~雨に混じる血の大河~rainydayより
刑期を終えて、刑務所から出て来たあの人は、自分の目の前で襲われた……八人の刺客に。
その日は、朝から雨だった。夏特有の土砂降りの雨に掻き消される、五発の銃声。
後は、銃を発砲した男も含む、八人がかりでメッタ刺しにされ、降り続いた雨のせいで出来た小川のような水溜まりが、彼の傷口から流れる血と相まって真っ赤に染まった。
「あんたぁ!」
血溜まりと化した水溜まりに、彼の巨体が揺らぎ倒れた時、彼の女はそう叫び、己の着物が、雨に濡れるのも、彼の血に染まるのも気にする事無く、血溜まりに彼を抱きしめて、ただひたすらに号泣しつづけていた。
当時の自分にはただ、彼の死にゆく姿を見つづける事しかできなかった。
しかし、彼の死が確定した瞬間、自分の中で何かがプツリと音をたて切れた。やがてそれは、抑えようの無い復讐心へと変わったのだが、それは、彼の女によって止められた。
今も記憶に残って焼き付いて、決して離れる事の無い、自分の十八歳の夏の追憶。