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魔法少女、極寒地に立つ


魔法少女、極寒地に立つ



 まずはじめに、私は公務員を舐めていた。よく考えるべきだったのだ。あの支部の働きぶりから察するべきであった。そして、遊撃隊の行動範囲をもう少し思い出して考察すべきだったのだ。首相が出てきて各国が、といった時点で気づくべきだった。

 その結果が、ロシアである。

 極寒の地、そして試される大地より上の国。まぁ今居るのはロシアのモスクワ、シェレメーチエヴォ国際空港である。日本ではちょっと涼しくなってきたかな? と思える秋型の気候だったが、この日のモスクワは冬のそれだった。涼しいどころではなく、寒い。ロシアに来て最初の行動はショッピングであった。

 到着後、現地にてちょっと良いコートをマイホープである連さんに買っていただいたが、今後自分一人となったときどうなるのかが不安でしかない。あいむじゃぱにーず。チグハグな英語は通じないどころか、英語すら通じるかも怪しい。


「いや、しかし、悪いね」

「連さんが謝ることじゃないですよ」


 そうは言うが、あまりにも急すぎである。たまたま一年くらい前に卒業旅行でパスポートを用意していたからいいものを。用意がなければどうするつもりだったのだろうか。

 と、そこで先程から振動が止まないカバンに対して話しかける。


「なぁ、マーチ? 大丈夫?」

「だだだ大丈夫じゃないみゃあぁ……」


 いつもより弱っているマーチに、私ははぁ、とため息をつく。そりゃ大丈夫じゃないよな。流石にマーチをこのままにしたくはないので、近くに温まれる場所を探すのが先決だろう。一応、マイホープ連さんより鞄の中を温めるマフラーも買っていただいたが、寒いものは寒い。


「とりあえず、俺はホテルの確保と準備と現地魔法少女への連絡とかとか、根回しをしておくね」

「え? 連さん?」


 まさか置いていきませんよね?

 私とマーチは連さんを凝視する。置いていったら呪いますよと。しかし、空港内ならば比較的暖かく、問題も少ないだろうと言われる。確かに、構内ならば暖房はあるしマーチを温めることもできるだろう。その上コートもあるのならば暖房面は申し分はない。

 しかし、問題は精神面であった。

 心細いのである。

 とても心細いのである。


「君はとりあえず、そこにいてくれないか?」

「分かりました……」


 しかしマイホープ連さんには届かず、私は待機願いを受け入れるしかなかった。できるだけ早く戻ってきてくださいね? でなければ私が死にますよ。ただでさえ語学力はゼロで死んでいるというのに。


「……あれ、でもミキ、選択講義の第二ヶ国語って」

「黙ってなさい、マーチ。あなたもここで死にたくはないでしょう?」


 余計なことを喋るUMAですねぇ……口を縫い合わせていーとーまきまきと言わせてやろうか。などとバカやっている場合ではない。そうこうしている内に、私の希望がどこかへと去っていったではないか。急激に冷え込み、孤独感を感じてしまう。マーチが居るとしても、見知らぬ土地どころか国なのだ。

 私はとりあえず空港内へと戻り、長椅子に座る。温かい空気と行き交う人々により、先程よりは余裕の持てる体温へと戻った気がする。


「はぁ……これからどうなるのだろうか……」


 隣に座る人は私の知らない言語で楽しい会話をなされている。厳密に言えば知っている言語なのだが、講義の内容は右耳から入り、左耳から出ていった。故に、全くわからないというのが正しいか。その反対に座る方も楽しそうに話されていた。なんの会話しているのだろうか。

 はふ、とため息をつくと、急に悲鳴が上がった。と同時にガラス片が構内を飛び交う。急な事故に対して、私は即座に退避した。


「なになになになに!? 何が起きた!?」

「みゃ! ミラーみゃ! ミラーがいるみゃ!」


 なんですと。観測班は何をやっていたのだ。

 などと、人生で一度は言ってみたいセリフを心の内の中二病な私が歓喜して叫んだ。まぁ胸中にしまいこんで言わなかったが。

 しかし予想外である。多くの観光客やロシアの方々がいるこの場に、しかもこんな昼間に来るとは思わなかった。日本のミラーは律儀にも放課後に顕れるのだ。まぁあの数回しか会ってないのだが。


「マーチ、他に魔法少女は!?」

「……っ! いないみゃ!? なんでみゃ!?」


 なんですと。この地区の魔法少女は何やってんだ!

