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7話 捨て身ノーガード戦法やめろ


 後がなく失う物もない覚悟のある女性の恐ろしさ、それを俺は初めて知った。



 賭けの決まりが締結した直後に、では「ネましょうか?」と服を脱ぎ始めたリリスには流石にビビった。お前幻影魔法まで使って万が一に備えて毒ナイフを懐に忍ばせたのになんでそんないきなり割り切れるの?


 そのおっかない笑顔じゃタつもんもたたんわ馬鹿め!


 ホラー一直線の美少女が憎しみも目に燃え上がらせて迫ってきてみろ。普通に怖いぞ。17才なんて脳内の80%が性欲に満たされてそうな年頃の俺が縮み上がっていた。


 「いや、段階ぐらいふめよ」という俺と「怖いんですか?意気地なしですね」というリリス。実際はこんな生易しい物ではなく格段にオブラート包んだ表現だが、実質こんなやり取りを重ねて添い寝で納得させた。


 おかしい、地球にいた頃ならとっくに押し倒してるぐらい据え膳でタイプな美少女なのに全然嬉しくない。まるで猛毒持った巨大な蛇が隣に寝てる気分だ。

 ねえ知ってる?飼ってる大蛇があなたの隣で寝るのはなついてるわけじゃくて、あなたが食べれるサイズになっているか自分の体で測るためなんだって。(マメシバ感。なお真実かどうかは不明)

 リリスに添い寝されて、そんな都市伝説をふと思い出した。


 耳元で艶やかな声で囁いてくるのは結構だが、吐息に毒混ざってないかな?耳が痺れてきた様な気がする。なんか変な汗出てきた。冷や汗だよこれ。


 こんな時は目を閉じて般若心経だ。心頭滅却火もまた易し。すまんなプッチ神父、俺は純日本製社会人だから素数派じゃなくて般若心経派なんだ。

 隣の大蛇はただのJK。あ、そうじゃん。17歳ってことはJKって考えれば多少はマシに…………J(呪詛撒き散らしながら)K(殺してやる)の略じゃないって、うん。J(純粋に)K(苦しに抜いて死ぬがいい)でもない………J(自分の罪を)K(悔いるんだな豚野郎)………駄目だ。ドツボに嵌った。


 耳栓欲しいな。なんか凄く楽しそうなのが怖いですよリリスさん。


 此奴、絶対俺が嫌がってるのわかってやってるぞ。

 なんかハアハアしてるし……アレ、なんかガチっぽい息遣いなんですけど。


 もしかして:ドS


 いやドSというか今迄の抑圧された物の解放と強すぎる憎しみ、加えて深夜テンションが重なって興奮してるだけだな。

 冷や汗追加だー…………風呂の次はベッドも駄目なのか。俺の安住の地はどこへ行ったのだ!?



 そして一晩中俺の耳元でハアハアしながら囁き続けたリリスは、冷や汗びっしょりでげっそりとした俺と対照的に物凄く艶やかな表情で部屋を出て行った。


 おい、今夜もきますじゃねえよ!もうおなかいっぱいだよ!


 転生後最大の地雷を踏み抜いたぞコレ。









 だるい…………精神疲労と肉体疲労にダブルパンチで何もしたくねえ。


 だが発想の転換だ。

 兎に角、今の俺は痩せねばならぬ。

 そうでなくてはまずリリスとまともに勝負出来ない。


 つまりは…………どんなに妨害しようとどうにもならないほど運動しまくって疲労貯めて夜はグッスリ。コレは勝つる。

 自決を引き止めるはずなのにどうして全力で逃げようとしてんだ俺は………。なんかおかしいぞ?


 それはさておき、そんなわけでいつもよりタンパク質を増やしてもらう形で自室で運動した。


 大地属性の魔法が使えるから器具もでっち上げられるし、元の筋肉量が少なくでっぷり太っていたので成果が如実に実感できて凄くやりがいがある。


 ふははははははは、リリス、貴様には負けん!俺は絶対寝る!寝てやるぞー!!!徹夜明けのテンションとアドレナリンドバドバ頭に溢れて変な笑い声が出そうだぜー!


