在りし日の僕と彼

「それって、君の推論だろ？」

そう言って彼はまた僕を貶す。

僕だって、「君の言ってることだって」なんて、言ってみたいのだけれど。

彼は確証のあることしか言わない。

でも、そんなのつまらないじゃないか。

未知こそ人の好奇心を掻き立てる。

彼はそれを解ってない。

解る時なんて来ないことくらい、分かってるけど。

彼と長時間会話していると、気が滅入る時がある。

いや、確実に気が滅入る。

なんなら目眩がする時だってある。

どんな事を話題に挙げても、共感なんてしちゃくれない。

人は共感を求める生き物だ。

なのに、ずっと一緒にいるやつが全く共感してくれないなら、気が滅入るのも無理ないだろう。

本当に、愚痴を挙げたらきりがない。

でも、一緒に居たくないとは思わない。

その理由は…まぁ、また今度かな。

「おい、また人形に向かって話しかけてるのか。俺にはその行為に何か意味があるとは思えない。そんな事してる暇があったら…」

彼のお(・)説(・)教(・)はうんざりだから、始まる前に逃げようと思う。

「はいはい」

じゃ、またね。

そう言って、「僕」は逃げるように、「彼」は追いかけるように、部屋から出ていった。