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5話 U☆KA☆TU!


 ふははははは、我、復活!


 昨日は筋肉痛で地獄をみてピクピクと変な挙動になったから凄い奇異の視線の見られたが、ちゃんと寝たらすっかり治った。やはり鶏肉という良質なタンパク質と睡眠、17才という若さは素晴らしいな。年を取ると妙に筋肉痛って引っ張るから困る。


 てか気の所為じゃないなら少し痩せた?


 いや当然か。

 今までろくに運動もせずに肉と糖分ばかり。三食がっつり食って間食も食って夜はデザート食ってるとか誰でも太るに決まってる。

 それを野菜多めで炭水化物も最低限に、肉は基本鶏肉。間食夜食を取らず、甘味も食わず、秘密のジョギングとストレッチ、腹筋。昨日はちょっと腕立て伏せとか背筋とかもしたが、いや死ぬほど辛かったが身体が軽いくらいだし効果アリと見ていいだろう。


 驚異的な痩せ方はしてないが、うん、元が元だけに気休めかも知れんが、やっぱり痩せた。あとはこれを続けられるかだ。大学生時代なんてちょっと頑張れば1㎏落とすなんて造作もなかったしな。それを女友達に話すと怒りのキックを喰らったわけだが、デブーダの肉体はどうなんだろうか?

 うーむ、最近脳内独り言の口調にデブーダが混ざってきてる。適応してきたのか?最近は口調も違和感が消えてきたし、人間の適応能力はなかなかだ。”俺”としてのアイデンティティは失いつつあるのかもしれない。いや、正確には統合されつつうあるのか。

 しかし案外それに対して恐怖などを感じてないことは良いことだととらえておこう。



 昨日の午前中は風呂入ってマッサージしてもらって、午後は帝王学を学んでジョギングとか筋トレとかして超早寝で1日経過したが、今日はどうしようか。我ながら勤勉すぎて驚くが、俺って追い詰められると頑張りだすタイプだからこの状況は努力するという観点だけならいい環境なのかもしれない。


 こうして朝起きてボーっとしてる間にメイド達がテキパキと身体を吹き着替えさせてくれるのにも慣れてきたな。いや、真っ裸で洗われるのに比べればどうってことない、と考えてしまうからだろう。風呂が苦行になるとは思わなんだ。


 本来であれば15才過ぎたら公務があるはずなんだけど、馬鹿坊ちゃんのわがままを第2皇后が叶えちゃって大概暇なんだよね。質素な朝食をもくもく食べながらどうしようかと考える。

 記憶の中のデブーダだとメイド達や騎士達が自分が通るたびに傅くのが楽しくて城内を無駄に歩き回ったり、昼寝したり、コックに無茶言って新作のデザート作らせたりとロクでもねえな。馬鹿なの?いや馬鹿か。デブーダに対して一周回ってもう一度愛想尽かしそう。


 城内歩いてメイドに頭下げさせたり、訓練所まで馬車で向かって騎士達に頭を下げさせチンケなプライド満たしてるとかどうしようもねえぞコイツ。今は俺なんだけどね。


 もうメイドも騎士も他の皇族もダメって四面楚歌どころじゃねえよ。



 しかし悪評を継続したいとはいえ、過度な悪評も困る。よってこれらの非生産的な行動はしない。アホすぎて俺のメンタルが多分耐えられない。逆を言えば、生産的なら悪行もある程度起こせるだろう。大義名分を持たせると極めて危険な奴だと評判だったからな、俺。


 結局やるべきことは何も思いつかなかったので、人払いしてウォーキングしながら適当に本を読んだ。魔法やスキルが学術的に解説されていて読んでるだけでも面白く、非常に有意義な時間だった。身体の回復も進み一石二鳥である。


 因みに、LDOじゃさっぱり語られてなかったので知らなかったが、デブーダは土属性の上位に当たる大地魔法に超絶的才能があるらしい。ただ、ローランは炎と嵐という火と風の上位の二重属性持ち。大地属性よりも炎と嵐は遥かに派手で複合魔法がすんごく強い。LDOでも土属性系を育てることはかなりマイナーな感じだった。


