魂を導く事。

未練を持たず、自分の死に気付かずに現世さ迷う魂は言わば『迷子』と同じだから物分かりが良く、己の現状を理解してもらうだけでいいから簡単。そういう魂の物分かりはすごくいいから。説得するまでもない。


 面倒なのは未練を持つ魂である悪霊だ。奴らが関わる仕事は大っ嫌いだ。

悪霊は強い恨みを持つ者が多い。

この恨みと言う感情は非常に厄介だ。

自分勝手な理由の恨みもあれば、第三者に命を奪われるとか、思わず同情してしまうほどに悲惨な目に遭って命を落としてしまい、その誰かを憎んで悪霊化する者もいる。


 そうして一度穢れた魂は、例え己の恨みを晴らしたとしても次第に現世全てにその矛先を向けて暴走する様になる。

 そうなる前に哀れな悪霊を黄泉の国へと送る事も俺の仕事。


 悪霊を相手にすると人間の持つ黒い部分に直面する事が多いから、毎度気分が悪い。

 俺は人間の進化や文化、文明は好きだ。どうすれば物事が便利になり、快適に過ごせるか。どうすれば誰かに楽しんでもらえるか。

 それを考えて形にするのが本当に上手いと思う。


 だが反面、自分が優位に立とうとする心もあるとも感じる。

 自分は正しい。皆も同じ意見を持っているから間違っていない。だから間違った意見や価値観を持つ人は正さなければならない。注意しないと、わからせないと。

 そんな気持を持ちがちだ。そういう部分は正直、反吐が出る。


 だから、悪霊は消えないし、死神補佐も増える。

 ああ、そうそう。俺たち死神は死神補佐って言う自分で命を絶った現世に未練がない人間の教育係もやってんだよね。

 あれも結構面倒なんだけど、まあ。これ以上語ると愚痴が長くなりそうだから、もういいや。


 そんな感じで、毎日の様に人間の醜い感情や魂と向き合っていたらストレスが溜まるワケ。だからこうて人間界に遊びに来てストレス発散してるの。


 人間には興味はないけど、人間の文化・文明好きとしては、時たまこうしてて日々の移り変わりをチェックするのはすごく楽しい。


 ん。なんだこのうるさい音は。ああ、ゲームセンターか。

 見た事はあるんだけど入った事はないんだよね。……ちょっと入ってみようかな。




 せっかく入ったんだもん。なんかゲームやりたいよね。

 ああ、これ知ってる。UFOキャッチャーってやるでしょ。へぇ。ぬいぐるみ型のカラスのキーホルダーか。ふふ、なんかデフォルメされてるのに目が吊り上がってて生意気そう。カァカァ文句を言ってるみたい。

 なんか目に付いちゃったし、この子を取ろう。小さいし、邪魔にならないでしょ。

 え?お金?あるよ。俺、人間界でバイトしてるもん。

 バイト話?今はそれどころじゃないの。また今度ね。



 やった。取れた。小さいくせに中々に手強かった。

 さあ、そろそろ帰ろうかな。仕事もあるし。

 おお、新しいゲームの予約だって。昔あったゲームが新しいゲーム機に移植されるのか。俺、こう言うやつは面白そうだとは思うけど実際にはやった事ないんだよね。と言うかゲームとかやる時間なんてないし。


 ええっと『異世界転生★恋愛れぼしゅーしょん!普通の女子高生がひょんな事から異世界に転生しちゃった。異世界で紡がれる6人の魅力的な男性キャラとの恋愛を楽しんじゃおう!』……ああ、乙女ゲームとか言うやつね。


 そんな簡単に転生できるわけないでしょ。人間って本当に非現実的なものに夢見るよね。

 でも、このキャラはいいかも。


 背が高くて、スラッとしてて、瞳も切れ長で髪の色と同じ銀色をしている。

 ふぅん。人々を愛する優しい王子様キャラか。いいじゃん。

めっちゃかっこいいし、今度はこの姿になろう。

今の姿も嫌いじゃないけど。茶髪地味男よりもこっちの方が死神っぽいし。



 あ、端末が鳴ってる。仕事が入ったのか。

 ええ、新しい死神補佐がのとこにくるのかよ。

 あーあー。死神見習いの教育で忙しいから補佐の子は俺にはつけないで欲しかったのになぁ。


 早く帰ろ。

 じゃあね。また俺の散歩に付き合ってよ。


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