 などと、心の内の全員が声を合わせて叫んだ。何故いない!? いや、まだ間に合っていないのか! 時間帯が時間帯だ。出るのにも時間がかかるだろう。これはまずい。

 私は即座に振り返り、敵を目視する。が、周りの方々が私の周りを囲う。な、なんですか?


『君も、早く逃げるんだ!』

『日本人よね!? 日本語はわからないけど、はやくにげるのよ!』

「あわわ……なんて??」

『逃げろ!! 怪我でもしているのか!?』


 あいきゃんとすぴーくろしあん!!

 らいてぃんぐですら無理なのだ、ひありんぐできる訳が無い。私はとりあえず笑っておけば何とかなる精神で微笑みを見せた。ほら、私の素晴らしい笑顔だぞ。拝め。

 すると業を煮やしたのか、私の両腕を男たちが組むと、そのまま私は引きずられた。


『くそ! 助けてやろう!』

「あええええええええええ!?」


 まってまってまって! 何がだめだったの!?私のスマイルがいけなかったの!? 確かに私はモブ顔だけども!! そんな強制退去みたいな対応取らなくてもいいじゃないですか!! 私今このときから自身の笑顔にトラウマ持ちますからね!?

 しかし、状況は悪化の一途をたどる。ミラーは無差別に建物を攻撃し、天井から落ちてくる破片に構内は阿鼻叫喚の様相となっていた。

 パニックに陥った人々は出口へと駆け出し、それが原因で傷までできる者たちがいた。もはや冗談を言っている場合ではない。私は腕から逃れるように動くと、運んでいた二人に対して礼をした。恐らく、助けようとしていたのだろう。


「マーチ! 変身だ!」

「わかってるみゃ! 変身キーワードを叫ぶみゃ、ミキ!」


 そして、私は二人に背を向け、ミラーのもとへと駆け出した。おそらくやつは私へと標的を変えるだろう。真面目に取りたくない行動ではあるのだが仕方あるまいと、切り替えながら囮となる。

 よし、燃やすものは何か。やってまいりましたこのコーナー。マッチやら男の子心やらを燃やして来たが、今回ばかりは真面目に叫ばさせてもらうしかあるまい。そして、今はこのミラーに対する正義感が働いている。今回は真面目に、真面目に叫ぶのだ。


「私の正義よ、燃えろーーー!!」


 走りながら叫んで、攻撃が飛んでくる。ミラーは確実に私を仕留めようと目標を変えていた。そして、私はその瓦礫の粉塵の中から飛び出し、尾を引いて2階の踊り場へと着地した。

 ミラーは翼をはためかせ、空中に浮くと私を眼前に捉えた。よぉ、大将。元気そうじゃあないですか。


「これ以上の破壊行為は死者が出ます。そうはさせません!」

「みゃあ! ミキ、全力みゃ!」


 そう叫ぶと、私は私は全力で飛び出した。その勢いのままミラーに殴りにかかるが、ヤツの方が少し早かったのか、既のところで避けられる。畜生、中々のスピードで攻撃したはずだけど!?

 私はイメージをして空中にて方向転換し、再度攻撃を図る。が、ミラーもミラーで同タイミングでの攻撃を仕掛けてきた。く、なかなかやるな。

 そして、お互いのパンチがお互いに入り、ミラーを吹き飛ばすと同時に私も吹き飛ばされる。


「きゃあ!」


 吹っ飛ぶ際、可愛らしい声が聞こえた。というより出た。え、きゃあておい。

 しかし、じんじんと痛みが頬に走る。頬に手を抑えながら上手く着地をイメージし、そのとおりダメージもなく立ち止まる。頬をさすりながら私は少し安心した。良かった、頬の肉吹き飛んだりしちゃったかなと思っちゃったわ。ふざけるんじゃない。


「女の子の顔を殴ったりしたらだめと、習わなかったのですか!」

「男の子みゃ」


 そうでした!