 デブーダはそれが気に入らなくて魔法を全くやろうとしてなかったようだ。下手にプライドがある分意地を張って馬鹿が極まったのだろう。才能があるなら鍛えればいいのに。上位属性だって持ってる人は希少だ。見た目が派手だからとかで拗ねるとか、うん、金ゴテゴテの鏡とか好きなデブーダらしい。


 実を言うと、俺はマジックアイテムの核である錬金術につながるのではないかとLDOでは土属性育てて進化させて大地属性を極めていた時もあった。結局錬金術につながる道はないと言うことは後々で知った時のショックたるや……攻略サイト見れば一発でわかる話だが、意固地になってたんだよね。わざわざ戦闘にあんまり向かない生産寄りな魔法に特化してさ。


 逆を返せば、それだけ俺は大地属性の魔法に対して結構詳しいわけで…………LDOでは魔法のカスタマイズとか色々やって作れる魔法は全コンプしたし、そこからさらにオリジナルの魔法もいくつも作成していた。(魔法作成はLDOシリーズの目玉システムだった)

ま、使えるわきゃねえが………………


 今朝方読んだ本の通り、魔法の発動には心臓の奥を意識して、イメージを構築、詠唱。

LDOではMPという概念を基本として魔法を使用できたが、フレーバーテキストでは心臓の中に不可視の臓器があってそれが魔力源となっているとかなんとかだった。


 ストーリー後半に登場する大賢者とやらは、心の臓から溢れ出る暖かみを身体のうちに行き渡らせ増幅し言霊とするのが魔導の云々とか言ってたが、要するに心臓から体内へ力が広がるイメージすりゃいいんだろ?


 レベルとか見れねえのが不便だが、コイツ温室育ちのくせして恐らく魔力は結構あるぞ。なんでだ?


 あー…………そういえばLDOでは高級な魔物の肉を食っても経験値は蓄積できるんだっけか。確か貴族が庶民より強いのも、ヒロインが旅に付いていけてたとのもそんな理由があった気がする。さらに言えば、ヒロインは魔物が多数出没する森に隣接する辺境地に住んでいいたために食卓にはよく魔物由来の食材が多く提供されていたらしい。


 んで、デブーダはお肉大好き。皇族なので当然肉と言いつつもそれは高級な魔物の肉だと思うから、体重と引き換えにたくさんのMPがあったのか。恐らくデブーダは超魔術師特化のステータスなのだろう。いや、こんなデブデブでも動けたのはその影で筋力値などにも成長していたからか。うーんファンタジー。


 兎に角身体に暖かい何かが行き渡たる感覚がつかめるだけ魔力があったことは感謝しよう。でもどうすっかな、これ。やってみたはいいけどキャンセルするにゃー勿体ねえ。


 デブーダは勘違いしていたようだが、大地属性は極めればクソド派手な魔法も使えると言うか作れる。ただそれまでがデフォで範囲攻撃可能な炎や嵐に比べてかなり苦行なだけだ。オリジナルフルカスタマイズ済みの大地属性は全魔法の中で最も化ける、それも凶悪にな。


 ラスボスの第2形態までなら大地属性で完封できちゃうと聞けばその凄さもわかるだろうか。

 どうだろう、さっきもふと思ったが、俺が創り出したオリジナルの魔法は使えちゃったりするのか?