 そう、俺は確実に痩せてる。

 ズボンを履かせるメイドが一昨日昨日と何か不自然さを感じたのか一瞬手が止まることがあって微かに首をひねっていたが、今日のメイドは明らかに首を捻ってズボンの方を確認した。そこで俺の腹じゃなくてズボンに疑問を抱くあたりどうなんだと思うが、痩せてるに違いない!Fuuuuーーー☆!


 はぁ、はぁ、はぁ、目下最大の敵は昼間だ。


 昼食後に微睡んで眠たくなるかもしれん。負けん。なんかアレに絶対負けっぱなしは嫌だ。デブーダからすれば同い年だが”俺“からすると年下なんだよ!俺の安くてお手軽な100円ショップで購入できそうなチープなプライドが、JKに負けっぱなしでいいのか?と囁いき続けているのだ。

 


 否、断じて否。


 買った喧嘩は絶対勝たなくてはならないのだ。

 どうも、周囲から「変なところで負けず嫌いだよね」と評判だった俺です。


「ぜってえ負けねえ」


 さあ、もう一セット、20本反復横跳びだ!1、2、3、4!1、2、3、4!1、2、3、4!1、2…………






 眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い。


 俺はいつもの数倍のハードなトレーニングもこなし切った。

 昼の睡魔など眠気を静めるハーブティーととトレーニングで吹き飛ばしてやったわ。


 問題は夕飯終えて風呂も入ってあとは寝るだけとなった今だ。おそらく本を読み始めたら秒で寝るし、どこに座っても秒で寝る自信があるほど眠い。


 血が出ない程度に舌を噛み、指で目を強制的に開き俺は眠気に耐える。


 来い…早く来るんだ…………お前がとなりで寝ようとしてきたところをの◯太くんビックリのスピードで寝てやる。へへへへへ、寝てやるぜー!


 だから早く来いや!!!

 リリス、早く俺を眠らせろ!


 …………ん、外のメイド達が慌ただしい。


 誰かがお付きを連れてを接近してるのを俺の探知魔法が捉えた。



 そこでコンコンと小さく扉がノックされた。


「で、殿下……リリス・トリスタンス様がお見えになっていらっしゃいますが」


 きたあああああ!あ、しまった。メイドにくるかもって言っておけばよかった。そりゃ慌てるわ。


「入れ」


 スーッと開く扉。

 入ってきたリリスは昨日のワンピは何処へ?と聞きたくなる物凄い煽情的な衣装で部屋に入ってきた。だが顔は無表情で目が死んでいる。


 多分コレ、周りから見るとデブーダに着るように強要された哀れな公爵令嬢だな。


 扉がパタンと閉まり鍵がかかるのを見届けると俺は魔道具のスイッチを入れた。


 その瞬間、リリスの目に黒いタールが溢れてメラメラと炎が燃え盛り、非常に美しい笑顔になった。…………なんか後ろにあるけどアレはなんだ?何を持ち込んだんだ?


「今晩は、デブーダ様。お約束通り参上致しました」


「…………うむ」


 一方的に来るって言われただけなんですがそれは、と言いかけたが堪えた。


 リリスは優雅に一礼すると、スススススっと俺の元に寄ってくる。

 今足動いてたか?余計にホラー感が増した動きだったぞ今の!やめろよ普通に怖いだろ!ホラーは嫌いじゃないけど得意でもないんだよ!


「このリリス、デブーダ様にお会いしたく日長ずっとデブーダ様だけのことを考えていました」


 う、嬉しくねええええ!!呪い殺すぜベイビー、みたいな目で言われても全然嬉しくない!!!


 誰だこっちの方がゾクゾクしていいとか言ったの!

 戻って、元のリリスに戻って!!