 いや、だからといって人の頬を打っていい理由にはならない。このやろう、どうしてくれようか。

 そう思いながらミラーを見やるが、しかしやつはもうこちらまで走り込んでいた。行動が早い! 既にその右腕の拳は私の体を標的とし、強く握りしてられている。なんというか、こいつも私と同じ接近戦タイプなんだな。


「こうなったら、もう一発殴ってやります!」

「そのいきみゃ!」

「グロロロラロロラロ!!」


 いやそんな気持ち悪い返事しないでくれないかな。せっかく力を込めたこの感覚が抜けちゃう。

 こちらの間合いにまで接近したミラーは、大きく拳を振りかぶった。隙がありすぎると瞬時に理解した私は、拳を突き出しつつ、もう一発を準備した。予感は的中し、ヤツは私の拳をスルリと回避すると、その勢いのまま後頭部を狙う。

私はここだ!と、しゃがんで回避して、一気にためた拳を突き上げる!


「昇○拳!」

「うさぎ跳びアッパーみゃ!」


 昇○拳なの!!

 その拳は思いっきりミラーの顎と思わしき部分を的確に砕き、頭が四方に飛び散るくらい爆散する。そして、その上向きの力に若干浮いた体はしかし、不規則な動きをした。

 と同時にドパン! と何かが突き刺さり、何かが破裂するような大きな音が響いた。


「わわっ」


 そして、何かしらの体液を私は浴びた。うん、これはミラーの血ですね。蒸発みたいに消えていってるし。地面にべしゃりと、まるで水たまりに足を踏み入れたみたいな音を立てながら倒れ付すミラー(頭部皆無)を見やる。そのミラーの胸には、大きな穴が空いていた。その貫いた銃創のような傷からして、マジックビームを思い出した。どうやら、狙撃でもされたようである。


「……ミラー、倒したんですよね?」

「灰になっていくみゃ。倒したみゃ」


 それは良かった。

 しかし、疑問は残る。この攻撃はどこから来た? ビームを出した本人が見えないあたり、隠れて撃ち放ったか、もしくは超遠距離による狙撃をしたかと考えられる。

 だがまぁ、何はともあれ、何とかミラーを倒した。今回の戦いで初めてまともに攻撃を食らってしまったことから、反省すべき点は多々あることがわかった。まぁまずは何かしらの武術か何かを学ぶべきだろうか。

 私はふぅ、と一息をつくと、目の前の惨状に苦笑した。なんとも、破壊し尽くした感のある空港だろうか。大規模テロがあったと言われても疑問を持たない破壊っぷりである。


「とりあえず、いつものあれやっておきますか」

「呪文、覚えてるミャ?」

「なんでしたっけ」

「全てのものの、傷を癒せ。ノヴァ・ステラ・キュア、みゃ。しっかりするみゃ」


 ため息をつきながら、眉間にシワを寄せるマーチ。お前さん、いつも唐突に冷たくなるよね。私に対して。私は歯を食いしばる様にしてその苦言を体現した表情に歯向かいつつ、復唱した。


「全てのものの、傷を癒せ。ノヴァ・ステラ・キュア」


 すると、先程まで爆撃されたのかと思うほどの破壊した施設が、まるでビデオテープで逆再生されたように復旧しだす。周りの人たちも呆けたような表情となり、怪我をしていた者は徐々に傷が塞がってゆく。まさに、奇跡と言う他ない魔法であった。いつ見ても凄いな、これ。


「さてと、どうしましょうか」

「とりあえず、変身を解くみゃ。なんでもないふりして長いすに座るしかないみゃ」

「まぁそうなりますよね」


 まずは変身を解かなければ、大いに注目を浴びるだろう。こんなきらびやかな格好では、いるだけで目立つ。魔法少女でなくても魔法少女になってしまうだろう。主に痛い人として。

 それは勘弁願いたいのである。

 そう考え、私はマーチに従って目立たないところで変身解除するよう、腰を上げた。


「それじゃ、適当なところで解除しますか……ぁ?」

『貴女が、日本の魔法少女?』


 しかし、私は変身解除する間もなく、新たな魔法少女に出会ったのだった―――

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