 必要なのは魔力、イメージ、言霊。たぶん条件自体は満たしてるわけで…………。


「【ガイアズセンス】」


 周囲の被害がないオリジナルの魔法を使ってみたが、発動した、しやがった。


【ガイアズセンス】

 マッピングと同時に広域探知をする魔法と説明すれば妥当か。建物内では建物内部全域を対象に、外では指定範囲を対象とし、効果範囲内を全てマッピングしてその中に存在する魔物やNPCの座標、その区別、鑑定まで一括でできてしまうズルイ魔法だ。

 といっても、これが作れるのってダンジョンにもほぼ入らなくなったストーリー後半で、ほぼ大地属性を鍛えるのだけに活用されるような産廃魔法なんだがな。

 大地属性って、こんな調子だから微妙な評価されるんだけどな。特定のルートをクリアした後に解放されるエクストラモードでは無双できるので完全産廃でもないんだが…………。


 しかし此れをメニュー画面なんてない世界で発動するとどうなるんだ?と思った次の瞬間、頭の中にCADでオートマッピングしたような情報の塊が頭に叩きつけられた。そしてそこにいた人物とその状態なども含めてだ。あの転生した直後に起きたでかい情報量を頭に直接焼き付けられるような、不快な感じだ。


 ぐっ…………凄えけど、酔ったみてえ。てか魔力が空っぽだしなんだか凄え腹減った。


 思わず倒れ込んだが、激しい空腹はおさまらない。

 原因は状況証拠的に魔法の行使には間違いないが、LDOじゃ空腹メーターなんてなかったし何が何だか。俺は魔法に関する本を片っ端から斜め読みしていくと、ついに該当しそうな記述を見つける。


 なになに、『何故魔法に秀でる者に太った者が存在しないのか』という考察か。この本は論文を適当に纏めた本みたいだな。なんでこんな本まであるんだ?一体だれがここの本を用意してくれやがったんだろうか。本当にありがとう。

 ま、それは置いといて、続き続き……『魔法を使用する際に魔力を使用するのは当たり前のことであるが、では魔力がどう生まれているのかは未だ定かではない。だが、魔法を使う者は基本的に健啖家で前衛より動かないのにもかかわらず同じ量を摂取し、太った者が異常に少ないことから、魔力もまた食事が源になっているのではないかと仮説を立てた』…………ふんふん、あ、これか?『一度に自分の総魔力量に対し9割以上の魔力を消費するような魔法を行使すると、身体にかかる負荷は激増し使用者は激しい空腹に見舞われるという。しかしながら魔法というのは段階を踏んで習得するが故にそのような状況に陥ることがまず殆どなく、報告される症例が少なすぎるため十分な検証をするに至らなかった』………これだ。今の俺がまさにこれじゃないか?魔力すっからかんだし。今までろくに魔法使ってない奴がいきなり奥義級の魔法使えばそりゃあ身体になんの影響もない訳がないか。


 あれ、俺、今とても凄いことに気づいたような。


 デブーダの過食、原因はこれか?大地属性に対し超絶的才能を持ちながらそれを一切行使しない。だが魔法的才能が本能的にエネルギーを要求し続ける。


 肉は元より間食夜食のデザートは糖分が多い。

 デブーダはもしかすると、偏食だけじゃなくて魔法使わなかったせいで太ったのか?なんか言われてみればアリス嬢も魔導師では炎、雷、氷の上級3属性持ちだったが見た目によらず凄い大食いな設定があったはず。


 フレーバーテキストの中の話じゃなくて、ガチでそうなのか?


 これの研究者は栄養学なんてものを知らないので結局うまく結論が出せず尻切れ蜻蛉になっちゃってるが、キーは炭水化物かそれとも魔物系の、所謂魔力のさらに前段階の魔素なんぞを含んだ食材がいいのか。

 考察してるだけでだんだん空腹が和らいでいく。どうやらピークを過ぎたようだ。


 あ、待てよ。もし身体のエネルギーを使って魔力を作ってるなら、逆を返すとガス欠になる魔法をぶっ放せば脂肪まで燃焼するのでは?


 なんということだ!これはやばいことに気づいてしまった!


