夏のとある一日
ミーンミンミンミン───。
夏。うだるような暑さの中、俺は呟いた。
「アイス食いてえ……」
何せこの暑さだ。何もしなければ茹でダコになってしまう。節約のために付けた扇風機も、今や温風機に変わりつつある。最悪だ。
だが冷凍庫にアイスは無い。かと言って代替品のキンキンの麦茶は切らしている。つまり、買いに行くしかないのだ。
俺は外に出る事とアイスを食うことの釣り合いを考える。だが、どう考えてもオーバーワークだ。結局、俺にアイスを食う未来は無いのだ。
そんな絶望の最中、俺の顔に影が差した。妹である。
「何世界が終わったような顔してんの?」
「そこに訪れるは我が妹じゃないか!」
「うざっ」
この妹、辛辣である。中学生に入ってきりずっとツンデレ期だ。お兄ちゃんは寂しいぞ。
あ、そうだ。妹にアイスを買って来てもらおう。
「なあ妹よ」
「やだ」
「まだなにも言ってないんだが…」
「お兄ちゃんの言う事くらい大体分かるよ。どうせアイスでしょ?」
「ふっ、以心伝心だな」
「あぁ、うん…」
諦念にも似た目を妹に向けられるが、特に意にも介してないドヤ顔を返してやる。
「まあ、ついさっき買って来たから一緒に食べる?」
「お、デレた」
「デレてない!」
顔を真っ赤にして怒られてしまった。まあそういう所も可愛いのだが。
気を取り直して、縁側に妹と共に腰掛ける。
妹はアイスを取り出してこちらに手渡してきた。
「はいこれ、お兄ちゃんの好きなアイス」
「お、サンキュ」
アイスをすくって一口目を口に運ぶ。うん、冷たさが身に沁みる。
夏の暑さを吹き飛ばすひと時を味わいながら、ふと俺は思い出したことを口にした。
「そういや、夏休みの課題はやってんのか?」
「う、頭が痛くなること言わないでよ……。あっ、頭がキーンってなった!いたたた……」
「あー、そんなかっこむから……ゆっくり食べろよ…」
「だって暑いじゃん……」
「そうだなぁ……暑いもんなぁ…」
空を見上げると、ジリジリと肌を焦がす太陽が見えた。蝉がうるさく鳴き、熱気が肌を包み込んでいる。
「なんか、夏って感じだな……」
「そうだね…」
俺は、そんな事を呟きながら、最後の一口を食べた。




