【小噺】死神散歩 : エピローグ代りのウワサ話
この度もお読み頂きましてありがとうございます。
六章が終了。いよいよ七章です。と言うわけで七章プロローグも同時に投稿したいと思います。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。
俺は死神。決まった名前はない。好きに呼んでもらって構わない。
今日も仕事の合間に現世を散歩中。最近、皆と現世のご飯を食べる事にハマっているんだけどこうして1人で食べ歩くのも悪くはない。
某付きからあげって最高だよね。食べやすい、手も汚れない、おいしい。歩いて食べるのは慎世ではよろしくない行為みたいだけど、落とさないし、ゴミも出さないから別にいいよね。
「お、なんだこれ。ああ、アルバイトの募集か」
俺の瞳に飛び込んできたのはガラス張りの壁に貼られたアルバイト募集の張り紙。それを見て時、俺の頭にふと過るものがあった。
「そう言えば、ウワサの補佐ちゃんは何をしているのかな」
最近、おもしろい死神補佐がいると聞いた。
転生をとても強く願い、どの補佐よりも貪欲に前のめりに奔走しているらしい。確かににそれは面白い。
補佐の多くは転生を望むが、悪霊と言う異形の存在を相手にする事が多い為か、最初は張り切っていても、悪霊を相手にする事に尻込みしてしまい、次第に積極的に仕事をこなそうとは思わなくなっている。
でも、ウワサの補佐はどんな仕事にも前のめりらしい。しかも他の補佐の仕事を半ば強引に譲って貰っているとも聞く。
なんでも仕事はできるけど、ヒステリックでわがままだからやる気は空回りな子らしい。他の死神の印象も良くないし、仕事を譲った補佐の中には納得がいかない者もいるらしく、この空間での彼女の評価は最悪。
しかし、彼女が行っている事は悪ではない。強引とは言え、相手に許可を取った上で仕事を貰っているし、受けた仕事は責任を持ってこなしていると言う。
目に余る行動を取る補佐や見習いは黄泉送りになる事も多いけど、そうはならないと言う事は余程優秀で大した問題は起こしていないと言う事だからね。
つまり、自分勝手でも己がやる事には責任を持っているから彼女の徳は下がらない。人の倍の量の仕事を請け負っているため、割と最近人生を終えた割には転生の資格を得るために必要な『輪廻ポイント』が貯まるのも早いと言うわけだ。
もしくは担当の死神が甘いかのどちらかだ。
そう言う意味では確かに、ウワサの補佐は面白い存在だ。この場所へと辿り着いた者で生きると言う事に強欲な魂は珍しい。
これは生前も相当気が強くて強欲な性質を持っていたのかもしれないなぁ。ネクラちゃんと足して二で割ればまともな人格が形成されたりしてね。
あーあ。俺が担当だったら、その子を早期転生させてあげられたかもしれないのになぁ。でも、扱いづらい部下は嫌だなぁ。
うん、やっぱりいいや。一度も関わり合いにならないままで。俺は扱いやすい部下と平穏に活動できればそれでいいし。
さてと、唐揚げも独り占めできたことだし、そろそろ帰ろうかな。
……っと、丁度仕事も入ってきたじゃん。よし、ネクラちゃんのところに戻ろうかな。
不定期後書き。ここまでお読み頂きましてありがとうございます。
ちょびっと登場人物の名前に触れますので本編を呼んでいない方はネタバレ注意です。
今回の登場人物は源氏物語を元に考えました。源信孝=光源氏(信孝は紫式部の夫である藤原宣孝から取りました)
六条愛=六条の御息所(苗字が三章に出て来るキャラと被ってしまったのは大きな反省点です)
源薫子=紫式部(本名が藤原香子と言う説があるのでそこから)
ネーミングセンスがないとこう言うところに頼ってしまいます……。センスが欲しいなぁ。
では、七章でもお付き合い頂けますと幸いです。