 運動はやめる気はないけど、魔法を使えばもっと効率的に痩せられるかもしれん。魔法を使えるだけでダイエットできるなんてLDOにデブキャラがあまりいないのはそういうことだったのか…………。

 他にもう1人くらい魔法使いがいれば実験もより正確になるのだが、俺の知ってる中で味方に引き込みたい強力な魔法使いなんて……あ、居た。



 心当たりというかもっと早く気づけよ、と自分で思うほど身近に魔法使いはいたがメイドに伝言を頼んでおいたので其奴との接触は夜になるだろう。


 因みに、でっぷり太った指をガジガジ噛んでひもじさを紛らわせつつ(なんでこんな貧乏人みたいなことしてんだろうかと思ってしまったが、気にしない気にしない)本を読んで午前は終わった。思いの外、立ち消えになった論文集みたいな物が面白くてついつい読み耽ってしまった。歴史から錬金術、食から魔物、網羅している範囲がとても広い。

 特に数学や物理学もある程度理解し、錬金術に関して深い見地を持っているように思えるダヴィンティア、という学者には一度会ってみたいほどのレベルの高い論文だった。残念ながらなぜか途中で論文が終わってしまっているが、なぜだろうか?


閑話休題。


 昼食は白パン、チキン、サラダにスープ。フルコースって概念がこっちには無いようだ。頼めば作ってくれる。空腹なので今日は白パンを一個多めに、野菜もいつもより食べた。


 うーむ、スープを飲むときにスプーンがちょっとカチャカチャしたな。気をつけなければ。


 しかしだ、テーブルマナーが乱れたのもちょっと理由がある。メイドたちがソワソワしてるというか、なんか部屋の外もやたら騒がしい。デブーダの不機嫌を誘発させないためにかなりデブーダ周辺の環境を乱さないよう気を付けている者達にしてはとても珍しいことだ。


「おい、そこの」


「ッ!?は、ハぃ!」


 1番近くに居たメイドに話しかけただけでこのビビリよう。泣けてくる。


「外が騒がしいな。何かあったのか?」


「そ、それが…………「さっさと申せ」はぃい、実は城に賊が入り込んだようでしてっ」


 声が裏返りまくり壊れたラジオみたいになっているが、欲しい返答は得られたから気にしないでおこう。


「賊?…………(イベントかエピソードかなんかあったか?ここはデブーダロールプレイで返すか)……ふん、衛士もまったくもって使い物にならんな。何か盗まれでもしたか?」


「いえ、どうやら城内にて大規模かつ極めて高度な魔法干渉がなされたようでして。現在、宮廷魔導師団が魔法と術師の解析を総出で行っているとか。ですが魔法は全く未知の物解析は進まず、さらには何度解析しても魔法の発生源が城内としか分からず、現在は城の出入り口を全て封鎖し衛士達も最高警備体制でございます。殿下も身の安全の為、しばらくの間ではありますがお部屋に留まって頂きたく存じます」


「まったく、城内ですら安らげぬとは、ペンドラゴン帝国の力も…………ん?(大規模かつ非常に高度な魔法干渉。しかも城内が発信源。………………もしかして:俺 !?)」


 U☆KA☆TU!


 そうだった。城って対魔法用の装置が色々とあるんだった。

 フレーバーテキストだと、宮廷魔導師以外城内で許可を得ていない者はたとえ皇族であろうと魔法とかは使っちゃダメだった筈だ。ま、想像すればわかるだろうが、魔法やスキルのある世界って誰でも拳銃やマシンガン、ロケランを持ち歩いてるのと同じことだからな。この配慮はおかしい物でもないだろう。


 超非常事態を除き私用の魔法使用は罰則ものだ。



【ガイアズセンス】じゃねえよ全く。

 多分ちょっとした魔法だとバレないけど、城丸々全域に及ぶ魔法を行使するとか俺バカじゃないの?でも俺が疑われる心配ってほぼ無いんだよね。

 デブーダは嫉妬こじらせて魔法を一切やろうとしなかったから周りもデブーダは魔法“の”才能も無いんだな、という認識である。

 かくいう俺だって、全く明言されたことないのにデブーダは魔法を使えない奴だと思っていた。


 炎とか雷の属性だったら大地属性と同レベルで極めたから超絶ド派手な魔法が使えたんだが、デブーダが大地属性だったのは不幸中の幸いか。攻撃魔法ぶっ放したらえらいことになってたからな。


 引きこもっててほしいと言われたので午後はジョギングと筋トレに勤しんだ。なんか初日よりは遥かに体が動くので楽しい。超回復キタコレ!って感じだ。こんなの若い時にしか味わえない贅沢な感覚だな!