「デブーダ様には昨日すげなく断られてしまいましたので、私、デブーダ様のおっしゃる通りもっとお互いを知るところから始めるべきかと思いまして。さあ、お座りになってくださいますか?私とたっぷりお話しいたしましょう。ハーブティーも御用意させて頂きました。私の領の特注品ですよ」


 そう言って後ろに隠していたカートからカップを机の上に置く。


 毒など入っていませんよ、と目の前でわざわざ呑んで退路を確実に塞いできた。


 そのハーブティー…………どう見ても濃い。それに独特のスッとする香り。

 なんか目が冴えてきそうな清涼感溢れる…………ん?まさか!?


 俺がギョッとしてリリスを見ると、すごい魅力的な微笑みを返してきた。



 確信犯だなコイツ!ワザと目が醒めるハーブティー持ってきやがった!俺がメイドにたのんで昼に飲んだ奴だソレェ!嫌がらせに余念がないな貴様ァ!その賢さをもっと他に活用しろよ!


「いや、我は寝る前に茶など要らぬ」


「そんなこと仰らず。トリスタンス家自慢のハーブティーです。聞くところによると、昼時にもご所望してくださったとか?トリスタン家の娘としてとても喜ばしいです。デブーダ様が呑んでくださらないようなら私が1人寂しく飲みますが、口があまり濡れると口の回りがとっても良くなってつい”うっかり”口が滑るかもしれないですが、仕方有りません」



 脅した!こいつ第3皇太相手に脅迫したぞ!!不敬だ!不敬過ぎる!

 助走つけてビンタしてえ綺麗な笑顔しやがって。やめろよそのホラー製笑顔を。怖くて目が覚めちゃうだろ。変な夢を見るかもしれないだろ。


 俺はリリスがツーっと指で淵をなぞっていたカップを奪い取り一気飲みしてやった。


「フフフフフフ、男らしくて素敵です」


 コ  イ  ツ ーーーーーーーーー!!!!


 情けをかけた俺が馬鹿だった。計画通り、みたいなゲスい笑みになったのを俺は見逃してねえからな!!顔を背けて笑いをこらえやがって!


 いや、我慢だ。これくらいLDOでこいつがデブーダにした攻撃は陰湿だった。こんなの予想の範疇なんだよバーカ!小娘の手管など全部まるっとお見通しだ!


「リリス……ネようか」


 今迄の流れをぶった切る一撃。

 恐らく意表を突くことに成功したと思う。リリスの瞳が一瞬揺れた。何か思案するようなそんな瞳だったが、しかしてすぐに好戦的に嗤ってみせた。


「御誘いしてくださるのですか?」


 覚悟の完了まではっや!アプリをインストールよりはやい!サラマンダーより(ry

 ここはかっこつけるのと筋力のアピールを兼ねてリリスをお姫様だっこ。そのままベッドイン。メンヘラ気味な元カノはこれをすると喜んだものだった。なんかリリスみたいなところがあって怖くて別れた(逃げたけど)。歴代彼女がなぜかみんな隠れメンヘラだったのはなぜだろうか。まあいいや。お前みたいな女の扱いはある程度こっちも理解してるんだよ。

 リリスはなにかを述べようと口を開く……その瞬間、俺はリリスに対してクルッと背を向けると、奥歯にあらかじめ仕込んでいた物を発動する!

仕込んでいたのは金属のカプセルに封入した特殊な眠り薬だ。いいから用意するんだ今日中に!とメイドに無理難題を承知で命令して用意させた薬だ。悪評維持しつつ目的は達成したので一石二鳥。これこそ生産的悪評だ。

 このカプセルを魔法でひっそり分解すれば中身の薬が口内に広がる。独特のにおいが鼻まで広がり、急激に眠気が激増する。

 いくら目をさますハーブティーでも、徹夜明け肉体疲労ピークなところに特注の眠り薬のトリプルパンチには勝てない。俺はまどろむの意識の中で勝ち誇った笑みのまま意識を失った。




実績:の○太に迫る就寝速度


記録では1秒に満たない時間で眠りにつくことができる超人、のび○に迫る就寝速度を達成したぞ!17歳の小娘相手に本気出して大人げないね!そして君にドラ○もんはいないよ、どんまい!

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