 インナーマッスルに関しては……うん、1番の基礎のフロントランジとスクワットが腹がつっかえてできずショックを受けたが、今はドローイング(腹式呼吸超強化版みたいな感じ)で我慢してる。


 この贅肉、切ってしまおうか。なんかテレビで見たことあるぞ。脂肪をバッサリカットして針で縫い直す奴。本来じゃ到底やろうと思いたくないことだが、魔法とか回復薬というファンタジーな物があるこの世界だと、案外どうにかなりそうなんだよな。

 この飾ってある剣は…………儀礼用か。刃は潰してあるな。大地属性……俺が何故錬金術につながるかと考えていたかといえば、大地属性の魔法は明らかに一般的に錬金術に通づる部分があるからだ。だってゴーレム作れたら錬金術系だと思わん?


「【トランスフォーム:アフィラド】」


 俺が剣身を撫でながら詠唱すると刃が発光する。

 この魔法はフルカスタム済みの魔法で、本来砥石を用いて武器の切れ味を回復するところを魔法で回復させる便利な魔法。消費MPを異常に低くするのは大変だったが、砥石で研ぐモーションをカットできるので多用していた。大地属性の魔法って結局それ単体とより武術と組み合わせた時が強い魔法なんだよな。


 この魔法は例えその剣が錆びていようがその素材で可能な最大級の鋭さを作り出せる。儀礼用といえど金属が使われてる。特に変化は見られないが、剣のギラつきが心なしか増している。試してみただけだったが、成功したようだ。


「【クリエイト:アルシーラ】」


 なーんで前半英語で後半スペイン語なんかにしたんだろ。黒歴史だねコレ。


 ちょっと羞恥心に悶えるデブすという誰得シーンを披露したが、その間に手の平の上に粘土の塊が生成される。大地属性って生産寄りだから発動スピードが遅くてかなわん。


「粘土があれば…………【アルターレーション:ラドゥリロ】」


 これで粘土を煉瓦に変質させる。実はクリエイトでいきなり煉瓦を生成することもできるのだが、粘土を経由した方が消費MPも低く、質のいい煉瓦ができる。


 魔法というのはMPと言う名の魔力ファンタジックなエネルギーを使い魔素に干渉する行為だ。魔素のフレーバーテキストでは元素よりさらに高次の物資構成要素とされており、同時にあらゆる存在に含まれる成形する存在。こう言うと物資的要素が強くなるが、要するに魔素は概念そのものと思ってほしい。

 強いイメージがあれば実質なんでもできると言うわけだ。ただ成形しやすい物も得手不得手があって、それが火属性が得意とか雷属性が得意とかと言う話になる。


 で、ここからは俺の解釈も混じるのだが、魔法という物をもう少し詳しく解釈すると……魔素という未概念、ダークマター的な何かに人間は魔力を燃料に干渉する。3Dプリンターで言うところの設計図=脳内イメージ、電源=魔力、機械=人体、使う樹脂=魔素を変化させた物……と言えばいいか。


 ここで問題になるのが樹脂だ。3Dプリンターに使う樹脂も向き不向きがある。火や風、雷などは所謂無形であり弄りやすい。水も液体ゆえにある程度可変性がある。だが土は、物理的干渉力が高く固体。火や風が魔素という概念から直接変化してぶっ放せるのに対し、土というのは種類があり魔素→固形→土→成形と明らかにプロセスが多い。そして固体だからこそイメージが最初のイメージが重要だ。

 火などがキャンパスに望む現象を描くのに対し、土はブロックで望む形を作らなくてはいけない。どちらの方が修正が効き可変性があるか子供でもわかる。


 故に土系の魔法は不遇なのだ。MP消費も割に合わないし発動までに時間のかかる魔法が多すぎる。だがこれが極まってくると固体其の物の全支配権を持つ強力な物に化ける。一から全部作ろうとするから大変な訳で、元からあるものを使えばいい。剣を生成するより元からあるものを変質させた方がいい。煉瓦という生成物を作り出すより、比較的作りやすい粘土を変質させた方が良い。

 これが出来るようになった大地属性の魔法は全属性でもこと防衛と物理にかけては他の追随を許さない最強クラスの魔法になる。

 土・石・鉱……その全てが自分の味方となるわけだ。


 ま、空飛んだり海とかに逃げられると途端に不利になるけどね。

 魔王って第3形態から飛ぶからな…………地震とか地割れとか強力な魔法が使いもにならんのよ。逆を言えば地に足ついてる限りこの二つとゴーレム生成のハメ技で完封できる。


 ま、個人的には雷とか光とかが1番極めた得意魔法なんだけどさ。

 範囲攻撃にはむかないけど単体への攻撃力はエグいんだよね。


 閑話休題。


 上質な煉瓦、殴ったら手は砕けること請け合いの固さである。そこに剣を滑らせると煉瓦はスーッと豆腐のように切れた。

 うわぁ、怖え。これなら脂肪もスパッと……スパッと…………やめよう。怖すぎる。全回復できる魔法薬があればまだしも、些かリスキー……あれ、待てよ。脂肪を切り落とした状態で魔法的方法で治癒するとどうなるんだ?脂肪含めてもと通りになるのか、それとも皮でくっついて治るのか。


 でもそれって部位欠損にも同じことが言える訳で、切れた腕がポーションで生えてくるか?そんなことはエリクサーか世界樹の葉だか不死鳥の涙だから持ってこないとどうしようもない。つまり切り取った脂肪は再生しない可能性の方が高いのか。


 ………………どうしよう、猟奇的だけど凄え気になる実験だ。

 自分でやるの怖いからまずはテスターでも用意するか?帝国って奴隷制度あるし、待て待て、俺は何を考えてる。ゲスな発想がナチュラルに出てきたぞ。

 これは医学的実験なのでまずはラットから試す方が建設的そうすべき。


 うーむ、この世界、興味のあることが多過ぎて困る。

 全部が一通り終わったら人里離れて大地属性で農業しつつ錬金術でもしてようかな。ついでに自分の謎についても解明しなくては。誰が犯人だが知らんがデブーダにしやがった奴を思いっきり引っ叩いてやりてえ。


 うん、ゲームもなーんもねえ世界だけど暇持て余す事もない。また違った意味で今は充実した生活が送れてるのかな。


 さて現実逃避そこそこに、この恐ろしい剣をどうしようか。元に戻す……のは出来ないんだよね。ゲーム内でわざわざ武器の刃を潰す魔法なんざ苦労して作るわきゃねえ。かといってメイドさんたちがこの部屋を掃除してくれてるんだから勝手に処分すると問題になる。

 元に戻しておいて何も知らないメイドさんが怪我したら居た堪れないし…………思いつきでほいほい動くもんじゃないね。


 取り敢えず鞘に戻して接合してしまおう。

あ、待て待て。もしかしてこの剣も錆びないようにメイドさんたちが掃除してるのか?だとすると接合もアウトだ。


 結局長い時間と沢山のMPを使って、地道にチマチマと刃を潰した。お陰で腹が……てかもう夕食の時間か?またあっと言う間に1日って終わるな…………いや、夜にイベントがあったな。

実績:頭がハ〇ピーセット・魔法版


どうして城内で超大規模な魔法を行使してバレないと思ったの?馬鹿なの?死ぬの?頭ハッピーセ○トなの?

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